親、子供、3世帯を引率した台湾旅行で気付いた5つのこと


私の母、妻の父、2人とも70歳になるので「古希のお祝いは何が良いか?」と聞くと、

「台湾の屋台が見てみたい」

と言う。

台湾なら近いし丁度良かろう、と台北2泊3日の企画をしたが、ジジババ3人と、5歳、2歳の子供2人を引率する「三世代旅行」は思っていたよりずっと大変だった・・・

本日は、そんな旅を通じて気付いた5つのことをレポートしたい。



1 現地に到着。まずやることは?

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成田から3時間30分のフライトを終え、空港に到着。

まずやらねばならないこと。

それは、ジジババ達のスマホの設定である。

放っておくとむやみやたらに通信しまくって、もの凄い料金になりかねない。

ふと横を見ると母が、空港ではしゃぐ孫の「どうでも良い動画」を撮って、

「〇〇さんに送る」

と言う。

おい!!

近いとは言え、ここは外国だ!!

全員分を取り上げ、ローミング設定をOFFに、私が持つ海外用のモバイルWIFI経由でしか通信できないようにする。

「旅行中、動画を『撮る』のは良いが『送る』のは禁止!!」

と厳しく通達。

全く油断も隙もない。

ITリテラシーの低さは高齢者の共通の課題である。



2 延びきる行軍・・・結局タクシー

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子供の動きは極めて早く、ジジババの歩みは極めて遅い。

観光名所の台北市内の寺院。そこから1キロ程度離れたところにあるレストラン。

「街をブラブラとしながら歩いていこう」

ジジババの誰かがそう言うので、目的地に向かう。

早速、子供はダッシュ。私はそれを追いかけ

危ない!!止まれ!!

と叫ぶ。

そして、後ろを見ると遥か後方にジジババの集団がいる。

まるで犬と牛を牽引しているようなもので、行軍が延びきってしまう。

先行する犬を制し、遅れる牛を追う。

どうせなら犬が牛を追ってくれれば楽なのだが、残念ながらそうは躾られていない。

同じ道を行ったり来たり。

このファースト&スローが地味に体力を奪う。

親子三世代の集団をアジアの街並に放つと、水中にインクを垂らすが如く無秩序に広がってしまうのである。

そして結局はタクシーに。

これがベストな解だと初日に気付いた。



3 「水」、「お茶」、「トイレ」の8ビート

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ジジババ達から、

「ちょっとお水を」

「トイレどこかしら」

子供たちから、

「お茶!!」

「おしっこ!!」

その大合唱である。

しかも、子供はその体の小ささ故、老人は膀胱の機能低下のため、

「ガマンが効かない」

何故に先ほどのトイレで行かなかったのか?

そう聞きたくなる場面が3日で8回ほどあった。

水、水、トイレ、観光、トイレ、水、お茶、トイレ、小籠包、トイレ

道中、8ビートのようにリズムを刻む「水」、「お茶」、「トイレ」

いい加減にして欲しい。



4 結局、酒と飯

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「台湾は初めて」

もしくは、

「30年ぶり」

と言うジジババのために、故宮博物館、龍山寺、中山記念堂、九フンなどなど、台北の観光地を網羅できるようにスケジュールを組んだ。

日本語対応のタクシーを手配し、3日かけて巡ったが、どこを見ても

「へー」

という感じで、感動している様子はない。

むしろ「いやー疲れたね」という雰囲気が漂う。

それも仕方ないだろう。

70歳にもなって、

「えー!!マジでー!!凄すぎ!!」

というような経験が台湾にあるとも思えないし、観光は意外と疲れる。

結局、一番喜んでいたのは、美味しい中華とお酒。

旅の初日、

「旅行では朝からビールを飲む」

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という謎の宣言をした義父には、朝からビールを差し入れ、ほぼアル中と言える母には、食事の後にホテルの自室で飲む寝酒とツマミを渡す。

それで二人ともご満悦なのだから他愛もない。

今思えば、故宮も九フンも、行きの飛行機の中でスマホで画像と動画を見せれば済む話だったのでは?そうも感じる。

ところで、「台北の屋台を見たい」と言っていた義父の真意は、

「屋台のラーメンを食べてみたい」

とのことだった。

日本のラーメンのレベルの高さを知り、更にはアジア諸国の屋台を食べ歩いた私からすれば、

「期待するほどのものじゃないですよ・・・」

というのが本音だが、行く前からそれを言うのも無粋である。

かくして、実際に屋台にたどり着いたが、現地の衛生状況と、何より得体の知れないアジア的な匂いは、義父の想像を超えていたようで、

「やめておく」

と言う。

ここまで来て・・・と意地になった私は、

「折角来たのだから味見だけでも」

と、比較的キレイな屋台を選び、2種類の麺を頼んだ。

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それを一口食べ、義父は

「・・・・うん、うまいね」

口ではそう言っていたが、絶対ウソだ。

私も食べてみて「屋台の中では旨い方」だったが、所詮はその程度。

老人達をアテンドする際には、あまり現地テイストが強いのもダメ。

刺激が強すぎるのも宜しくない。

やはりちゃんとしたレストラン、それも観光客が行くような所が良いのである。

なお、義父が最も「美味かった」と言っていたのは、この店。

杭州小籠湯包 

台北の小籠包では「鼎泰豊(テンダイフォン)」が有名だが、個人的には杭州小籠湯包の方が美味しい。(と言うか、鼎泰豊は混み過ぎで待つのが嫌)特にここの「蟹味噌小籠包」は絶品。

観光客、現地の方、半々という感じで、異国情緒も感じられる。

台北に行かれる機会があったら是非試して頂きたい。以上余談。



5 親孝行の憂鬱gahag-0092946351-1

孫と一緒に行く海外ツアー。

今回のような旅をすれば皆からこう言われる。

「親孝行だね」

まあ、一般的にはそうだろう。

しかし、ジジババだけでなく子供もいれば、旅の活動は大幅に制限され、また添乗員としての気苦労も多く、自分たちは楽しめない。

更には親たちもどこまで楽しかったのは良く分からない。

ご招待旅行である以上、感想を聞いても

「楽しかった」

としか言うしかないだろう。

聞いたところで無駄である。

無論、楽しかった部分もあるし、疲れた部分もあるだろうが、まさか10代の少年少女じゃあるまいし「何もかもサイコー」とはいかない。

70年も人生を生きてきた人を喜ばすことは並大抵のことではない。

どこまで喜んでいるか分からない企画に金と気を使う。

親孝行など結局のところ自己満足でしかないのである。


家族とは言え始終一緒にいる時間など、長くても十数年のことで、家を出て、それこそ家族を持てば、会うのは多くても年に数回だろう。

だからこそ無理をしてでも旅に出る。

二日、三日と、昔のように同じ時間を過ごし、世代間で「何か」を共有する。

身内にイライラすることも多く、2,3時間で済む食事会の方がお互いに気軽だが、旅の方が数十倍の「何か」がある。

昨年亡くった父とも色々なところに行った。

帰ってきてから

「あの人とはもう二度と旅行に行かない」

そう決意したことも一度や二度ではないが、いなくなってから思い出すのは旅の場面が多い。きっとそれが「何か」なのだろう。

来年も宜しく!!

空港で別れる時、親たちにそう言われ、俄然、憂鬱になる。

昔、ある大先輩に言われた言葉を思い出した。

「親は自分の株主。だから親孝行は配当みたいなもの。大人の義務だ。」

そして、こう続いた。

「義務っていうのはいつだって憂鬱なものだよ。兵役、勤労、納税、そうだろ?」



さて、今回は親子三世代の海外旅行で感じたことをお送りした。

なかなかの斜め目線に、我ながらひねくれていると感じるが、これも親の教育の賜物。

半分以上は私のせいではない。

もし仮に、こんな文章でもお読み頂いて

「親と旅に」

そう思ったのであれば、すぐに企画することをお勧めする。

老人はすぐに動けなくなる。

がん、脳卒中、骨折、認知症、膝、腰、そして親がなって初めて知る変な名前の病気

リスクはそこかしこにある。

「もっと旅行に連れて行ってあげれば良かった・・・」

保険屋という職業柄、その手の「後悔」については頻繁に耳にする。

「やってあげた」わりには喜ばないし、お互いにイライラすることも多いが、出来なくなってから後悔するよりはマシだろう。

そう思って、来年もこの憂鬱な仕事に取り組むこととする。

本日のコラムでした。


 

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11月 26th, 2018 by