デヴィ夫人は税理士事務所から賠償を取れるのか?


通常

デヴィ夫人の経営する事務所の元会計担当者のT氏が横領で逮捕されました。

5年半で2億7000万円という巨額の横領に、

「何で気付かないのか?」

と不思議でなりませんが、

「通帳を見たことがない」

「(期末にお金がないと言われ)あら?買い物し過ぎたかしら、と思った」

と豪快なコメントを連発する夫人に、世間の大半の人は、

「やられてもしょうがないよね。。。」

と感じたのではないでしょうか?

泥棒も悪いけど、玄関も金庫も開けっ放しじゃね。。。ということでしょう。

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さて、弊社は多くの会計事務所の税理士先生とお付き合いがありますが、先生方にお会いすると、最近はこの話題でもちきりです。

夫人がマスコミ宛に出したコメントで、複数の税理士の名前を挙げ、その中のA税理士に対し、

「監督責任がある」

と賠償請求を匂わす発言をしているからです。

T氏はもともとA氏が所属する会計事務所から派遣され、週に3日デヴィ夫人宅に勤務していました。

それを監督するために、月に2回ほどA税理士が訪れていたそうですが、2年後にはT氏はデヴィ夫人と直接契約となり「派遣」は打ち切られています。

しかし、その後もA税理士との顧問契約が続いていたので、前述のような「監督責任」という話になったのでしょう。

これに対し、A税理士の動きは早く、自身の責任を否定した上で「名誉棄損」にまで触れています。

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これ、多くの税理士先生や私のように生命保険の仕事をする立場からすれば「明日は我が身」の話で、結構怖いんですよね。。。。

人様のお金を預かる仕事では、こちらに悪意はなくても顧客が損害を出した際に、責任を追及されるリスクが常にあるわけです。

という訳で、ちょっと気になったので、知り合いの弁護士数人に見解を聞いてみました。



先生によって言うことは違いましたが、共通する論点は以下の3つ。

① 派遣していた時に横領していたのか?

② 派遣打ち切りの際に、どのような約束をしたのか?

③ 税理士という業務に横領の調査義務があるのか?

①に関しては、仮に「派遣時代」にT氏が横領していたのなら、恐らく損害賠償を命じられる可能性が高いだろう、とのこと。

とは言え損害の100%ということはなく、派遣先(デヴィ夫人)にも監督責任がゼロではないので、多くの判例では50%程度に落ち着くことが多いそうです。

「どちらが悪いとも言い難いので、折半しなさい」

喧嘩両成敗のイメージですね。

②に関しては、契約上「T氏の監督をする」と盛り込まれていれば損害賠償を命じられる可能性も高いですが、一般論としてそんな無用なリスクを税理士が負う必要もなく、また「超丸投げ体質」のデヴィ夫人がそんな細かい契約を求めたとも考えにくいです。

おそらくは口約束で「今後も宜しく」程度の話で、実務上は派遣の時と変わっていないでしょう。

しかし、前と変わらないのであれば「実態」としてT氏はA税理士の管理下であったとされ、監督責任が認められることもゼロではないようです。

それでも、T氏がデヴィ夫人が直接雇用されていた事実は重く、賠償を命じられたとしても①よりは少ないのでは?とのこと。

そして③。

これも過去の同様の判例を見ると、

「税理士には横領を発見する責任はない」

とされています。

顧客からすれば、

「お金のことは任してるんだから、横領くらい気づいてよ!!」

という気持ちは分かりますし、デヴィ夫人もそういうことを言っているんだと思いますが、これはちょっと無理難題ですよね。。。

経理担当者が出してくる書類やデータをいちいち疑っていたら、キリがないですからね。。。

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以上、3点から

「訴えられて、仮に責任を認められても賠償額は少ないのでは?」

というのが、多くの弁護士の見解でした。

しかし、一方で「夫人、絶対勝てますから裁判やりましょうよ!!」とたきつける弁護士が「絶対出てくるよ。」という意見も多く、十中八九、訴訟になるだろう。とのこと。

2億7000万円も盗られちゃったデヴィ夫人も可哀想ですが、八つ当たりに巻き込まれて無駄な労力を費やすA税理士にも同情を禁じ得ません。。。。

本日のコラムでした。



 

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11月 8th, 2017 by