下町ロケット 佃製作所が入るべき3つの保険


下町ロケットが面白い。

毎週楽しみにしていたが、それが正月1月2日に最終回を迎えた。

義理・人情に厚く、そして抜群に技術力が高い佃製作所が、毎回色々なピンチを凌いでいく痛快な物語だが、率直にこうも思う。

「この会社、危なっかしいな・・・」

と。

まず、社長の佃航平が自由過ぎる。

ドラマ後半ではほとんど田んぼにいたし、肝心の仕事でも基本的に社員が反対することしかやらない。

結果的にはそれが世の為、人の為にもなるのだが、経営者と言うよりは夢追い人という感じで、最終回で特許のライセンスをライバルに渡したくだりなどは、

「ブッタか?」

と思ってしまった。

そんな「危なっかしい」佃製作所には、リスク管理のプロとしてこの3つの保険をお勧めしたい。



1 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

中小企業である佃製作所は同じく様々な中小企業と協力し合って事業が成り立っている。

当初、トランスミッションを巡る訴訟で協力したり、後に反目することになるギア・ゴーストも中小企業だし、ドラマには描かれていないが、主力のエンジン製造においても、数々の協力・下請けの中小企業がいるはず。

で、ここで佃航平。

ギア・ゴーストの時と同様、どの中小企業とも「俺は技術者として惚れたんだよ!!」、「同じ夢が見てえ!!」などと言い、熱すぎる関係を築いていることが推測できる。

信頼があることは素晴らしいことだが、人間関係と同様、会社と会社の関係も「あまりに近い」と火傷をする。

特に中小企業間で最も多いのは、

「取引先の倒産」

である。

売掛金が回収できず不良債権化してしまう。

そんな時に役に立つのがこれ。

1 中小企業倒産防止共済

通称「倒産防」もしくは「セーフティー共済」とも言う。

独立行政法人である「中小企業基盤整備機構」が提供しているサービスで、この共済に加入していると、取引先が倒産した場合、最高8,000万円までを無担保で融資してくれる。

なお、やや専門的な話になるが、掛け金は全額損金。更に加入後40ヶ月経過していれば、解約時には全額戻ってくる。つまり「損しない保険」だ。

佃製作所のようなところは絶対に入った方が良い。

しかし、あそこは殿村経理部長がしっかりしているから、既に入っている気もするが・・・



2 経営者賠償責任保険

ドラマの舞台として面白いが、佃製作所の社風には明らかに問題がある。

「定時なので上がりま~す」

という軽部(徳重聡)に苛立つ社員たち。

確かにあの言い方は腹立つが、全体的に「定時帰りは気合が足らん!!」と言わんばかりの雰囲気が漂い「働き方改革」のご時勢にはそぐわない。

また、ギアゴーストの特許侵害訴訟への協力など、度々、佃社長が「余計な宿題」を持ち帰るものだから、社員たちはそれにも協力しないといけない。

社員の中には

「ふざけんなよ。何だよ、この余計な仕事・・・」

と思っている人が絶対いるだろう。

また、たった一つのパーツを開発する数人の社員に会社の命運が「かかり過ぎている」ため、そのプレッシャーで下手をすればうつ病などになってしまう人もいるのではないか?

それを知ってか知らずか、佃社長は

「頼むぞ!!皆の肩にかかってるぞ!!」

と、更に発破をかける。

幸い開発部長の山﨑(安田顕)はおだやかな人物だが、佃同様熱すぎる立花(竹内涼真)などがマネージャーになって部下を持つと「俺の頃はなぁ」と昔話を始めて、パワハラになりそうで怖い。

そもそも彼は頻繁に激昂して、しまいには手が出そうになっている。

まずは自分の感情のバルブを調整した方が良いのではないか?

そして、こんな社風に追い込まれた社員が、メンタルをやられてしまったり、ましてや自殺でもしたら、訴訟沙汰である。

そんな時に役に立つのがこれ、経営者賠償責任保険。

これがあれば、社員や、その遺族に訴えられても賠償金を保険会社が肩代わりしてくれる。

しかし、今までの訴訟とは違い、後味の悪いものになるだろう。

とは言え、これもトノさんが入っていそうだ。

「社長、ああいう人だし、ついてこれない奴もいるかも。念のために入っておくかぁ」

と言って、加入済みのような気がする。



3 海外知財訴訟費用保険

前回の下町ロケットもそうだが、今回もやたらと訴訟が多かった。

しかし、どれも国内の話。

が、昨今の知財絡みで重要な強敵を忘れている。

中国である。

こう言うと「中国が特許侵害するんでしょ?」と思われるかもしれないが、実際はその逆。

中国企業から「おたくが特許を侵害している」と訴えられるのである。

流石にロケットに関して中国から文句を言われることはないだろうが、農業用ロボットなどは中国での展開も視野に入っているだろうから、嫌がらせをされるかもしれない。

実際、中国国内での特許侵害訴訟はこの6年で2倍以上になっている。

2011年 59,882件
2017年 136,534件

この中には、中国企業か日本企業を訴える事例も含まれていて、それが意外と少なくないらしい。

多くの場合、既に日本国内で取得済みの特許を「後出しじゃんけん」で、中国国内で出願し、それを理由に「イチャモン」を付けてくるようなものが多いとのこと。

しかし、最終的に勝てたとしても、その手間と訴訟コストは莫大。

法律も言葉も違うので、弁護士費用もバカ高い。

まともに取り合っても仕方ないので、幾ばくかの和解金で解決してしまうことも多いらしく、まさに「中国流ビジネス」と言ったところだ。

しかし、あの佃航平は絶対にそんな卑怯な手は使わない。

「まあ、仕方ないか」と言いながら、暫くして「絶対に違う!!」と言い出す。

そして長演説。横で頷く山﨑部長(安田顕)

結局、訴訟することになるだろう。

そこで、海外知財訴訟費用保険が役に立つ。

これは経済産業省が推進しているもので、引き受けは民間の保険会社だが、実態は経産省が「海外進出サポート」でやっているようなもの。

そのため、保険料の1/2(初年度のみ)、もしくは1/3(次年度以降)を国が助成してくれる。

これに入っていれば、海外企業と知的財産で揉めた時の訴訟費用を支払ってくれる。

思う存分闘えるのだ。

うーん、しかしどうだろう・・・

これもトノさんが入っていそうだ。

これからの市場の流れを読んで「念のため」と手を打っていそうな気がする。

結局、リスク管理のプロが、などと偉そうなことを言っても、佃製作所は全て殿村経理部長の手腕でしっかり守られているのだ。

こういうゴールキーパーのような存在がいる会社は強い。

だからこそ、佃社長もあそこまで自由でいられるのだろう。

彼がいなくなって、これからが大変だろう。大きなお世話だが・・・

本日のコラムでした。


 

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1月 5th, 2019 by