ロンドンの高層マンションは何故全焼したのか?日本は大丈夫?


kasai

6月14日の未明。

ロンドン西部で発生した高層マンションの火災は、80名近い犠牲者を出した未曾有の大惨事となりました。

ここまで被害が広がった原因は

・スプリンクラーの未設置

・外壁の修繕に燃えやすい部材が使われていた

・未明の火災、かつ警報システムが作動しなかった

とされていますが、損害保険会社の事件レポート(大きな火災や災害が発生すると発行されます)を読むと最大の原因は

建物の中心部にエレベーターと階段が集中し、その区画への防火対策がなされていなかった。

ことのようです。



本タワーマンションの設計図は以下のようになっています。

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今回の火災では、この中心部から上に上に炎と煙が上がっていき、この部分が雄一の脱出経路である上層界の住人は逃げ場を失いました。

本来、マンションでは火災が発生した場合、そのフロア内で延焼を留めるように設計されていて、階段部分などに防火扉が設置されています。

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しかし本件の場合、前述のように中心部への防火がなされていなかったために、上に上にと燃え広がり、かつ修繕で新たに設置された外壁材も燃えやすい部材であったため、内からも外からも延焼してしまったのです。

この外壁財は樹脂を芯に周りをアルミニウムでコーティングされたものですが、アルミニウムは非常に燃え易い素材ですので、外壁に使うのは常識ではちょっと考えられません。。。。

 

外壁はともかくとして、この中心部さえ守られていれば、もっと犠牲は少なかったと思われ、これらを考慮すると「人災」の部分が大きいように思います。

いずれにせよ今後、真相が究明されれば、管理会社は重い責を負うことになるでしょう。

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それでは、このような火災は日本でも起こり得るのでしょうか?

結論から言うと、今のところ国内で高層マンションの大規模な火災は一件も発生していません。

参考例として、高層マンションが最も多いであろう都内のデータを見てみます。

平成27年に東京消防庁が公表した

「高層化する建築物における防火安全対策」

というレポートによると、平成15年から24年までの10年間で発生した「高層マンション」の火災は319件。

ちなみに消防庁の規定では、はしご車が届かない11階建て以上(31メーター以上)の建物を「高層」として規定しています。

その被害の状況は、

一部焼けが40件、ぼや(1m2以下の焼損)が279件

死者 0、負傷者 64名

となっています。

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10年で1人の死者も出していないことから、日本の高層マンションは極めて安全ということになります。

損害保険会社のデータベースで、過去の事故の事例などを調べましたが、ほとんどが「火元の部屋の被害」だけでおさまっており、隣家に延焼している火災ですら稀です。

高層マンションの場合、壁材に耐火素材のものが使用されているため、極めて「燃えにくく」一般的な木造住宅より、火災には強いということになります。

このあたりの日本の技術は流石に優秀で、そのお陰もあって大規模火災には至っていないのでしょう。



ただし、気になる点もあります。

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昨年、消防庁が高層マンションに立ち入り検査を行ったところ、約8割で違反があったということです。

その内容は、避難訓練の未実施、火災対策の管理責任者の不在、消火器の期限切れ、など、構造上の問題ではなく「人的」なことです。

少々厳しい言い方をすれば、油断している人が多いということです。

実際の火災を経験した方の話を聞くと、火がまわるのは本当に早いそう。

建物構造上の防火や耐火はもちろん大事ですが、いざという時に冷静な行動が出来るように、どこに消火器があるのか?非常口はどこか?などを日頃から確認しておくことも重要です。

ロンドンの悲劇を教訓として、

「簡単には地上には降りられない」

という高層に住むこリスクを再認識し、準備できることはやっておいた方が良いのではないでしょうか?

本日のコラムでした。

 

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6月 21st, 2017 by