ドームのキャンセル料1日2,000万円!イベント保険とオリンピック


新型コロナの影響で、マラソン大会やコンサートなどが相次ぎ中止を発表している。

だが、実際にイベントを取り止めるのは並大抵のことではない。

イベントはそれ自体が大きな神輿のようなもので、多くの人間が担ぎ上げたものは容易には下ろすことが出来ないのである。

一言で言えば、

莫大な金がかかる

ということ。

キャンセルにより、

・会場使用料

・それまでの人件費、設備投資費、広告費

これらが全て無駄になり、そして、当然、チケット代、参加費などの「収入」はゼロ。

大赤字である。



例えば、弊社の目の前にそびえる東京ドーム。

コンサートの聖地だが、1日の使用料は平日1,800万円、休日2,000万円、準備日が750万円となっている。

土日2日間のイベント、準備に2日。

こんなケースで言えば会場費だけでも5,500万円かかる計算。
(2,000万円×2日+750万円×2日)

ちなみにキャンセルフィーは以下の通り。

・3ヵ月以上前   30%
・1~3ヵ月未満 60%
・1か月以内  100%

先の例で言えば、3ヵ月前に中止を決断しても1,650万円。1ヵ月を切れば5,500万円満額を支払わないといけない。

なお、以前、大規模イベントを企画している会社の方からお聞きしたのだが、このような会場のキャンセルフィーは厳密に請求されるそうで「今回は事情が事情だから・・・」というような情状酌量は一切ないそうだ。

特に予定が詰まっているドームクラスの会場になると「売り手市場」で、一回でも不義理をすると、今後「貸してもらえない」というリスクがある。

そのため、請求された金額をきっちりと支払う必要があるとのこと。

対して会場設営の業者や演者などは、長い付き合いもあるので、多少は事情を汲んでくれるそうだが、それでも「かなり揉める」のは必至で、中には「そのイベントで食っている」というような人もいるので、それらの調整も一筋縄ではいかないそうだ。



なお、こんな時のために「興業中止保険」というものがある。

・天候不良による中止

・交通事情による中止

・出演者の急変(死亡や体調不良)による中止

などが支払対象で、損害を補填してくれる。

ちなみに、この保険は保険料がムチャクチャ高い。

イベントの種類や内容、規模などによっても違うが、だいたい補償額の10~20%程度の保険料が設定されている。

例えば、「イベントが中止となった時に最大1億円を支払う」という契約内容だった場合、保険料は1,000(10%)~2,000万円(20%)の間が相場。

主催者からすれば、

「何回か保険料払ったらイベント1回分じゃねーか!!」

という感じで、実際には何年かに一回の「キャンセル」という有事に向けて自分でお金を積み立ているようなイメージ。

損失を複数年に分散させる効果しかない。(但し、企業の財務会計的には有効)



しかも、この保険。

今回の新型コロナでは支払対象外となっている。

残念ながら、今の状況では何の役にも立っていない。

つまり、主催者からすればイベントを中止すれば、即ち大損失ということになる。

それでもジャニーズなどの大資本であれば、ファンの健康を第一に考えて、中止という「英断」が出来るが、中小のイベンターが「中止」すれば下手すれと自社が吹き飛ぶ。

進む(開催)も地獄、退く(中止)も地獄

だったら進むしかない、ということでいくつかのイベントは開催が強硬されているというのが現状ではないか?

良くも悪くも「中止」の決断は主催者の責任感と資本力が試される。



さて、東京オリンピック。

既に延期や会場変更の話が出てきている。

果たして東京オリンピックは保険に入っているのか?

結論としては「入っている。」
(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会による説明)

東京海上日動がゴールドパートナーなので、恐らくは同社を中心とした保険が組成されていると思われるが(ただの推測)、補償内容については全く分からない。

ただ、前述の通りウイルスによるものは対象外だし、また、主催者側都合の会場変更、延期もダメだろう。

仮に中止とでもなれば大損害。

とは言え、我が国は世界第三位の経済大国。

ジャニーズと同じく、国民の安全が一番!!たかがオリンピックの中止くらいで国が揺らぐことはない!!

そんなマッチョな意見もあれば、「大国」も今や国民一人当たりのGDPは26位と低迷。

すぐ下の27位にはイタリア、28位には韓国がいて、実態としては「中小国」

とても「中止」には耐えられない・・・

という意見もある。

だったら進むしかない!!

遠くからそんな声の大合唱が聞こえてくる気がする。

本日のコラムでした。



 

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2月 26th, 2020 by