金の延べ棒伝説


「金の延べ棒」

金地金、インゴットなどとも呼ばれる。

これが金庫の中にうず高く積まれているような場面は、ドラマや映画で何度も目にしたことがあるだろう。

しかし、現実社会でもこれが出てくることが結構ある。

先日、とあるお客様から聞いたお話。

3年前、お母様が亡くなり、自宅の金庫から1kgの金の延べ棒が10本出てきたそうだ。

当時の時価で1本800万円。(1g 800円前後)

10本で約8,000万円。他に不動産、株、現金などもあったので、ほぼ40%ほどが相続税で取られたそうだが、手元の現金、株の売却益などで何とか納税され、不動産と金はそのまま保有されているとのこと。

「本当に税金で死ぬかと思ったけど、金は持っておいて良かった」

実際、その後の金の急騰で、現在、手持ちに延べ棒の価値は2300万円(1g 23,655円)を超えている。10本で2.3億円。

納税額を取り戻したと喜んでおられた。

そこから世間話として

「家にあったから、これ申告しなくてもバレないんじゃないの?って一瞬、頭の中の悪魔がささやいた」

ということをお聞きした。

だが、結論から言えば、

「絶対バレる」

この方も税理士から同じことを言われ、ちゃんと申告したそうだ。

 

何故分かるのか?

ポイントは3つ。

・購入履歴で分かる

・売却履歴で分かる

・税務調査で分かる

まず、金地金の「購入」には本人確認が必要で、それらがデータベース化されている。

特に2008年3月から施行された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」いわゆるマネロン防止法以降は、取引時確認(本人確認)がかなり強化されている。

これらは当然、税務署も容易に調べれるので、

「故人が金を買っているのに親族から申告がない」

となれば、すぐにバレる。

次に売却。

これも購入と同様に本人確認が必須。特に売却益200万円以上の場合には、かなり厳格なので、相続後に家族が「大量の金を売った」となれば、どう考えても怪しい。

最後に税務調査。

昨今の税務署の調査能力は半端ではない。

「どう考えてもこの程度の財産じゃない」

相続税の申告額を見て、そう判断されれば迷わず調査に来る。

なお、統計の数字だけを見れば日本では年間160万人ほどが亡くなり、そのうち相続税が発生しているのは12万件(人)前後。

つまり実際に納税をしているのは全体の7.5%だ。

更に相続税の調査は年間1400~1500件程度なので、12万件の中で「厳選された」1%強程度のところの調査が入るということ。

だが数百万円程度の相続税が発生した家に入るととも考えにくく、やはり相当な資産家に限られているのだろう。

知り合いの税理士から聞いた話だが、

「数千万円以上の相続税が発生した場合、2,3割は調査に来る感じ」

と言っていた。

もちろん金額が増えれば増えるほどその確率は上がるのだろう。

そんな税務調査。

税務署が「悪質だ」と見れば、かなり徹適的にやる。

屋根裏、床下なども総ざらいで見るので、そこでお宝(延べ棒)発見となることもある。

過去(2010年)には長野県内の資産家の土蔵の床下から、金の延べ棒210本が見つかったこともあった。

税務署員も度肝を抜かれただろう。

また、これは都市伝説ではあるが、銀行の貸金庫も「誰が持っているか税務署はほぼ把握している」らしい。

もしくは生前に把握していなくても、相続発生時には銀行の引き落とし履歴などに「貸金庫代」などとあれば、すぐに分かる。

貸金庫=何かある

となるだろうから、そこに延べ棒を「隠して」も無駄だ。

と、言うことで逃げ場はない。

後からバレたら「悪質」と判断され、重加算税、延滞税なども加算されるので、納税額は本来の1.5倍程度に増える。

ちゃんと申告した方が身のためなのだ。

 

が、ここまで書いてきて疑問も浮かぶ。

もし、もしも・・・・

2008年のマネロン法以前に現金で金の延べ棒を購入し、相続後も売らずに保有。

貸金庫以外の自宅、もしくは秘密の場所に保管。

隠しようのない不動産、株などの財産でしっかりと相続税を申告し、税務調査が来なかったら。

まあ、これは分からないだろう。

そして、このようなケースは恐らくたくさんある。

一体、この国にどれくらいの「金」があるのか?

誰も把握していない。

国が846トンの金を保有していることは公表されているものの、民間保有分の実態は不明だ。

代々の資産家が長年引き継いできた、場合によっては戦前から持ち続けていたような「金」が今もどこかで大量に眠っている。かもしれない。

本日のコラムでした。

 

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7月 26th, 2026 by