財務省の事務次官のセクハラ問題で、ちょうどキャッチーな話題になってしまったが、本日はハラスメントの話。
実は、ハラスメントのトラブルに「新人」が絡むことが意外と多い。
はっきり言ってしまえば、礼儀をわきまえない新人男性は絶好のストレス発散のはけ口になるし、若くて何も知らない新人女性はスケベオヤジのターゲットになりやすい。
もちろん「新人」が悪いわけではないが、その存在自体が、
ハラスメントを誘発しやすい
と言える。
弊社はこのような問題で、企業が従業員に訴えられた場合の
「賠償金を肩代わりする保険」
を取り扱っている。
その関係で、顧客企業や保険会社の支払い事例などから、それらの情報が集まりやすい。
家族がいて「簡単には辞められない」ベテラン社員と違い、新人は「嫌ならすぐ辞める」という身軽さがある。
そして短期間で辞めているからこそ、会社に対して恨みこそあれ、何の感謝の思いもない。
最近はこの手のハラスメント訴訟を、相談料無料、着手金無料の「成功報酬型」で手がける弁護士が増えているせいか、嫌な思いをした新人がこれらの弁護士とタッグを組み、「セクハラだ!!」、「パワハラだ!!」と元勤務先を訴えるケースが増加しており、その結果、「新人絡みが多い」ということになる。
その中身は、
「これは可哀想だな・・・」
というものから、
「こんなことで・・・」
というものまで様々だが、単純な話、昔より新人の権利意識が高くなっているということだろう。
もちろん
「与えられた地位や権限を勘違いした」
マネージャーや先輩社員は淘汰されていくべきで、そんなヤツはどんどん訴えられれば良いと思うが、一方では「拡大解釈され過ぎ」な気もする。
例えば、入社以来、遅刻ばかりで職務も怠慢、注意しても反抗的、そんな新人を厳しく怒ったところ「パワハラ」で300万円近い賠償金を支払う。
こんな事例は枚挙にいとまがない。
確かに内容を見ると、「バカ野郎!!」とか、「何で言ったことが出来ないんだ!!」と怒鳴った事実はあり、これはアウトだが、とは言え「賠償金300万円」とは信じられない。
とある労働法に精通した弁護士から「『怒鳴り1回』5~10万だな」というようなことを聞いたこともあるが、それが精神的苦痛の相場らしい。
これも時代と言えば時代なのだろう。
「ハラスメント」という錦の御旗が頭上にはためいているようなもので、それに唾すれば大変な目にあう。
新人をただのサンドバックに見立てた「ストレス発散」だったとしても、「良かれと思っての行為」だとしても、
告発された
上司や先輩が痛い目を見ることは必至。
企業とともに「個人」も連名で訴えられれば、賠償金の一部を負わないといけないし、そもそもそんな問題を起こしてしまえば出世にも響く。
過剰なハラスメントを庇うつもりはないが、とは言え「極端に弱い子」がいることも事実で、そういう人が自分の下に来て、ちょっとしたことで「訴えられた」のではたまったものではないだろう。
また、少々余談になるが、最近は本人よりも「親」が騒ぐケースも多く、親が会社に怒鳴り込んできた。などという話も良く耳にする。
要は「〇〇ハラだ!!」と誰か(本人だけでなく親なども含む)に言われれば、それが冤罪であっても、そこに愛があったとしても、会社員はそれで終わり。
疑わしきは罰する
そういう時代なのである。
だからこそ、多くの管理職にあるビジネスパーソンは「問題を起こさない」ことを重要視し、今やハラスメントに「巻き込まれない」ことも、必須スキルの一つということになる。
では、どうすれば良いのか?
しかし、残念ながら私は巻き込まれた「後」に出てくる人間なので、事前の防御策についてはよく分からない・・・・
そこで、色々な企業の管理職の方々にヒアリングをしてみると、名言が出てくる、出てくる。
その一部をご紹介したい。
名言1 「期待しない。興味を持たない。関与しない。」
いきなり深い。深すぎる。
期待するから怒りたくなるし、出来なかった時にがっかりする。初めから何も期待せずに、「何も出来ない奴」と思えば怒りも湧かない。とのこと。
名言2 「女性とは絶対に二人きりにならない」
これは結構言う人が多い。
あまり詳細は語れないが、うっかり二人きりになってしまい、後日、部下の女性社員から「セクハラされたと言いふらす」と脅迫された。というような話も多い。リスクヘッジの観点から言うと、これは正しい判断かもしれない。
名言3 「どんな部下も『社長の隠し子』だと思うようにする」
この言葉を聞いた時は思わず唸ってしまった。
社長の子供だと思えば、言い過ぎることはない。しかも、全く注意しないのも良くなさそうなので、やんわりと「良い感じ」にアドバイスが出来るそうだ。
名言4 「何も言わず『飛ばす』」
妙に神経質すぎたり、逆切れがひどかったり、全く言う事を聞かなかったり。
上司の立場からしても「モンスター部下」というものがいる。
変に対立して感情的になるより「飛ばす方が賢い」とのこと。
定期異動という名のもとに他の部署に移動してもらう。
そのような評判が立つと、その人は各部署から「腫れ物」のように扱われ、組織間での「ババ抜き」をしているような状態になるが、極めて現実的な対応策と言える。
名言5 部下は全員ICレコーダーを持っている・・・・
ここまで来ると「心の闇」を感じるし、逆に部下からの「ハラスメント(嫌がらせ)」が心配だが、実際のところパワハラやセクハラで高額賠償が命令された判例のほとんどで、
音声データ
が重要視されている。
記憶に新しい自民党の豊田議員の秘書パワハラ問題でも、ビジュアルを伴わない「声だけの怒声」が非常にインパクトがあることはお分かり頂けるだろう。
冒頭で述べた「職務怠慢な新人への激しい叱責で300万円」の事例も、その叱責現場を何度もICレコーダーで録音されていた。ここまで来ると「意図的にやっているのでは?」と感じるが、怒鳴ったことは事実なので仕方ないし、裁判所はその声だけを聞き、そこに至った経緯は聞いてくれない。
だからこそ、「部下は常にICレコーダーを持っている」くらいに思っていれば、言い過ぎることもないし、声を荒げることもない。ということか。。。。
以上、現場の「本音」をお伝えした。
そのほとんどは「深く付き合わない」、「言い過ぎない」という点に集中しているが、皆さんがいかにハラスメント問題に腐心し、どのような「考え方」で心の平衡を保っているかが分かり非常に興味深い。
個人的には「熱血指導」の昔を懐かしむ気持ちもなくはないが、時代は流れている。
スパルタ主義は前時代的なチョンマゲのようなもの。
「ハラスメントの御旗」には無駄に逆らわず、さっさと「マゲ」を落とす方が得策と言えるのである。
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