京アニの被害者の補償を考えると忸怩たる思いしかない・・・


お金の問題ではない。

そのことは重々承知しているが、それでも京都アニメーションの事件で亡くなった方々、そのご遺族の「これからの生活」を考えるといたたまれない。

結論から言えば、現行制度ではその被害を完全に補償することが出来ないからである。

今回の被害者には3つの側面がある。

1 個人として

2 従業員として

3 犯罪被害者として

それぞれの立場での補償を考えると、まず1に関しては、個人として加入している生命保険や、医療保険などがある。

また、それらの保険に「災害特約(事件、事故に巻き込まれた時の上乗せ保険)」などがついていれば、それらも該当する。

しかし、これは自分で支払っていた保険なのだから当然の権利。

2の「従業員として」ということに関しては、今回は「職場」で被害に会っていることから、京都労働局が早々に「労災認定」という見解を出しており、そのため労災の給付金が得られる。

労災の補償は、亡くなった方のご遺族の人数やその関係性(配偶者、子、親、兄弟、生計を支えているか?など)、子供がいる場合はその年齢などが関係する。

また、厚生年金にも加入していることから、遺族年金も受け取れる。

なお、これらは両方を受取れるわけではなく「併給調整」というものがされ、このあたりのルールは極めて複雑なのだが、ざっくり言えば、

妻と18歳未満の子がいる

という状況であれば、生前の給与のおおよそ7.8割が補償される。

また、それらの給付は税金がかからないため、手取りの実感としては、あまり変わらないという感じかもしれない。

しかし、亡くなった当時の年収を基準として給付金額が決まるため、当然ながら昇給もないし、更には子が18歳になるとガクンと給付が減ってしまうので、「生きていれば」稼げるはずだった生涯賃金と比ぶべくもない。

逆に独身者の場合、これらの補償は手薄で、

「経済的損失を受ける親族がいない」

という理由でそれほどの補償金額にはならない。

もちろん、親に仕送りしていた、同居して面倒を見ていた。というような事情があれば考慮されるが、そうでない場合は冷たいもの。

当初の補償は手厚いが、長い目で見れば大きな経済的損失をこうむる家族(主に配偶者)、補償が少ない独身者の親族。

民事上では1億円を超えることも少なくないこれらの損害の賠償は、絶対的に事件を起こした者が負うべきものだが、多くの場合、犯罪者やその家族が責任を果たすことはない。

そのような時のために、犯罪被害給付制度がある。

これは犯罪者からの賠償や、公的補償(遺族年金、労災など)を受けられない場合、

「死亡」
「重傷」
「後遺障害」

の3つに対して、国から死亡で最高3,000万円弱、1級障害で最高3,974万円の補償を受けることが出来る制度。

しかし、前述のような労災と遺族年金を受け取っている場合、この給付金を受取れたとしてもその金額は大きく減るし、公的補償が薄い独身者の場合も、そこまでの金額にはならないことが多い。

「お見舞い金」的な制度であるため、民事上の損害賠償額には遠く及ばないのである。

結局のところ被害者の家族は十分な補償を受けることが出来ず、愛する家族を殺されただけだ。

こんな理不尽なことがあるだろうか?

もちろんお金の問題ではない。

お金で傷が癒えることはない。

そんなことは重々承知しているが、残された家族の生活や、また、今後多く出てくるであろう後遺障害を抱える方々の生活。

現実問題としてお金は重要で、そのことは生命保険の仕事を通じて嫌というほど知っている。

だからこそ、今回の事件には忸怩たる思いしかない。

犯人は極刑に処せられるだろうが、それですら生ぬるい。

感情論だけで言えば、そう思わざるを得ない。

本日のコラムでした。



 

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8月 1st, 2019 by