もっと怒るべき「毎月勤労統計」の不正問題


毎月勤労統計の集計方法に不正があった。

本来、「500人以上の事業所は全て調査」するはずが、東京都においては1/3程度しか調査していなかった。

しかも給与水準が高い大企業が外されていたケースが多く、うがった見方をすれば

恣意的に統計を低くしていた

とも言える。

毎月勤労統計は雇用保険や労働保険の給付に関係する。

結果「過少給付」が発生し、その規模が数百億円にのぼると言う。

まずは、そのロジックを解説したい。

雇用保険は失業保険、労働保険は労災と言えば分かりやすいだろう。

失業した間の給付と、仕事で怪我や病気になった時の給付だが、失業保険は

「会社を退職する前6ヵ月間の平均」

労災は

「休む前3か月間の平均」

を使って給付金額を計算する。

この「平均給与」の60%とか80%を受け取れるのだが、この割合は収入によって変わる。

一言で言えば「高収入になればなるほど割合が下がる」という感じ。

しかし、このルールにはそもそも「上限」と「下限」が設けられている。

以下が労災の上限、下限である。(平成30年7月までのデータ)

失業保険にも同じようなものが設定されており、ほぼ同じようなもの。

この上限、下限の決定の元になるのが「毎月勤労統計」である。

毎月勤労統計が本来より低く計算されていたのだから、上限、下限も低くなっていた。ということだろう。

そのため、「過少給付」になっているのは、この上限、下限に引っかかった方と言える。



なお、この手の話になると、こう主張する人がいる。

「下限なんて、そもそも少額なところ『上乗せ』されて給付されてるんだから、贅沢言うな!!」

「上限まで貰えばば別に良いだろ?」

失業や、労災の休職を「サボっている」と見る向きが多い日本では、

貰えるだけありがたいと思え!!

という気運がある。

が、大きく間違っている。

失業保険も労災も、「労働保険」という保険料を労使で支払っているのだから。

保険料に対する対価が失業給付や、休業補償給付。

言ってみれば、それを「チョロまかされていた」わけで、「誠に遺憾」とか、そんな言葉で済まされる話ではない。

仮に民間の保険会社が同じことをやっていたら、どんな目にあうのか?

想像しただけでも怖い。

個人的には相当な重犯罪だと思うが、しかし、今回も謝って終わりだろう。

貰えるだけありがたいと思え!!

給付をコントロールしている役人本人が、本心ではそう考えているようにしか思えない。

本日のコラムでした。


 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします


1月 12th, 2019 by