「老後2,000万円足らない」発言の下らなさ


麻生財務大臣による、

「95歳まで生きることを考えれば年金だけじゃ足りない。2,000万円は必要」

という発言。

それに対し、マスコミ、野党から激しく攻撃を受けている。

その結果、金融庁の金融審議会がまとめた

「高齢社会における資産形成・管理」(リンクはコチラ

というレポートに対して、当の麻生大臣本人が

「世間に著しい不安を与えている。正式な報告書としては受け取らない。」

とちゃぶ台をひっくり返すことにより、事態を収拾させようとしているらしい。

私もこのレポートを読んだが、

「少子高齢化が進む日本における資産形成」

について、有識者が様々な視点から論じており、正直な感想として「良い内容」だと思う。

特に日本の高齢者の「能力」にフォーカスした部分が面白い。

本題には関係ないが、非常に興味深いのでその一文を抜粋する。

「わが国の高齢者は総じて元気である。
これは、他国に比して、また過去と比較しても当てはまる。
2016年においては、65 歳から 69 歳の男性の 55%、女性の 34%が働いており、これらの比率は世界でも格段に高い水準となっている。
体力レベルを見ても、現在の高齢者は過去のわが国の高齢者と比較して高い水準にある。」

注:下の図を見ると、16年前の2000年の調査に比べ、運動能力はかなり向上している。

さらにこう続く。

「思考レベルも高い。
現在、60 歳から 69 歳でインターネットを使っている人は全体の4分の3にのぼるほか、OECD の調査によれば、60 歳から 65歳の日本人の数的思考力や読解力のテストのスコアは OECD 諸国の 45 歳から 49 歳の平均値と同じ水準となっている。」

つまり、体力、知力ともに日本の高齢者は「若い」ということ。

だからこそ、この人材・能力を有効活用せよ。と説く。

更には「分散投資の有効性」を検証し、それらを実現するために、今後、政府機関や金融機関に求められることなどを具体的に挙げている。

全体的にかなり踏み込んだ内容で、完成度が高い。

なお、今回、槍玉に上がった「2,000万円足りない」の根拠だが、これは下記のデータからのシミレーションが土台になっている。

高齢者夫婦の収入・支出の「平均」を求めたもので、データ自体は総務省が2017年に発表したものである。

ここでは、

実収入 209,198円

実支出 263,718円

となっており、つまりは毎月約5万円、年間60万円の赤字となっている。

その分を貯金から取り崩す必要があるため、65歳~95歳までの30年間で

60万円×30年=1,800万円 ≒ ほぼ2,000万円

が必要という話になるのだが、年間の赤字を単純に掛け算しただけで、全体的に精度が高いレポートの中にあって「随分と粗いデータ」となっている。

しかし、それもそのはず。

実はこの話は、レポート冒頭で触れられる前提条件に過ぎない。

要は

「老後の生活、年金だけじゃ足りないよね」

という誰もが分かってる事実を述べただけで、その後に「ではどうするか?」ということを論じ、前述の高齢者の活用や分散投資の話になる。

麻生大臣はこの冒頭部分だけを斜め読みして、更には斜に構えた物言いで、

「2,000万円足らねぇんだよ」

とやったのがまずかった。

更には、

「世間に著しい不安を与えている。」

とレポートのせいにして逃げを打っているが、ちゃんと読めば2,000万円はデータから導き出された「必要最低限の貯蓄」であることが分かる。

それどころか、FP的な観点で言うなら、医療費、介護費や、老朽化した自宅のリフォーム代、等々、更に1,000万円くらいは上積みしたいところ。

むしろ、レポートの方こそ「著しい不安を与えない」よう最大限注意して「最低限」を提示しているのである。

そもそも今の日本で

年金だけで生活していける

と思っている人がいるのか?

中学生だって「無理でしょ」と言うレベルの話なのに、「2,000万円」に過剰に反応するマスコミと国会議員が大騒ぎし、しまいには素晴らしいレポートまで「受取を拒否する」と言う。

いつまで現実から目を背けるのか?

年金が破綻するとは言わないが、少子高齢化の影響で、

「実質的に減る(物価は上がるのに給付は増えない)」

「給付開始年齢が上がる(65歳→68歳、70歳など)」

となる可能性はかなり高い。

だからこそ年金と社会保障の一体改革は待ったなしで進めないといけないのに、結局、話は本筋から逸れ

「安心して下さい。老後は年金で暮らせます。」

という何の根拠もない政治家のセリフだけが響く。

「著しい不安」が「現実」になる日は近い。

本日のコラムでした。

 

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6月 11th, 2019 by