何故、兄妹姉妹は揉めるのか?富岡八幡宮の事件を見て思うこと


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弟が姉を日本刀で惨殺する、という事件に端を発した富岡八幡宮の宮司家を巡るトラブル。

背景には「宮司」の地位を巡る「相続争い」があったとされますが、ここまでの惨劇にはならずとも、残念ながら同じようなトラブルは日本全国にあります。

私自身が見聞きしたお話や、お付き合いのある税理士先生から聞いた、

「相続における、兄弟姉妹間の対立」

は凄まじく、更にはそこに、それぞれの夫や妻が参戦することで、こじれにこじれ、

「死んでほしい」、「殺したい」

というような激しい言葉を聞くことも少なくありません。

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なお、このようなトラブルは「お金持ち特有の話」と思われがちですが、実態は少々違います。

下記は、平成26年に家庭裁判所へ持ち込まれた「遺産分割事件」12557件を「財産額」で分類したものです。

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1,000万円以下で全体の1/3、5000万円以下と合わせると75%近くになります。

1000万円も5000万円も大金ではあるものの、「資産家」とは言えませんし、血を分けた兄妹姉妹が骨肉の争いをするほどの金額とも思えませんが、これが現実です。

また、これらの申立て件数を「資産種別ごと」という視点で見ると、約7割は「不動産」に関わるものです。

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ご存知の通り、不動産は簡単には分けられないので、子供のうちの誰か一人に引き継がせますが、そうでない他の子には「別の財産」を渡すことで調整をします。

しかし、不動産価値に見合うほどの「他の財産(現金、有価証券)」を持つ家は少なく、例えば、相続財産1億3000万円(うち不動産1億円)に対して、以下のように分けた場合、

・兄 不動産1億円

・弟 現金3000万円

弟からすれば、本来貰えるはずの6500万円(1億3000万円の1/2)にはるかに足りないことになります。ここで、兄が「足りない分の3500万円は俺が払う」となれば簡単ですが、

「俺は長男で母親の面倒を見ていた」

「いや、兄貴は大学まで出してもらったじゃないか」

「お前こそ大人になってからもちょくちょく小遣いをもらっていただろう」

と、過去の話、更には

「子供の頃から兄貴が可愛がられていた」

「お前は昔からずるい」

というような感情論が出てきて、更には双方ともに遠慮がないですから、当事者同士では収拾がつかず、その判断を裁判に委ねるしかなくなるのです。

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逆に本当にお金のある家では、親が弁護士や税理士と相談し、生前に「交通整理」をしておくので、裁判にまで至るケースは稀です。



今回の富岡家も相当な資産家であることは間違いありませんが、一連の報道を見るに、実際に将来のトラブルの芽を摘み取るための対策はかなり入念に行われていたようです。

その1つは、一旦は後継に決まった弟が問題を起こした際、宮司の解任だけでなく、先代宮司の父が裁判所に対し「相続排除」の申立てをしていることです。

相続排除は相続人としての立場を奪うことを意味し、親が我が子に行うものとしては相当に重い「経済的な勘当」とも言えますが、申立件数自体は全国で年間200件程度と、かなり少ないので、やはり最終手段と言って良いでしょう。

しかし、このような強行手段をとる一方、退職金として数億円の現金を渡したり、更には毎月の生活費も仕送りしていたようで、問題ばかりおこすバカ息子を「飴と鞭」で

「飼い殺し」

にしていたことが分かります。

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「そういう風に甘やかすから、あんな事件をおこすんだ!!」

と世間の方は思うでしょうが、問題児を抱える資産家には良くある話のようで、ある税理士先生は、

「法的な立場を奪うが、生活の面倒は見る。これ以上ない対策に思える」

とおっしゃってました。

要は「問題起さないように遊ばせておくしかない。」ということでしょうが、息子の性格を良く知るお父様がご存命(2012年に他界)のうちは、何とかコントロール出来ていたものが、親という緩衝材がなくなり、姉と弟が直接ぶつかった結果が、今回の事件を引き起こしたと推測出来ます。

財産の多寡に関わらず、起こる兄弟間の相続トラブル。

子供の頃は親の愛情を、長じては親の財産を奪い合う生まれついてのライバル

悲しいですが、それも「兄弟姉妹」のある側面と言えるのかもしれません。

本日のコラムでした。



 

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12月 16th, 2017 by