男性の育児参加「育休」より「時短」の方が良いこれだけの理由


「男性の育休」がブームらしい。

先日、結婚された小泉進次郎氏も

「育休っていう話題に触れただけでこの騒ぎ。日本古いね、固いね」

と、どこから目線だか分からない「セクシーコメント」を発していたが、そんな啓蒙?もあって、育休を取る男性が増えているそうだ。

しかし、実際のデータを見ると、イメージと実像は随分と違う。

まず、こちら。

男性の育児休暇取得率の推移。

2005年 0.5%
2010年 1.38%
2015年 2.65%
2018年 6.16%

出典:厚生労働省 雇用均等基本調査 平成30年度

ここ数年で取得率は伸びてはいるものの、取得しているのは16人に1人程度(6%)なので、実感としては

まだまだ珍しい

という感じだろう。

また、取得期間についても

5日未満   56.9%
14日未満      17.8%
30日未満          8.4%
3ヵ月未満       12.1%
3ヵ月超     4.6% 

出典:厚生労働省 雇用均等基本調査 平成27年度

となっており、全体の74.7%が14日以内となっている。

約2週間(14日)の休みなんて、育休と言うよりは「出産お祝い休暇」程度。

逆に、何となく育休のイメージに近い「数か月の休み(3ヵ月未満+3カ月超)」は16.7%。

取得者6.16%の16.7%は、約1%。

つまり男性100人のうち1人しか、長期の育休は取っていない計算となる。



政府としては

「2020年度に13%の取得」

という目標を掲げ、一部の議員の中には、

「ショック療法として取得を義務化するべき」

との意見もある。

そのような動きをうけ、今年の6月に

「男性の育休義務化を目指す議員連盟」

という、何のひねりもない名前の集団まで発足したそうだ。(ちなみに55名も参加)

さて、私は一応は会社の経営者でもあり、二児の父親でもある。

その上で、批判されることを承知で言うが、

男性の育休ねぇ・・・義務化なんて意味あるかね?

と、思う。



ポイントは「仕事のキャリア」と「育児への効果」だ。

どんな仕事にも連続性がある。

育休「風味」の数日から2週間程度の休みであれば大した影響はないが、数か月、1年となれば、その連続性は切れ、仕事のキャリアにはマイナスとなる。

場合によっては生涯年収にも影響するだろう。

誰もはっきり言わないが、これが「男性の育休」の負の側面であることは否めない。

会社側からしても、Aさんが休めば、その仕事をBさんがすることになり、Aさんが戻ってきたからと言ってBさんを外すわけにはいかない。それこそBさんに失礼な話で、Aさんには別の仕事を命じることになるだろう。

時には、本人の意に添わず、それを「パタハラ(パタニティ『父性』ハラスメント)」と言うらしいが、何でもかんでもハラスメントを付ければ物事が正当化されると思ったら大間違いだ。

想像して欲しい、プロ野球選手がシーズン途中に「育休取ります」と言った場合を。

数ヶ月後に戻ってきて

「俺のポジション、ファーストだから戻るね」

と言って、誰が納得するだろうか?

もちろんプロ野球選手と通常の会社では話が違うが、高度な仕事になればなるほど「プロ」の世界に近づく。

実際、女性の産休・育休後に、望んだ職種に就けなったり、昇進が遅れたり、給与が上がらない、などという問題が発生しているし、それを「時代遅れ」だとか「だから日本はダメなんだ」と言っても、現実がそうなのだから仕方ない。

むしろ、こっちの問題を解決してから、父親の話をした方が良い。



現時点で女性に押し付けている「キャリアの断絶」を、今度は父親に強制したところで、問題は解決しないと思う。

そして、女性の社会進出が進んでも、ほとんどの家で「旦那の収入の方が多い」、つまり父親が一家の大黒柱である家が依然として多いのである。

父親のキャリアは、各家庭にとって重要な「資産」であり、それを損なってまで育休を取るかどうかは個人の判断。国があれこれ言うのは大きなお世話だ。

また、そもそも男性の育休自体にも、やや懐疑的である。

「男性の育休」を推進しないといけない根本的な要因は、核家族化による「母親のワンオペ」が増加したことだろう。

つまり、近くに助けてくれる人がいない。ということだが、だからと言って、父親が一日家にいてもやることなどない。

男性の育休期間である「生後1年(最長2年)」の育児の主役は間違いなく母親で、父親はサポート役に過ぎないのだから、「頼んだ時に数時間動ける」という方が良い。

自分自身も二人の子供がいる経験で言えば、まとまった休みの「休業」はややオーバースペックで、時短勤務や、気軽に半休や有休を取れる、もしくは数時間仕事を抜けられるような「細切れ休暇」の方が効果的だと思う。

それならキャリアにも影響はしない。

男性の時短などと言うと、眉をひそめるおじさんが多そうだが、私はアリだと思う。

実際、国も育児中の時短勤務を推進していて、時短勤務者が出た時には企業に助成金(1人40万円)が出るような制度もある。

参考URL:厚生労働省 子育て期短時間勤務支援助成金

主に女性を想定したものではあるが、男性でも対象になるので「育児参加」という観点で見れば、こちらの方が良いかもしれない。

また、私が心配することでもないが、国の財政を考えても「育休」より「時短」の方が良い。

育休は雇用保険から給与の67%が給付され(6ヵ月間。その後は50%)、その上、社会保険料も税金もかからない。つまり、国からすれば、お金が出ていくだけで、社保を税金も取れないわけである。

一方、時短であれば給付はないし、社保、税金は取れる。

むしろ、男性の時短を推進して、企業側だけでなく、本人にも「時短で減った分」の給与の一部を給付してあげれば、国、企業、本人、三方良しだろう。

なお、男性の育休についてやや辛辣な意見を述べたが、もちろんその制度自体を否定するつもりは全くない。

・母親のキャリアを優先したいので、母親が働いて父親が育児

・兄弟が多く、一人では限界

・生後1年は二人で愛情をかけて育てたい

・子供、もしくは母親の病気などの理由でワンオペでは限界がある

等々、各家庭で考え方や事情が異なるので、制度としての男性の育休は今後も充実させていくべきだろう。

休業、時短、有給、半休、数時間の離脱

各人の事情に応じて、色々なオプションがあって良い。

「男性の育休」

という一つの価値観だけを押し付ける先生方こそ「古いね、固いね」と言ったところだろう。

本日のコラムでした。



 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします


11月 16th, 2019 by