生保のオンライン商談 凄腕セールスがオペレーターに負ける日




明治安田がスマホで契約までを完結できるサービスを始める。

業界関係者からすれば衝撃的なニュースである。

少々分かりにくいが、これは明治安田が「ネット生保」を始めるということとは違う。

ネット生保の場合、商品の説明も手続きもネット。

全てがオンラインで完結している。

しかし、今回の明治安田の場合、あくまで販売をするのは自社の営業職員。

ビデオ会議で商談を行い、最終的にオンラインでの手続きをとる形。

今までの商談の流れを「オンライン化」したもので、ネット生保とは根本が違う。

大手生保の一角である明治安田がここまで思い切った施策を打った理由。

それはもちろん「コロナ」

人と会えない

という今の状況は生保業界にとっては死活問題で、各社「郵送での申込OK」、「ビデオ会議OK」などの方針を打ち出しているが、申込をオンラインにするというのは明治安田が初。

ユーザーからすれば、その利便性は高く、今後各社が後追いする可能性は高い。

証券、銀行に比べ、致命的にIT化が遅れていた生保業界だが、コロナという「外圧」によって、否応なしに急速な対応を求められている。

では、このような「オンライン化」は業界にどのような変化をもたらすのだろうか?

ここでは弊社の経験を踏まえ、2つのことを予測したい。



 

1 商品はよりシンプルになるが、プラスアルファで勝負

弊社では7年前からチャット、メール、Zoomなどのビデオ会議を使ったオンライン商談に取り組んでいるので、多少の見識はあると自負しているが、

オンライン商談では複雑な商品は売れない

というのがその結論である。

あくまでイメージだが、ネット生保が販売している極めてシンプルな商品を複雑度100だとすると、オンライン商談では130くらいまでが限界。

あまり複雑な商品だと、説明をしているうちに双方が息切れしてしまう。

だからこそニーズを2,3に絞って、それに対して余計なものをそぎ落としたシンプルなプランを提案をしていく。

それが重要だし、そもそもセールスの観点からしても正攻法。

そのため「オンライン化の世界」では各社の商品は今より簡素にならざるを得ないだろう。

とは言っても、ネット生保ほどにはシンプルにはなれない。

もし各社の商品がネット生保なみに「簡単」になるのであれば、営業マンが介在する必要もないし、第一、コスト構造的にも営業マンを抱えた状態ではネット生保には勝てない。

そのため「シンプル+プラスアルファ」という商品が増えるのではないか。

サイトを読んだだけでは分からないが、誰かが補足すればその良さが分かる。

ちょっと高いが、ちょっと良い

今後の商品開発には、そんな絶妙なバランスが求められる。



2 凄腕セールスが礼儀正しいオペレーターに負ける日

「オンラインで商談をする」ということはどういうことか?

それは、お客様が「話を聞きたい」と思っているということだ。

そうでなければスマホの前に、パソコンの前に立たない。

その点、従来の保険のセールス手法であった「ちょっと強引にアポを取ってなんとか」ということがオンラインでは出来ない。

ここで重要なことがある。

それは、

話を聞きたい人にセールスは無用

ということ。

この7年間、数多くのオンラインでの商談を行ってきたが、業界16年目の私と1,2年の経験のスタッフの受注率はそれほど変わらない。

要は「自分から保険の話を聞きたい」という人に対しては、説明がちゃんと出来ることが大事で、セールスマンとしてのスキルはそれほど重要ではない。(あまり認めたくないが)

聞いたことにしっかりと答える。むしろセールス色はない方が良いくらいだ。

例えば、こんな話。

卵が必要で、スーパーに行き、店員にどこに置いてあるかを聞く。

そんな時、

「卵ですかぁ~夕飯はオムレツですか?だったら牛乳も一緒にどうですか?」

そんなことを言われても鬱陶しいだけだろう。

まずは卵のところに案内し、迷っているようなら「何を作るのか」を聞き、それにあった銘柄を伝える。

その程度のサポートで良い。

もちろん中には完全に的外れと言うか、どう考えても死亡保障が必要なのに学資保険にこだわっているような方もいる。



これは卵が必要なのに野菜売り場をウロウロしているようなもので、このような時には「卵売り場はあちらですよ」とちょっと強めに言わないといけないこともあるが、実際のところ9割のお客様は自分に何が必要かをあらかじめ分かって商談にのぞんでいる。

「保険はオンラインで」ということが当たり前になれば、基本的には「自ら入りたい」と思っている方だけを相手にすることになり、凄腕のセールスマンよりは礼儀正しいオペレーターの方が好まれるだろう。

究極的にはAIで十分という時代が来るかもしれない。

以上2点。

7年間の経験も踏まえ「オンライン化が生保業界にもたらすこと」を考察してみた。

「生保は一騎当千のセールスがしのぎを削る世界」

そんな価値観の中で生きてきた私からすると、このような変化は少々寂しい気もする。

しかし「IT化・ネット」は常に既得権を壊し、ありとあらゆる業界の景色をガラっと変えてきた。

生保業界にもいよいよその波が来たということだろう。

本日のコラムでした。



 

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6月 25th, 2020 by