電通、三菱電機「自殺」労災訴訟の勝者とは?


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電通の新入社員の自殺に続き、三菱電機の男性新入社員が職場でのイジメを苦に自殺したことが大々的に報道されています。

本件は、ご両親が会社に対し1億1800万円の損害賠償を求めると共に、労働基準監督署に対し労災申請を行うとのことです。

弊社は労災訴訟における賠償金額を肩代わりする保険(労災上乗せ保険)を販売しており、このような際、企業側に立ちます。

本日はその立場から、自殺に関する労災訴訟の現実をお伝えしたいと思います。

まず、このような「精神的」な問題に関しては、被害者の主張と企業の主張が真正面からぶつかることが多く、先に例に挙げた電通でも大々的に報道されてからようやく自社の非を認めています。

そして、三菱電機の場合はイジメ、パワハラ等の事実自体が「そもそもなかった」としており、今後徹底的に争う姿勢をとっています。

具体的な氏名や行動が示されている遺書を読む限りでは、イジメの事実自体はあったものと推測出来ますが、企業側からすると

「軋轢はあったが、業務指導の範囲であり到底自殺の要因ではない」

という主張となるのだと思います。

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被害者側は「イジメ」

企業側は「業務指導の一環」

ということですが、双方が主張を譲らない状況では、一つの判断基準となるのが先に挙げた「労災認定」ということになります。

認定=企業の責任を認める

という意味合いが強く、必ずしも労災の認定と訴訟の結果が一致するわけではありませんが、おおむね同じ結果になることが多いのが実情です。

しかし、工事現場での事故などの

「分かりやすい労災」

と比べ、目に見えない精神的な労災は扱いが難しいと言わざるを得ません。

まず、下記のデータをご覧下さい。平成27年の申請件数と認定件数をまとめたものです。

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「認定率」は約3割。過去のデータを見ても、3割から4割程度で推移しています。

そして、その中でも「自殺」だけに絞ったものが下記になります。

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「認定率」は全体平均より上がりますが、それでも5割弱。

つまり、全体の7割、自殺の5割が認定されていない、つまり

「業務を原因とした精神障がいではない」

と判断されていることになります。

当然、これらの結果は訴訟にも影響します。

では、これらの認定はどのようなプロセスで判断するのでしょうか?

労災においては、精神障がい発症の要因を

・仕事

・プライベート

・個人的な気質

という3つの視点から分析します。

まず、仕事では長時間労働やパワハラ、セクハラ、リストラなど、項目別に

・「特別な出来事(以下、特別)」

・「強(強いストレス)」

・「中」

・「弱」

に分類します。

基本的に労災の対象となるのは、「特別」と「強」だけで、「中」と「弱」は労災に該当しません。(但し、「中」が複数ある場合には「強」と判断する可能性もある)

「特別」か「強」が認められた場合、次にプライベートで夫婦の不和、離婚、家族の死亡、病気、借金問題、子供の受験など、私生活でストレスを感じる出来事があるか?ということを見ます。

最後に「アルコール依存症」や「過去の精神疾患」など、本人の性格的、体質的な情報を加えます。

これらを総合的に判断し「精神障がい発症の原因は仕事か否か?」を決定するわけですが、その認定率は前述の通りです。

そして自殺に関しては自ら命を断っているという事実を考慮し、仕事のストレスをかなり重く見る傾向があります。

三菱電機の件も、遺書にあるようなイジメの実態が証明されれば、対人項目という分類の「強」に当てはまるので、労災認定される可能性が高くなります。

しかし、認定され高額の賠償金が支払われても、失われた命は戻ることはなく、ご両親の悲しみが癒えることはありません。

そして、前述の通り自殺の労災認定はハードルが高いので、もしかすると「企業に非はなし」となるかもしれません。それでも、一人の新入社員を死に追いやった企業の道義的な責任は免れないでしょう。

更には関係した者も、降格、諭旨退職などの処分を受けると共に、重い十字架を背負っていくことになります。

自殺を巡る労災訴訟には誰も勝者はいないのです。

 


10月 6th, 2017 by