台風、誰もいない水道橋雑感


先ほどから火災報知器の大音量が鳴り響いている。

「記録的な台風」

とされる台風19号。それが関東に上陸した本日、10月12日は土曜日。

弊社は土曜日も営業していて、と言っても代表である私が1人で事務所番をしているだけ。

平日には保険の相談が出来ない方もいるだろう。

そう思い、世の中が休日の土曜日に一人でチャット相談を受けているのだが、一日パソコンに向かっていても、日に来る相談は1件か2件。

だったら休みにしても良いのだが、普段はオフィスにスタッフが、家には家族がいて、なかなか一人になれる時間もないものだから、誰もいないオフィスで今後のことを考えたり、ブログを書いたり、本を読んだりして過ごす時間はそれはそれで大切なのである。

そうして、来るか来ないか分からない相談者を待つ。

と、いつもならそんな感じで過ごすのだが、超大型の台風が近づいている今日ばかりはそうのんびりもさせてくれないようで、冒頭で述べた通り、「ジリン!!ジリン!!」という火災報知器の大音量が人気のないビル内に響き渡る。

朝から何度目だろうか。

築40年を超える古いオフィスビル。

地下のどこかに雨が浸水したようで、それが火災報知器のセンサーを刺激しているとのこと。

だったら大本のスイッチを切っておけば良いものだが、

「それでは本物の火災が起こった時にまずいので・・・」

毎回、警報を解除しに駆け付ける警備員がバツの悪そうな顔でそう言えば、こちらも納得するしかない。

そんなわけで至福の土曜日は、朝からの絶え間ない大音量の警報と、そして時間を追うごとに強くなる雨が窓ガラスを叩く音で、誠に落ち着きがない。

3度目の警報機が鳴った時。

時計を見るとちょうど12時。

それまでの経験上、警報が解除されるまではおおよそ15分程度かかるので、雨合羽に着替え昼食に出る。

しかし、と言うか当然と言うべきか、どこのお店にも

「台風のため臨時休業」

と張り紙があり、営業していない。

昼食のいつものルーチン。

立ち食いそば、ラーメン屋はもちろん、チェーン店のうどん屋や牛丼屋、更にはコンビニまで休んでいる始末。

うちの事務所がある水道橋は、東京ドームでの野球やコンサート目的の人で常にごった返し、正月ですら人が多い。

その人々を当て込んだ周辺の飲食店も年中無休のはずだが、それらが全て暗く静まりかえり、道にも人は歩いていない。

この場所で起業してから数年。

こんなに静かな水道橋は見たことがない。

何だか珍しいものを見たような気がして、騒がしいオフィスに戻るよりはと、大雨の中、街中を散策する。

JR総武線と並行して走る神田川まで来ると、水位は大幅に上がっていて、普段は穏やかな神田川が激流のように大きくうねっている。

ふと気づくと、私の横では、恐らくはラグビー観戦に来たのであろう某国のユニフォームを来た中年の外国人数人がそれを眺めていて、理由は分からないが「Ohhh!!」という声を上げて興奮している。

だがその気持ち、分からなくもない。

子供の頃から嵐が好きで、「危ないから」という親の制止もきかず、大きな台風が来ると友達と外に飛び出し、転んでしまいそうになるような強風に煽られ、息も出来ないほどの大雨に打たれてはキャッキャ、キャッキャと喜ぶ。

危険なだけで何の意味もないが、ちょっとした冒険心を満たしてくれたのだろう。

「ちょっと川の様子を」

私のような興味本位ではなく、農業関係者などが自分の農地を心配して、川や農水路を見に行く、そして流されて命を落とす。

大人になってそんな事故が多く発生していることも知っているし、何より保険の仕事を通じて、台風の怖さは思い知っている。

それでも「自分だけは大丈夫」と思って、子供の頃と同じようなことをしているのだから、その成長のなさに何とも呆れるしかない。

と、次の瞬間。

目の前を何かがかすめる。

壊れて金属の骨があらわになったビニール傘。

それが強い風に飛ばされ、私と外国人の数十センチ前を横切って川に落ちていった。

傘は見る間もなく激流に揉まれ沈んでいく。

数十センチというのは大げさかもしれない。

実際には1メーター程度は離れていたのかもしれないが、体感としては「すぐ前」をすごい速度で飛んで行った。

あんな尖ったものが頭でも直撃したら軽い怪我では済まないだろう。

その拍子で、「傘のように」目の前の川に落ちてしまったかもしれない。

そんな映像を浮かべ、急に怖くなる。

横の外国人も同じことを思ったようで、言葉も通じないのにお互い目を合わせ

「早く建物の中に入ろう」

と頷きあった。

会社に戻ると、またもや警報が鳴っていた。

早く帰れってことか・・・

朝、会社に来る時、

「こんな台風くらいで皆大騒ぎしやがって。俺は会社行くぜ」

そんな訳の分からない気骨もなくはなかったが、警報の轟音と、壊れた傘の骨一本でその気骨もポッキリと折られる。

やはりこんな日は外に出てはいけない。

そんな当たり前のことに気づかない自分の愚かさを自省し、雨の中、帰宅の途についた。

これから更に台風の威力は強まるらしい。

皆様もお気をつけて。

本日のコラムでした。

 

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10月 12th, 2019 by