「私の履歴書」つまらない大企業経営者の話から学ぶ唯一のこと


日経新聞の裏面に連載されている「私の履歴書」

各界の著名人が月替わりで自身の半生を振り返るのだが、毎日、楽しみにしている人も多い。

そのため、お客様との世間話でこの話題がのぼることがあり、

「今の〇〇さんは面白い」

もしくは、

「今の人はイマイチ」

など、各々が好き勝手に論評をする。

そんな「履歴書」をもうかれこれ20年以上愛読しているが、面白い、面白くない、にはなんとなく傾向がある。



まず、創業社長は基本的に外さない。

ゼロから事業を興す創業者のバイタリティは凄まじく、若い頃から破天荒なエピソードが続き、更には起業してから成功するまでの紆余曲折はジェットコースターのようで、読んでいてハラハラする。

最近では「神回」という評価を受けたニトリの似鳥昭雄社長の話が凄かった。

大学の単位が足りず卒業出来ない。そんな場面で教授に「賄賂(確かお酒)」を渡して、泣き落としで何とか卒業させて貰ったり、学生時代、ヤクザを装って取り立て屋のアルバイトをしたり。

「真面目」な日経紙面だからこそ、こんな不謹慎な話が映える。



また、スポーツ選手も手堅い。

過去の「名場面・名勝負」の裏側や、その時の心理をご本人が解説するわけだから、やはり読んでいて飽きないし、一流プレイヤーならでは独特の考え方、世界観は人を魅了する。

この方面では、私は青木功氏が印象に残っている。

一方「イマイチ」なのは、俳優・女優、学者、大企業経営者など。

俳優・女優は始まった瞬間こそ「おっ!!」と思うのだが、その人生自体は意外と平凡。(誠に畏れ多いが)

女優はだいたい離婚していて、それが山場となるが「大変だったんですね」という程度の感想しかもたない。

学者も根が真面目なので、エピソードが弱く、稀に「学者なのに破天荒」というアプローチをしてくる人もいるが、それも「学者の世界では」という感じなので、創業社長に比べると薄い。

こちらの山場は「海外留学」

そこでの苦労話や失敗が語られるが、それが伝わるか、伝わらないかは筆者の筆力によるところが大きい。

なかにはワチャワチャしているだけで

「本人は大変だったんだろうな」

という軽い感想で終ることも少なくない。



そして、絶対的に面白くないのが大企業経営者。95%はつまらない。

だいたいが以下のストーリーでフォーマット化している。

腕白な子供時代 or 読書ばかりしていた線の細い子供

一流大学に進学。そこで恩師と出会うがエピソード弱め

卒業後、就職。しかし、希望の部署に配属されない

そこで腐らずに頑張る

2,3年で本社移動

そこからはエリートコース驀進

「海外勤務」、「上司、部下との関係」、「病気」

だいたいこのあたりの苦労話、失敗話を挟み、役員になってからは相当ダレる。

数年後「まさか自分とは思わず」社長を拝命

顧客の重要性、自社の社会的使命を社員に粘り強く語った、と語る。

最後に妻に感謝して終了。

人によって多少のブレはあるが、ほぼこのパターンが1ヶ月続くので、懸命な読者である私などは「またか」と思ってしまうのである。



最近では、2019年1月に連載した東京海上日動火災の石原元社長の回が

桁外れにつまらない

とネットで炎上した。

私も属する保険業界。石原氏はそこの超大物なので、個人的な感想は控えるが、要はこのフォーマットを綺麗になぞってしまったため、厳しい評価となったのだろう。

とは言え、これは読んでいる方の勝手な感想で、実際のところ大企業のトップにまで上り詰めた人なのだから相当な人物であることは間違いない。

そもそもがニトリの創業者や、世界の青木と比べられるのが酷なのだ。

が、同時にこうも思う。

よく受けたな

と。

自分の人生を何百万人というビジネスマンに「晒す」

それが私の履歴書。

しかも、レジェンド級の人たちが並ぶ中で「よし、俺も」と思えるところが凄い。

創業社長が大爆笑をかっさらい、名プレイヤーが聴衆を感動に包む。

そんな空気の中、壇上に上がりつまらない話を延々と出来る。

そんな

ハートの強さ

こそ偉くなる秘訣なのだろう。

月末。さしたる山場もなく、大企業経営者の「履歴書」が終盤を迎えると、

「ま、まさかこのまま終わるのか?・・・」

とドキドキする。

が、こちらのそんな心配をよそに物語はあっさり終り、最終日の稿には「筆者近影」という文字と共にドヤ顔でこちらに笑いかけてくる。

そんな笑顔を見て、

メンタル強いわぁ・・・この人

そう思い、自らの弱さを自戒する。

もっと強くならないと!!人の目なんて気にしちゃダメダメ!!

それが唯一、大企業経営者の履歴書から学べることなのである。

本日のコラムでした。



 

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5月 29th, 2019 by