自殺したい人に考えて欲しい「自殺した後」の話


有名俳優が自ら命を絶った。

先日も、あるプロレスラーの女の子が亡くなり、最近、自殺の話題が続いている。

このようなことが起こると、どうしてもマスコミは原因を究明したがる。

女の子は出演番組の過度な演出によって引き起こされた誹謗中傷、俳優さんも同様の誹謗中傷や、真面目すぎる性格、肉親との軋轢などが報じられている。

だが、はっきり言って理由などどうでも良い。

大事なことは、

絶対ダメだよね

ということ。

それをちゃんと言わないといけない。

サッカー選手の本田圭佑さんなど、一部の方は「死んではダメだ。」ということを明言しているが、全体的には「かわいそう」、「辛かったんだろう」という論調が多い気がする。

しかし、自殺は本人より「辛い思い」をする人がいることを忘れてはいけない。

本日はそんなお話。




保険の仕事をしていて、自殺と無縁でいられる人は少ない。

契約者が自殺してしまうからだ。

私自身も決して少なくない数のお客様が自殺し、保険金をお支払いしてきた。

そして、その理由は、今回の俳優さんと同じく、大抵は

良く分からない

「多分あれでは?」というようなものがあったとしても、他者からすれば、到底死を選ぶほどのこととは思えず、結局は「本人は苦しかったのだろう」という曖昧な結論にたどり着くしかない。

しかしその決断は絶対的に「間違っている」

そして、それが多くの人にマイナスの影響を与える。

 

第一発見者の憂鬱、他人の大迷惑

いきなり不気味なことを言うが、ちゃんと整えられた棺に入ったご遺体ではなく、いわゆる「死体」を見たことがあるだろうか?

私はある。

中学3年生の時に、数日連絡が取れない祖母の家に様子を見に行ったら、ベッドでうつぶせになって亡くなっていた。

自殺ではなく死因は心筋梗塞で、夜中寝てる間に「ウッ」と来て、そのまま旅立った。

それも幸せと言えば幸せではあるが、祖母の亡骸を目の前にして

「うつぶせじゃかわいそうだ」

と表を向けた。

しかし、季節は夏、しかも死後数日経過していたため、顔はドス黒くうっ血して、目も鼻も判別がつかない状態だった。

祖母が亡くなったことより、その外見にショックを受けて、それからしばらくは夢でうなされたし、30年経った今でもなんとなく記憶に残っている。

私の場合は身内だから仕方ない部分もあるが、たまたまそのような場面に立ち会ってしまう人もいる。

私の先輩でも、契約者の家を訪問し、そこで自殺の第一発見者となった方がいたが、死後数日経っていてそれはそれは凄惨だったそうだ。(あまりにグロテスクなのでここでは描写しない)

今でも忘れられない、と涙ながらに語ってくれたので、強烈なトラウマとなったのだろう。

ご遺体はドラマのように美しくはない。

自ら命を絶つ人はそこまでのことを考えていないだろうが、発見してしまう方の立場にもなって欲しい。

またそれ以外にも、飛び降り自殺すれば下にいる人を巻き込むかもしれず、線路に飛び込めば電車が長時間止まり、多くの人の予定を狂わせる。

厳しい言い方だが、関係のない人からすれば、自殺はある種のテロだ。

大迷惑としか言いようがない。




 

「ウソ」をつかないといけない寂しい葬式

身内が自殺で亡くなった場合、家族は葬儀に集まってくれた方々に対し

〇〇は自殺しました

とは言えない。

そのため、何か理由をつけて取り繕うしかない。

ただでさえ肉親が衝撃的な亡くなり方をして悲しみに打ちひしがれている。

しかし、更に「ウソをつかないといけない」という重石を背負わされることにより、葬式も白々しいものになり、その寂しさに一層の拍車をかける。

そんなイベントをこなすことが家族にとってどれほどシンドイことか・・・

 

自分を責め続けるご遺族

「ダメな理由」の一番はこれだろう。

ある日突然、父親が、母親が、夫が、妻が、子が、自らの命を絶つ。

残された方はどうすれば良いのか?

今まで一件だけ、お子さんが亡くなった家に保険金を届けたことがある。

お子さんと言っても30代で、そして理由が分からないまま自殺してしまった。

亡くなった方とはそれなりに近い関係だったので「これも供養」とお母様とはほんの少しだけ昔話をさせて頂いたが、お母様は終始、涙、涙。

会話の中では、

「何でこんなことに」

「何故気付いてあげられなかったのか」

「どうして何も言ってくれなかったのか」

何故、何故、何故と自問自答し、それが数年、下手すれば一生続く。

親より先に死ぬことですら最大の親不孝なのに、よりにもよって自殺など・・・

高齢の親にどれだけの苦痛を与えているか分かっているのだろうか?

親が自殺した場合も同様で、子は「何もしてあげられなかった」と長い間苦しむ。

自殺は残された家族の心を出口も正解もない迷宮に閉じ込めてしまう。

以上、「自殺した後」のお話。

もちろん、自ら死を選ぶくらいなのだから、当人が一番苦しいはずだ。

また、日本は若者の自殺者が世界でもトップレベルで多いので、社会全体が逃げ場のない息苦しさに満ち溢れている。

でもダメなものはダメ。

それは今回の俳優さんも、ちょっと前の女子レスラーさんも、そして過去に自殺した私のお客様にも声を大にして言いたい。

精神科、いのちの電話、友人家族への相談。

死ぬ勇気があるなら、是非、別の道に一歩踏み出して欲しいと切に願っている。

本日のコラムでした。




 

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7月 31st, 2020 by