データで見る「海外大学進学」の難しさ


保険の相談の中でも「教育」と「学費」に関することは親御さんが興味を持つ分野である。

最も一般的なのは、

「本人が望めば大学までは」

というものだが、最近はそこに「できれば海外の大学」と付け加える方が多い。

中には、

「日本の大学なんて出ても仕方ない」

ときっぱりおっしゃる方もいて、少子化がすすみ国内マーケットが縮小する日本に固執するよりは、

「若いうちにグローバルな感覚を身に付けて、広い世界で活躍して欲しい」

と思う親御さんが多いのだろう。

が、実際のところ、そのハードルは相当高い。



本日は「海外の大学への留学」、その現状について考察したい。gatag-00013359

まず、一口に「留学」と言っても、ごくごく短期の語学留学から4年制大学まで色々ある。

それらの「留学期間」と「人数」をまとめた日本学生支援機構のデータを見てみよう。

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グラフが小さくて見にくいかもしれないので、直近3年の数字を整理するとこのようになる。

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留学する人数の総数は右肩上がりで増加しているが、その内訳を見てみると総数を増やしているのは「1ヶ月未満の留学」であることが分かる。

2016年においては留学学生9万5982人のうち、約6万人が「1ヶ月以内」であり、ある程度まとまった「6ヶ月以上」の留学をする学生の数は1万3000人前後でほぼ横ばい。

恐らく「1年以上」が、現地の大学に進学したケースと思われるが、それらはわずか2000人前後で推移している。

また、これらは1年生から4年生までの合計の人数なので、一学年で言えば、5~700人程度ではないだろうか。(注:本データは現地高校からの進学などを除いており、諸々の「漏れ」があるとのこと。実際にはもっと多いそう。)

東京大学の新入生が毎年3000人程度であることを考えると「東大より希少」ということになる。

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なお、

「日本の大学は入るのが難しいが出るのは簡単。海外の大学は入るのは簡単だが出る(卒業)のが難しい。」

と言われるが、実際に海外の大学を卒業した方にお話を伺うと、これは半分ウソで、有名校には入るのも簡単ではない上に、入ってからのカリキュラムは相当大変とのこと。

そこに語学のハンデもあるため、かなりの時間を勉学に費やす必要があり、

「バイトなんてやっている時間がない」

とおっしゃっていた。(なお、制度上も「働けない」国が多い。)

日本のように「バイトして頑張れ」というわけにはいかないのである。

つまりは、生活は仕送りに頼らざるを得ないので、親としては

「学費+生活費」

の全てを負担することになる。

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経験者のお話ではそれらの費用は年間で500~600万円程度。

内訳としては授業料がとても高額で、日本国内の私立であればおおよそ年間120万円程度の学費が、アメリカの有名大学になると年間400万円(3万5000ドル)近くする。

これらをトータルすると、卒業までに2000万円以上のお金がかかることになり、国内の大学であれば、卒業までに自宅通学で600万円、一人暮らしで1000万円と言われるが、その倍以上がかかるのである。

狭き門である上に、高額の学費。

これが海外進学のハードルが高い所以である。

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ところで話は戻るが「将来は海外の大学」とおっしゃるのは、小さいお子さんの親御さんが多い。

まだまだ先の話なので、純粋な希望として「海外進学」を考えられるのだろう。

しかし、小学校、中学校と大きくなってくると、その熱がトーンダウンしてきて、

「まあ、日本にも良い大学があるからね。」

となる。

もちろん現実的なお金の問題もあるのだろうが、それらよりはむしろ「子供がいなくなって寂しい」ことが原因の気がする。

親元を離れ、誰も見知らぬ海外での生活は子供を自立させる。

親もそれを望み、可愛い子に旅をさせる。

実際、「完全無欠に自立し」、「欧米人なみの合理性」を兼ね備えた海外進学組は不思議なくらい日本に戻ってこない。

「日本は良い国」と言いながらも、どこか堅苦しさを感じるのか、そのまま現地で働きつづける人が多い。と言うかほとんどそうだし、それこそが「グローバルで活躍する」ということなのだろう。

親と離れていても、

「何かあっても飛行機で1日で戻れる」

とドライに割り切り、そして本場仕込の流暢な発音で「skypeもfacetimeもあるしね。」と付け加える。

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つまり、巣立った鳥は帰ってこない。

広い世界で飛び回って欲しいが、あまり帰ってこないのも悲しい。

身勝手なものだか親なんてそんなもので、その葛藤の中で「一ヶ月以内の留学」が6万人もいると思うと微笑ましい。

が、さて自分はどうだろう?

かく言う私も「日本にいても仕方ない。海外へ出ろ!!」派である。

現在5歳の娘と1歳の息子は可愛いが、将来、心を鬼にして「世界」へ放り出せるか?

「その時がくれば出来る」

今はそう思うが、自分の性格を考えると、2,3ヶ月の中途半端な留学で

「世界を見せた」

と思ってしまいそう。

そう感じる本日のコラムでした。



 

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5月 9th, 2018 by