ボランティア迷宮


ボランティア

正直なところ若い頃は嫌で嫌で仕方なかった。

28歳でIT業界から転じ、入った外資系生保。

外資系というのは総じて「ボランティア」好きなのだが、私が入った会社は特にその傾向が強く、年に数回のイベントへの協力がほぼ強制されていた。

特に入社してから2,3年のころはもし断ったら「ぶっ飛ばされる」くらいの勢いで怒られるので、グチグチ文句を言いながら参加。

児童養護施設のお祭りの手伝いや、中学生の詩の朗読大会のスタッフなど、言われるがままにやり、それなりの充足感はあったものの、それでも

「こんなことやるくらいなら仕事したい」

というのが本音。

だからなのか入社から数年経ち、それなりの中堅になってからは何だかんだ言い訳をして参加しなくなっていた。

私の中ではボランティアは偽善でしかなかった。

しかし、あることで私の考えは180度変わる。

きっかけは子供。

長女が生まれた時、妻が出産をした病院で入っていた部屋の目の前がNICU(新生児集中治療管理室)だった。

そこにはたくさんの赤ちゃんがいて、お父さん、お母さんが見舞っていた。

うちの娘は何のトラブルも病気もなく生まれ、私の親、妻の親、友人などが病室を訪れてきては「良かった、良かった、可愛い、可愛い」とやっている。

その数メートル先では小さな命が闘っていて、その横には我が子の回復を心から祈る親たちが。

とても嫌味に聞こえるかもしれないが、そのコントラストの違いに、いかに自分が恵まれているか、「普通」がどれだけありがたいことか、ということを思い知った。

そこから5年後。

2人目の長男が生まれ、その子が1歳の時に熱性けいれんを起こし、夜中に救急搬送された。

幸い命に別状はなく、検査の結果も良好で3日の「経過観察入院」で済んだ。

息子が入った病院は小児病棟だったが、そこにも病と闘く多くのお子さんがいた。

ベットの周りに絵を飾ったり、自分が好きなフィギアを並べたり、子供たちが各々のプライベート空間を彩っているが、それはつまり長期の入院であることを意味する。

ずっと寝たままの子もいれば、院内を走り回っているような子もいたが、それでも健康ではないのだからそこに入院しているわけで、また先生や看護師からは「なかなか来れない親御さんもいるので」というようなお話も聞いた。

そこの病院の壁に見つけた「ボランティア募集」の文字。

5年前のことが頭のどこかにあり、今回、改めて小児病棟の現実も見た。

「自分にも何か出来ることがあるのではないか?」

はじめて自発的にボランティアへの参加を考えた瞬間だった。

だが、この時も結局はやらずじまいだった。

この病院が家から遠かったこと、活動が日中だったこと、そして一番大きかったのは、外のウィルスを持ち込まないために厳格な衛生管理を求められたことだ。

正直、この部分が怖かった。

仮に自分でも認識していない状態で、院内にウィルスを運んでしまったら?

体はわりと頑丈な方だが、だからこそちょっと喉が痛いくらいでは「酒の飲み過ぎかな?」くらいで普通に生活をしていまっている。

そんな無頓着な私がやって良いボランティアではないような気がして、最終的には応募しなかった。

以来、ずっとこのことは心のしこりになっていたのだが、その後の新型コロナの発生によって、病院の衛生管理はより徹底されるようになり、現在、小児病棟でのボランティア活動はほとんどないようだ。

ただ、いつかは子供たちの役に立ちたい。そうも思っていた。

そしていよいよチャンスが来る。

妻が見つけてみた「学習塾の先生ボランティア」

家庭の事情、経済的な事業で、家で勉強する環境がなかったり、塾に行けない子供たちに学習の場を提供するNPO団体。

そこの手伝いをする先生のボランティアを募集していたので、応募してみることにした。

説明会、面談などがあり、いざ本番。

やや緊張しながら会場に行くと、団体のスタッフの方から「今日は〇〇ちゃんを見て下さい」とお願いされる。

勉強の内容自体はさほど難しいものでもなく、隣の子供から質問が来ればそれにこたえる程度だ。

一部、個性的な子もいるものの概ね良い子が多く、真面目に勉強に取り組んでいる。

そんな子供たちの横で「良き相談相手」として子供たちの勉学に並走するわけだが、これ・・・暇すぎる。

ボランティアも意外と難しい。

社会貢献、自分の好み、自己満足感、それらが上手く調和しないと長続きしないのだろう。

「別に俺じゃなくても良いかなぁ~」

結局、何回か参加させてもらった結果、お暇することにした。

そんなわけで「ボランティアすら出来ない私」は現在、多少の自己嫌悪に陥っている。

ただ、ここでやめてしまっても宜しくない。

多分、私に合った、私にしか出来ないボランティアがあるはずだ。

きっと、どこかに・・・・

本日のコラムでした。

 

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6月 28th, 2026 by