批判する前に考えたい「人生会議(ACP)」の重要性


吉本新喜劇の小藪さんを起用したこのポスター。

「不安を煽る」

「現在、闘病中の人へ配慮がない」

などの批判にさらされ、お蔵入りになった。

なお、その主旨は、

「人間いつ亡くなるか分からない。自分の『最後』について、延命の有無など、どんなケアを受けたいか、普段から家族と話合っておくことが大事」

というもので、これらをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と言う。

それを「人生会議」と名付け、啓蒙をはかるのがこのポスターの目的。

ちなみに、文面を読んで、個人的にはとても大事な内容だと感じたし、これを見て怒っている人の気持ちは正直良く分からない。(感想は人それぞれだが)

と言うのは、これ(ACP)をやっておくことで、本人だけでなく家族も救われる。

保険の仕事を通じて、色々な「最後」を見聞きしてきたが、人の死に方は主に3つのタイプに分けることが出来る。

1 自分で認識して「最後」をむかえる

2 ある日突然「最後」をむかえる

3 認知症などにより、良く分からないうちに「最後」をむかえる



1の代表例は「がん」

体調や飲む薬の種類などにより、徐々に自分の「最後」が近づいていることが分かる。

このような場面で、メンタルの強い人なら

「昏睡状態になったら無駄な延命はしないで欲しい」

というようなことを家族にはっきり伝えることも出来るが、多くは本人、家族ともに

「大丈夫、大丈夫」

という言葉で何となく誤魔化してしまう。

そうではないことは誰もが分かっているのだが、「死」について真正面から向き合うことが出来ず、時だけが過ぎていく。

それでも、最後の最後になって、

「最後まであきらめない」

「もう苦しみたくはない」

「無理な延命はごめん」

などの「緩やかなACP(指示)」があれば、本人の意識がなくなってから、家族はその意図に沿って行動出来る。



困るのは2や3。

心筋梗塞や脳卒中、もしくは交通事故などにより「突然、昏睡状態」というような事態をむかえる。

もしくは、認知症などにより、本人の明確な意思表示がないまま、意識不明となる場合。

このような場面では、家族が「どのレベルまでの延命治療をするか?」という判断をしなくてはいけないが、

「もう止めて下さい。」

という一言は、いわば最後のトリガーを引くようなもの。

その決断を求めるのは酷で、だからこそ「何となく延命」されるケースが多い。

その点、

「こうして欲しい」

という事前のメッセージがあれば、周りは助かるし、本人も納得できるだろう。

なお、先にあげた「死に方の3タイプ」

それぞれ、どの程度の確率なのかご存じだろうか?

以下は、平成29年度の死因のランキング。(総数134万397人)

これを、「3タイプ」に分類すると、以下のようになる。

1 自分で認識        39.0%

2 ある日突然        31.3%

3 良く分からない 28.4%

多少のばらつきはあるものの、ほぼ1/3ずつに分かれている。

1であれば、病が発覚して、それが悪化する過程の中でACPを行うことも可能だが、2,3はそうではない。

どのタイプで「逝く」かを自分で選べるわけではないが、日ごろから指示を伝えていなければ、最後にAPC出来るチャンスは4割(39%)程度で、6割(31.3%+28.4%)は重い責任を家族に押し付けることになる。

結果、無駄な延命をされ、苦しむのは自分かもしれない。

アンケートでも、9割以上の人が、

「死ぬならスッパリと。無駄な延命はしないで欲しい」

と思っているのに、今の日本では意識のない延命患者が病院にあふれる。

やはり「ACP」が重要と言うことだろう。

ポスターの絵柄や文章にクレームをつけるのも良いが、もう少し本質的な議論をした方が良い。

そう思う、本日のコラムでした。



 

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12月 2nd, 2019 by