最近よく聞く「MMT(近代貨幣理論)」をご存知ですか?


最近、政治や経済の議論で、

「日本は国債をほぼ国内だけで消費している。だから絶対に破綻しない。だからこそ・・・」

むしろ積極的に財政出動をしてデフレから脱却しなくてはいけない!!

という主張を耳にする。

最近ではれいわ新撰組の山本代表があちこちで、

誰かの借金は誰かの資産

というキャッチフレーズで、財政出動の必要性をとなえている。

国債を発行すれば「政府の借金」は増えるが、一方で「国民の資産(貯金)」も増えるという理屈。



このような考え方は、ここ数年で台頭した

MMT(Modern Money Theory)

という経済学的思想に基づいている。

日本語に訳すと、現代貨幣理論と言う。

MMTにも諸派あり、今のところ「MMTとはこれ」という完璧な定義はないようだが、大枠としては以下の2つの考え方を軸としている。(wkipediaより抜粋)

・ある国が自国通貨建ての国債を発行し、いくら借金しようと、いざとなればみずから新たにお金を発行して返せるので返済不能にはなり得ず、財政破綻することもない

・そのため、自国通貨を発行する政府は高インフレの懸念がなければ財政赤字を心配する必要はない

従来の考え方では「財政赤字」の増加は、金利上昇を招き、それが景気悪化を招くとされていた。

一昔前のギリシャ危機のような状況を思い浮かべると分かりやすい。

会社でも赤字が増えれば信用力が下がり、銀行からの貸し出し金利が上がる。

それが更に業績を悪化させる悪循環に陥る。それと同じことだ。

しかしMMTの考え方では、国は「会社も銀行も兼ねていて」、自分で好きなだけお金を刷れるのだから問題ない。としている。

ギリシャは自国通貨でなく「ユーロ」だったからダメだったのだと。

但し、じゃんじゃんお金を刷れば、お金の価値が希薄になり、結果、物価高、インフレを引き起こしてしまう。

つまりは、この「インフレ」だけに注意していれば

どんどんやっても大丈夫

という主張なのだが、これを聞いてどう思うだろうか?

 



普通の感覚なら、

んなアホな

と思うだろう。

多くの経済学者も同様の意見で、その点、MMTを主張する経済学者は異端とされてきた。

しかし、ひょんなことから、MMTの実効性が証明されてしまった。

そのきっかけがリーマンショック(2008年)

未曽有の金融危機に際し、各国、強烈な財政出動をおこした結果、政府債務は急激に膨れ上がる。

以下は、日米中の「リーマン前」の2007年と2019年(IMF推測)を比較したもの。


*1 1ドル 100円換算
*2 1元 15円換算

日本の1325兆円に対して、アメリカ2272兆円、中国797兆円。

「日本の借金は凄い」と常日頃から脅かされているが、米中も相当なものである。

しかも、その増え方が凄い。

2007年から2019年の12年間で、日本は「僅か」1.42倍程度になったに過ぎないが、リーマンの震源地である米国は2.43倍。中国に至っては6.75倍にも債務が膨れている。

こうして見ると、

日本って健全なのかも!!

そう思えてくるから不思議だ。

無論、米中の人口とGDPは日本よりはるかに多いので、日本だけが傑出して「身分不相応な借金」であることは間違いないのだが・・・・



そして、各国の債務のほとんどは国債。

この12年間、どの国も借金をしまくったのに、日本、アメリカ、中国、どこもそれほど激しい物価上昇(インフレ)は起きていないし、金利も上がっていない。

日本においてはゼロ金利が続いている。

これは過去の経済理論ではあり得ないことで、インフレと金利高騰が

起こっていないとおかしいのである。

しかし、何も起こらない。

だからこそ異端のMMTが「現代」貨幣理論として台頭してきた。

しかも、ほほ国内で国債を消費し、物価も金利も上がらない日本はMMTの

「最も優秀な成功例」

とすら言われているのだから、誇らしいやら恥ずかしいやら、何とも微妙な感覚である。

結局のところ、リーマンきっかけで、大国が同時期に大量のマネーを流出させたので、それらが拮抗し、

何とも不思議なバランス

が取れているだけのような気もするが、そんな偶然の現象も「MMT」などともっともらしい単語をつけると、それらしく聞こえるし、それを信じる人もいる。

それらの人たちは、MMTを低成長や格差是正の「特効薬」のように言うが、

返せない借金はするな!!

身の丈にあった生活をしろ!!

という親から教えられた「経済理論」の方がしっくりくる私にはMMTはどうにもうさん臭い。

これが本物なのか、それともただの幻想なのかは、10年後、20年後に俯瞰するしかない。

皆で まだまだ 綱渡り

少なくとも、そんな「MMT」がしばらく続きそうだ。

本日のコラムでした。



 

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8月 13th, 2019 by