「流行ってるパン屋さんとかケーキとかないの?新しいところで」
大学時代の友人で、会社を経営するA君。
喫茶店で世間話をしていると、唐突にそんなことを言う。
このA君と私は、都内で話題になっているパン屋さんや、ケーキ屋さんなどによく2人で赴いているが、そのリサーチは食べることにうるさい私の役目となっている。
それらのお店は渋谷、表参道、六本木などオシャレな場所にあることが多く、そんな街をまるで流行に敏感なOLのようにおっさん二人が闊歩する。
少々気恥ずかしくもあるが、
「経営者たるもの常に新しいものに興味を持たないとね!」
と、お互いを励ましあって、最先端のお店を訪問しているのだが、しかし、その目的はマーケティングでもなく、ましてや自分たちが食べるためではない。
家族へのお土産である。
外出したついでに持ち帰る「流行りのパン、スィーツ」
父たちが手軽にヒーローになれる瞬間であるが、あまり同じものが続くと飽きられる。
そして「飽きる」のは大抵妻。
子供はバカだから、何を持って帰っても「イェーイ!!」と喜ぶが、女性はそうではない。
当然それを口に出すわけではないが、初回より二回目、二回目より三回目の方が反応が鈍くなり、だんだん感謝されなくなる。
つまりは新規開拓の動機の大部分は、
妻の歓心
を得たいがためである。
A君は特にそれが顕著で、それで「新しいお店ないの?」となる。
「嫁さんに褒めてもらうのに必死だな(笑)」
とからかうと、
「こんなことくらいでしか褒めてもらえないから・・・・」
遠くの空を眺めながら彼がそう言う。
カァー、カァー
表参道の空にはカラスの鳴き声が響いていた。
「このお店、行ってみたかったの!!ありがとう!!」
その反応が欲しいが故に、新規開拓を怠らないA君をはじめ、
妻に褒めてもらいたい症候群
の夫は多い。
みかづきリサーチセンターの調査(あくまで色々なご家庭を回ってきた私の感覚統計。つまり適当なデータ。)では、
「あなたは妻に褒められたいですか?」
という質問に86%が「YES」と回答している。
それに対して、「実際に褒められますか?」という質問に「頻繁に褒められる」と回答したのはわずか14%で、なんと61%が「褒められない」としている。(何度も言うが感覚である。)
86%の要望に対し、満額回答14%。ゼロ回答61%。
この「ギャップ」が症候群を加速する。
挙句、A君は「最新のパン、スィーツ」を求め街を彷徨うことになるのである。
はっきり言ってしまえば、お土産も、家事・育児への協力も、究極的には、
「妻から褒めて欲しい」
ための行動と言える。
掃除をすると気分が良い。料理は楽しい。子供が可愛い。などなど、個々の行動にはそれぞれ理由があるだろうが、妻から、
「綺麗になった」、「美味しかった」、「子供を外に連れて行ってくれて助かった」
などの感謝とお褒めの言葉を期待している部分がある。
男などは単純なもので、
「猿もおだてりゃ木に登る」
と同じく、褒めれば褒めるほどどんどん調子に乗る。
生物学的にもオスは承認欲求が強く、だからこそ「課長」とか「部長」などの肩書にこだわり、会社で必死こいて働くのである。
しかし家庭には、このような分かりやすい指標がない。
いくら家事、育児で功績を挙げても、常務取締役パパや、上席夫管理官になれるわけではないし、仮にそんな肩書を名乗っていたら、そいつは「ヤバい奴」だろう。
つまり、家庭においての報酬は「褒められること」しかない。
だったら褒めれば良いじゃないか? 言うだけならタダだし
そうも思うのだが、会社が肩書を出し渋るように、奥様方も「褒め」を出し惜しむ。
その理由は3つに大別できる。
一つは、あまり簡単に報酬を与えるとその価値がなくなる。ということである。
全ての社員が部長を名乗る会社では、部長とはいえ、実際は「平社員」と同義であり、何の価値もない。
それと同様、「褒め」を連発しすぎるとその効果が薄くなり、それどころか
もっと頂戴!!もっと頂戴!!
と子供のお菓子状態となり面倒臭い。
だからこそ「ここ一番」のためにとっておきたいという心理が働く。
二つ目は、「褒めるポイントがない、それに値しない」ということ。
普段の怒り、つまり「何もやらない」、「帰りが遅い」、「無駄使いが多い」などの旦那への不満が多過ぎるので、たまにヒットを打ったところで褒めるほどのことではない。と判断される。
そして、褒めないから更に旦那は何もやらなくなって、妻の怒りは増幅。
完全に悪循環である。
そして最後の理由。
それは・・・
旦那に興味がない。
これだろう。つーか、これだ。間違いない。
世の奥様は子育てと家事、更には自分の仕事などがあり、
「旦那なんかに構っていられない」
というのが本音で「褒めて欲しい?ハッ、子供じゃあるまいし」と一蹴される。
これら3つの要因が複合的に絡まって「褒め不足」が発生する。
私などからすれば、
男なんてとりあえず褒めておけば良い
と思うのだが、残念ながら多くの家庭でそうはなっていない。
また、こんな話をすると、
じゃあ旦那は妻のことを褒めてるの?
などと反撃され、米中貿易戦争なみの泥沼にハマるが、とは言え「出し惜しみ」は家族間でも国家間でも良い結果を生まないのである。
世の奥様がこのブログを読んで何かを感じたのであれば、今日の夜、旦那さんに誉め言葉を与えて頂ければ幸いである。
夕飯にもう一品を添えるより、手間もかからず効果もデカい。
男はそれで頑張れるのだから。
本日のコラムでした。
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