野村監督 男の死に様 虚血性心不全について


亡くなってから改めてその偉大さが分かる。

まさに野村監督のことだろう。

生前、「野村監督のファン」だと公言する人に会ったことがないが、いざ亡くなってみると、多くの人が悲しんでいて、著書を何冊が読んだだけの私程度でも、何となく喪失感がある。

一般の「俄かファン」ですらこんなことを感じるのだから、球界のショックは相当なもので、特に教え子たちが人目を憚らず泣き崩れる姿を見ると、愛され、感謝されていた方なのだろう。

正直なところ、生前、人に慕われている印象はあまりなかった。

が、これも照れ屋の監督が自分自身で作ったキャラクターで、必要以上に人とベタベタせず、昔の栄光でチヤホヤされることを潔しとしなかったのではないか?

生きている間は孤高に「ニヒル」を演じ。亡くなった後、多くの人に惜しまれる。

男としてこんな格好良い死に様はない。



野村監督の死因である虚血性心不全。

お客様、そしてお客様のお父様、お母様、先輩で、同じ原因で亡くなった方が5人いる。

大変不謹慎ながら、私はこれで亡くなるのが一番良いと思っているし、出来れば自分もこれで逝きたい。

心筋梗塞(欠陥が詰まって塞がる)が、ウッ!!ときてドタンと倒れるのに対し、虚血性心不全の場合は症状としては貧血のようにフラフラするところから始まる。(ことが多い)

あるお客様のお父様(80代後半)は、朝起きて

「なんか具合が悪いな、風邪ひいたかなぁ、ちょっと病院行ってくる」

と近所のかかりつけ病院へタクシーで行き、ドクターもまさか心不全とは思わず(見抜けないドクターもどうかと思うが・・・)、

「じゃあ、点滴でもしますか」

ということになり、処置室へ。

横になり点滴を打っていたが、30分後、看護師が気づいた時には亡くなっていた。

まさに「眠るように」という表現がぴったりで、息子さんご自身が、

「親ながら、ホントに幸せな死に方だわ・・・」

と妙に関心されていたが、全く同感。

無論、虚血性心不全にも色々あるので、あくまで一例でしかないが、私が知る虚血性心不全で亡くなった方は5人とも同じような感じだった。

全員が「なんか具合が悪い」から始まり、その日のうちに亡くなった。



心筋梗塞はいきなり血管が詰まるので、経験者の話を聞くと、

「後ろから撃たれたかと思った」

「誰かに心臓を押しつぶされた感じ」

などなど、相当痛いし、苦しいらしい。

対して、虚血性心不全は、少しずつ症状が進行するので、本人もそれほど苦しまず「気を失う」という感じに近く、そしてそのまま亡くなる。

だが、周囲からすれば、その人が突然この世から消えてしまうので、その喪失感は強い。

だからこそ若いうちに逝かれると辛いのだが、野村監督もそうだが、80代にもなればいつ何があるか分からず、どんな原因で亡くなろうとも、それが寿命。

「仕方ない」と諦めるしかない。

勝手な主観ながら、保険屋として色々な死に方を見てきた立場で言えば、数ある「死因」の中でも、虚血性心不全は、余韻を残した中、パッと幕が閉じたようでもあり、潔い良いエンディングだと感じる。

選べないことは重々承知した上で、

80代で虚血性心不全

がベストだと思っているし、出来れば自分もこれで逝きたい。

野村監督は、ご夫婦揃って同じ亡くなり方。

お二人とも生前は色々批判もされたが、余程「徳」を積まないとこうは死ねない。

そして、そのことは周囲の涙が何よりも物語っている。

本日のコラムでした。



 

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2月 18th, 2020 by