比嘉チャンプを襲った「パニック障害」とは?


体重オーバーにより王座を剥奪され、更にはプロ初黒星を喫した比嘉大吾選手。

本当に残念としか言いようがありません。

比嘉選手がまだ後楽園ホールで闘っている頃、彼の後援会長である沖縄の社長さんに私もお世話になっているご縁で声をかけて頂き、何度か試合を見る機会がありました。

当時からKO劇を量産するハードパンチャーぶりで、ボクシングファンには、

「世界を獲れる」

と注目されていましたが、世間的にはまだ無名。

先日、初防衛を果たした村田選手がエンダムとの不可解な判定で敗北を喫した「世界同時三戦」で世界チャンピオンになった時も、「村田惜敗」の陰で扱いはイマイチ、どちらかというとジムの代表である具志堅用高さんの方が注目されている印象でした。

そこから二度の防衛。

前回の故郷沖縄での試合では1ラウンドKOで、連続KO記録を浜田剛史氏が持つ日本記録タイの「15」に伸ばして、そのあたりからテレビで見かける機会も多くなり、そんな中での今回の王座剥奪と敗北はまさに「天国と地獄」でしょう。

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私は誘われて見始めただけの「にわかファン」に過ぎませんが、後楽園の頃からチャンピオンになった有明コロシアム、初防衛の両国国技館と、全て現地で見ていたので、勝手に感情移入して、

ただただ悔しい

という思いです。

しかし、以前から後援会の会長さんからも「減量が相当キツイらしい」、「フライ級では限界」という話も聞いていましたし、昨年には減量とプレッシャーで

「パニック障害を発症した」

との報道も耳にしていたので、

「そんな病気になったら、試合どころじゃない」

とも感じていました。

なお、パニック障害は100人に1人が罹患するというデータもあるので、決して珍しい病気ではありません。

事実、私のお客様や友人知人でもこの病気の方が多いのですが、未だに精神疾患に対して

「気合、根性が足りないからだ」

という偏見がある日本では、なかなか周りに言い出せないらしいです。

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その原因は定かではありませんが、脳内のセロトニンが異常分泌され、突然不安な気持ちになり、動悸、心拍数の上昇、めまい、発汗、呼吸困難などが発生します。

特に「人混み」や「混雑する電車」、「車の中などの密室」などがきっかけになって発作が出ることが多く、これは

広場恐怖

と言われるパニック障害の代表的な症状です。

私は医者ではないので専門的なことは分かりませんが、私の周りを見る限り、真面目で完璧主義の方が

「自分で自分を追い込みすぎて」

この病気を発症するケースが多い気がします。

また、とてもお世話になった方がこの病気で電車や飛行機に乗るのに苦労していた姿を見ていたので、「一筋縄ではいかない」、そして「なかなか治らない」という印象を持っています。

今回も、試合前、比嘉選手は会場である横浜スタジアムに向かう車の中で体調不良に陥り、控室では終始横になっていたそうで、典型的なパニック障害の発作です。

そのため、アップも出来ずにリングに上がらざるおえなかったそうで、そんな状態で「人混み」どころではない満員の会場、その全員が注視する世界戦のリングに立つことは、この病気の人からすればそれだけで「地獄」です。

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結果、プロ初黒星を喫します。

もちろん体重オーバーも敗北も、全ては自分のせいで病気は何の言い訳にもなりません。

マスコミの報道では「わずか2ヵ月でのマッチメイク」への批判が多く、比嘉選手本人よりはジムの責任を問う声が多いですが、それも筋違いで、やると言った以上は全ては自己責任。それがプロの世界です。

ボクシングのトップレベルとは比べようもありませんが、私がいた完全歩合の外資生保の世界でも、有望な新人が「大人」の勝手な事情で「苛烈なノルマ」を課せられ、結果潰れてしまった例を沢山見てきましたが、それに同情する人はいません。

「本物なら何度失敗しても必ず立ち上がる」

からで、一度のつまづきで終わりなら所詮それまで。ということです。

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彼の試合は毎回沖縄から大勢の応援団が駆け付けます。

チャンピオンになった時なんて、200人以上が飛行機に乗ってやってきて、

「大吾ぉ~!!」

と会場で声を枯らし、祝勝会の店では沖縄の三線(さんしん)が響きわたるのです。

ボクシングもさることながら、私などはその宴会の雰囲気が好きで毎回参加している面もありますが、そんな人たちの夢を背負って戦う22歳の若者のプレッシャーはどんなものなのでしょうか?

人の期待なんて背負ったことがない私のような凡人には到底分かりませんが、楽しいだけではないはずです。

「王者の体重超過」のペナルティーは重く、1年は試合に出れないという観測もありますが、まずは心身のコンディションををしっかり整えて、そしてリングに戻ってきて欲しい。

いつか三線を聞きながら、再び美味しいお酒を飲める日を切に願う本日のコラムでした。

 


4月 16th, 2018 by