成人式当日に業務を停止し、多くの新成人の門出に泥を塗った「はれのひ」
その元社長が逮捕された。
観光ビザでアメリカに3ヵ月滞在し、帰国したところを御用となった映像が流されているが、身なりもきれいで、しかも家族で海外に長期滞在とは、何とも優雅である。
過去に会社を倒産させたことのある方を数人知っているが、その話を聞くと、債権者からの取り立ては、
「マジ半端ない」
らしい。

不動産や預金は早々に銀行に取られ、自宅や会社には取引先が張り付く。
更に不良債務を買い取った「その筋」の人たちに狙われ、全てを奪われる。
それが会社を潰す。ということだが、対してあの社長は倒産当初から雲隠れし、その後もアメリカまで逃亡してしまった。
何故そんなことが可能なのか?
その後「粉飾決算」、「役員報酬4,500万円」という報道で、なるほどな、と思った。
一言で言えば、数年前から綿密に計画された「倒産」だったのだろう。
この男は経営者としては無能だが、頭は良い。そう感じる。
まず、この計画の第一歩は「個人保証」から始まる。
通常、銀行から会社に融資を行う場合、経営者本人の「個人保証(連帯保証)」が求められる。
「会社が返せない場合は、個人で弁済します。」
という約束をさせられるのだが、このために会社を倒産させれば経営者は身ぐるみを剥がされることになる。
これは多くの経営者にとって精神的な重荷になるだけでなく、若者が起業しない要因になっているとも言われている。
1回失敗したら人生終わり
そんなシステムでは誰も挑戦しないだろう。ということだ。
対して、他の先進国では「事業」に対して融資が行われ、経営者個人に保証などは求めない。
国際的にも「個人保証」は日本の悪弊と言われているので、昨今では金融庁が旗振り役になって、
「個人保証はもうやめよう」
という流れがあり、銀行に対しても「極力、個人保証を求めず、事業の内容を精査しなさい。」と指導している。

しかし、実態としてはまだまだ個人保証がついている融資が多く、そのため経営者を対象とした「個人保証外しのための銀行交渉術」などのセミナーが人気を集めている。
で、「はれのひ」だが、恐らくこの個人保証がついていないのだろう。
もしこれがついていれば、1月の段階で「丸裸」にされているはずで、とてもアメリカに逃げる資金なんてない。
なお、個人保証外しは、銀行にとっては「悪い話」なので、いくら「交渉術」を駆使したところで、そもそも業績が悪かったり、取引実績が乏しければ相手にしてくれない。
その点「はれのひ」は有利だ。
なんせ、粉飾なのだから。
いくらでも良く見せて、それを材料に有利に交渉することが出来る。
そして個人保証さえ外しておけば、倒産しても個人の財産には誰も手が出せず、あとは会社の資産を社長個人に吸い上げておけば良い。
それが4,500万円の高報酬ということになる。
売上3億8,000万円に対して明らかに過剰。
実態としては「赤字」なのだから、本来は役員報酬を下げて少しでも利益を出すべきだが、それをしていなところを見ると、数年前から「諦めていた」のだろう。
実際、2016年の決算では1億5,000万円の赤字となっていて、4,500万円くらいではどうにもならない。

そして「粉飾」となる。
昔、粉飾に手を染めていたある経営者から聞いた話だが、(今は持ち直して絶好調)
「メインは甘くない」
と言っていた。
実際に顧客からの入金や、業者への支払、従業員への給与などの「生のデータ」をもっているメインバングは、経営の実態を把握しやすい。
特に最近ではこれらの分析にAIも導入されているので、たとえ粉飾した決算書を持っていっても、細かいところで整合性が取れず、遅かれ早かれ悪事は露見する。
そのため、「メイン以外にもリスク分散のために」などと言って、他の銀行に話をもっていく方が早い。
その銀行としても、ピカピカの決算書を持つ会社との取引は大歓迎で、特にイケイケの担当者などにあたると、簡単に融資が引っぱれるそうだ。
報道を見ても、あの社長は新しい金融機関から数千万円の融資を複数受けて、それを返済にまわしつつ、個人として蓄財をしていた様子。
そして「計画通り」成人式当日の倒産。雲隠れ。アメリカへの逃走。となる。
とは言え粉飾で詐欺となれば、これは犯罪で、個人保証もクソもない。
銀行からの損害賠償は避けれず、これからは「半端ない」お仕置きが待っている。
いよいよ「丸裸」だ。
あの年齢で、無一文。そして数年の実刑。出てきて何の仕事があるのか・・・

逮捕された時の様子では、小さなお嬢さんがいる様子だった。
アメリカでの数か月。
逃亡を兼ねた家族孝行のつもりかもしれないが、人から騙しとったお金で娘と過ごした「楽しい思い出」が人生最後の輝きだろう。
道を誤ればこうなる。
自分にとっても戒めとなる事件だった。
本日のコラムでした。
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