買っているのは農家のお父さん?「次のサブプライム」CLOとは


CLO

この単語を覚えておいた方が良い。

近々、「大爆発」を起こすかもしれない。

もしかしたら2020年中にも・・・

日本語ではローン担保証券と言われており、主に米国内の

「信用力の低い企業」

への貸し出し債権(当然、貸出金利は高い)を束ねて証券化した金融商品だ。



だが、一口にCLOと言っても、

・最優先で配当を受け取れる「シニア」 利回り2%前後

・その次の「メザニン」 利回り6%前後

・最も順番が遅い「エクイティ」 利回り15%前後

の3つの層が存在する。

利回りが高いメザニン、エクイティあたりが人気で、アメリカの好景気を背景に、ここ10年間で販売実績を増やしてきた。

その額、日本円で80兆円。

サブプライムローンの180兆円ほどではないものの、

「信用力の低い個人」

への住宅ローン債権を証券化したサブプライムと、対象が法人か、個人かだけの違いで、構造は同じだ。

2020年、米中貿易摩擦をきっかけとした景気減退が現実味を帯びるなか、

CLOの元となる「低信用企業」の債権(ローン)がそろそろ焦げ付き始めるのでは?

と、皆が疑心暗鬼になっている。

もしくは、再選を目指すトランプ大統領が、自身の支持基盤である「中小企業経営者」への餌として高金利の優遇策でも打ち出せば、それはCLOの元となる「ローン」の返済スピードの低下を意味し、利払いは一気に減る。

CLOは大暴落するだろう。

そのような背景から、ここ最近CLOの価格も下落が続いており、この状況が

「サブプライム(リーマンショック前)にソックリ」

と指摘されているのである。



だが、このCLO。

日本にとってはサブプライム以上にヤバイ。

実はサブプライム問題が発生した時、ほとんどの日本の金融機関はサブプライムを大して保有していなかった。

私が以前いた保険会社でも、確か投資金額は50億円程度で、総資産のコンマ何%の世界。

当初は「何の問題もない」と説明されていた。

しかし、その後、サブプライム投資に偏重していたいくつかの金融機関の破綻危機が報じられると、一気に信用不安となり、株価、債権、地価などが大幅下落。

震源地にいたわけではないのに、その後の「余波」に皆が巻き込まれたわけだ。

が、このCLOは違う。

日本の金融機関がメインプレイヤーとしてものすごい量を買っている

金融庁と日銀の合同調査(大手銀行のみ対象)では、80兆円の15%、12兆円程度を日本の金融機関が購入しているとのことで、特に下記の3行の保有額が凄い。

・農林中金   7.9兆円

・三菱UFJ    2.5兆円

・ゆうちゅ銀行 1.5兆円

計11.9兆円。

12兆円のうち、この3行でほとんどを占めている。

なお、一部マスコミでは「生保、地銀もCLOを大量に保有している」という話がチラホラ出ている。仮に大暴落すれば体力のない地銀などはひとたまりもない。

そんなことは分かっていても、どこの金融機関も長引く「超」低金利に干上がっており、リスクを取ってでもハイリターンを狙うしかないのだろう。

さて、先の3行、その中でもダントツなのは農林中金。

全世界に散らばるCLO 80兆円のうち、約10%(7.9兆円)を持っている計算。

なお、この農林中金、その名前の牧歌的なイメージから

「えっ?農業と林業の銀行でしょ?農家とか山に貸付するんじゃないの?」

と思うかもしれないが、全然違う。



過去には割引農林債券(ワリノー)などの債権を発行し、そこで集めた資金を農業、水産業などの関連企業に投資するなどの「地道なこと」もやっていたが、今はJAバンクが集める資金を運用する投資銀行業務に特化。

旧GHQ本部だった皇居沿いのDNタワー(第一生命の本社も入っている)にある本社にはアメリカの有名大学を出たMBAホルダーがゴロゴロしているそうだ。(wikipedia情報)

海外からは「日本最強のヘッジファンド」と見られていて、リスク性の高い商品でも積極的に購入することで知られている。

そのため、先ほど

「ほとんどの日本の金融機関はそれほどサブプライムをもっていなかった」

と言ったが、当時、結構なリスクを取っていた農林中金だけは大やけどした。
(あとは三菱なども結構やられたような気がする)

一時は破綻すら囁かれたのだが、その後政府管理下におかれ、何とか建て直して今に至っている。

覚えている人は覚えているだろう。

「また同じことやってんのか・・・」

という気もしなくはないが、ヘッジファンドなのだからリスクをとってリターンを追及するのは仕方がない。



農林中金の資金源は農家や林業、漁業で生計を立てるお父さん、お母さんたちが貯めたお金。

それが巡り巡って「CLO」という形でアメリカの低信用企業へ投資されており、全体の10%をも買い占めている。

日本の農村、漁村と遠いアメリカの企業を繋ぐ架け橋

これこそが金融と言うべきか、

人の金で危ないギャンブル張ってるなぁ・・・

と言うべきか。

でも勝ってるうちは良い。勝ってるうちはね。

本日のコラムでした。



 

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2月 11th, 2020 by