保険屋稼業16年目。不動産屋稼業3ヵ月目。
製薬、旅行、自動車ディーラーなど「営業がキツイ」と言われる業界は数多いが、その中でも
生命保険と不動産
が双璧をなしている。(と、私が勝手に言っている。)
そんな二つを又にかけ早3ヵ月。
大変ありがたいことに既に何軒かの物件を販売させて頂いたのだが、同じ営業でも保険と不動産はだいぶ勝手が違うような気もするし、「やっぱり根っこは同じ」という気もする。
本日はそんなお話。
その1 話の入りのスムーズさが全然違う・・・
基本的に「買いたくない商品」である生命保険と、「買えるなら買いたい」と思っている不動産。
まずお客様にお会いして話のスタートの温度感が全然違う。
生命保険の場合、お客様の拒絶反応が凄い。
両拳を前に出し「やれるもんならやってみろ!!この保険屋!!」と言わんばかりのファイティングポーズをとられる。
そんなところからスタートするので「うわー、警戒されてるなぁ~」という思いをヒシヒシと感じながら、少しづつ商談の歩を進めていく。
対して不動産。
基本的に「好き」な方が多い。
出来るなら今より広い家に住みたい
いくつか物件を持って賃貸収入を得たい
「家」には自分の夢を投影しやすいし、国土の狭い日本、特に東京の不動産は
「持っていて損はない」
という共通認識があるのだろう。
そのため「不動産」の話には、わりと皆さん反応が良い。
このスタート時点の「スムーズさ」は保険ではあり得えない。
長年アラスカにいたので、北海道ですら暖かい。
そんな感じだ。
その2 目に見えないもの、目に見えるもの
不動産は土地なり建物なり、そこに「現物」がある。
何を当たり前のことを言ってるんだ?
そう思われるかもしれないが、こちらは新卒でインターネットの会社に入り、その後外資系生保。
20年以上「目に見えないもの」を売ってきた。
対して不動産は「目に見える」
まず、話が早い。
目に見えないものは相手の想像力に頼ってセールスを進めていくため、説明に時間がかかるのだが、不動産では
「これです」
以上。
気に入るか、気に入らないか、お客様の反応を見れば一目瞭然である。
現物の説得力の前には、小賢しいセールストークなど意味がない。
そのためか。
以前、自分の家を購入した時に感じたことだが、生命保険の営業の視点から見ると、不動産の営業は「粗い人」が多かった(もちろん全員が全員ということではないが)
要は雑に感じるのだが、それも仕方ないのだろう。
お客様1人1人にフォーカスするより、とにかく多くの人に物件を見てもらって、その物件に「はまる人」を探した方が早い。
つまり「物件」にフォーカスしているのである。
売る物によって営業スタイルも随分異なるのだな。と感じる。
その3 どちらも「デメリット」がポイント
とは言え「変わらない」点もある。
何かを購入する場合、どのような物にも「メリット」と「デメリット」がある。
それらがプラスマイナスとなり
よし!!買おう!!
今回はやめよう・・・
という決断につながる。
ここで多くの人が勘違いしているが、営業マンの仕事は、その「決断」を迫ることではない。
そこに至るまでのメリット、デメリットの情報を分かりやすく伝えることである。
最終的に決めるのはお客様。
中には「営業は押しだ!!」と言う人もいるが、そんなもので売れるのはせいぜい数十万円程度のもので、数千万円もする不動産や、同じく総支払で見れば数千万円に至る生命保険は売れない。
この時、営業マンであればメリットを強調したくなるところだが・・・
実はデメリットの方が重要である
特に「目に見えない」商品である保険では「デメリット」をいかに早く、正確に伝えるか?という点が大事。
現物を確認出来ないので、メリットばかりを伝えても、お客様は「本当か?」と疑心暗鬼になる。
「良い事ばかり言って、何か裏があるんじゃないの?・・・」
そう思うのは当然で、だからこそ早めにデメリットを伝える。
例えば貯蓄性の高い外貨建の保険商品などは、最大のデメリットは「為替リスク」となるのだが、そこで、
1ドル80円を切れば損です。
と説明した上で「そのリスクが取れないならやめておいた方が良い」とハッキリ伝える。
ああ、そういうデメリットがあるから、これだけ良い部分(増える)があるんだ。
メリット、デメリットが陰影を作り、目に見えない「商品」を立体的にしてくれるのである。
一方、不動産。
広い、駅近、使いやすそうな部屋
狭い、駅から遠い、部屋の間取りが変
なにせ現物があるのだから、メリットもデメリットも説明しなくても分かる。
しかし、わずか数か月の経験ながら、やはりここでもデメリットとの向き合い方が重要だと感じている。
お客様が気にしているところはもちろん、お客様が気づいていない部分も指摘する。
「こういう大きな梁。今は何もないから気になりませんが、家具が入ると邪魔なんですよね」
「駅から近いですが、夜の騒音はどうですかね?」
それに対するお客様の言うことを注意深くお聞きする。
それほど気にしていないなら良いし、気になっているようなら一緒に対策を考える。
長らく保険を売ってきたので、そのあたりのコミュニケーションはそこらへんの不動産屋よりは一枚上手だと自負している。
その上で「買うか、買わないか」はこちらが口を出す話ではない。
これも保険と一緒。
結局のところセールスの根本は変わらないということだろう。
3ヵ月程度で随分偉そうな話をしたが、そもそも自分自身が不動産が好きで、その分野への投資もしているし、お客様にも「不動産は買うべき」と力説していたのだから、一緒に物件を見て回るのも苦にならない。
正直な感想として、不動産業は思っていたよりもずっと楽しい。
また、前職の外資系生保で、先輩たちから
「この会社で5年食えたら、ミサイルでも箸でも何でも売れるようになるよ」
と言われてきたが、まさにその通りだと感じていて、まさに芸は身を助く、ということだろう。
とは言え、この世界ではまだまだ未熟者。
より精進していきたい。
そう決意を新たにしている本日のコラムでした。
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