日本大学ほど愛校精神が薄い大学も珍しい。
我ながらそう思う。
これは、他の卒業生も口を揃えて言うことで、いわく
「日大卒と言っても話が広がらない」
「仕事で同卒の方に会っても有利に事が進んだことがない」
とのこと。
このあたりは早慶、MARCH(明治、青山、立教、中央、法政)とはえらい違いであるし、そもそも大学のレベルも違う。
芸術学部や医学部、歯学部などを除けば、日大の各学部の偏差値は「そこそこ」で、それはそのまま世の中のイメージであろう。更に付け加えるなら「でかい」ということくらいか。
スーツの青木やコナカ。29,800円か、39,800円のツープライスの吊るしのスーツのようなもので、ダメではないが、褒められるほどでもない。
「あれ?そのスーツ、コナカじゃないですか?実は僕もそうなんですよ!!」
とはしゃがれても、「コナカなんか皆着てるだろ!!騒ぐな!!恥ずかしい」という心情で、だからこそ同門意識も薄い。(コナカにお勤めの方、すいません・・・)
それが日大。
しかし、これからは多少違う。
そこに「アメフト」のイメージが加わるからである。
卒業生からすると、今回の事件はいかにも日大的だと感じる。
一言で言えば、スポーツ偏重、学術軽視。ということ。
私が学生だった20年前からそうだったが、昨今は特にその傾向が強い。
これは人事にも現れていて、現在の理事長は日大相撲部のOBで、そのまま大学の職員になった方。
渦中の内田「元」監督も、アメフト部から、そのまま大学に就職し、ナンバー2の常務理事まで上り詰めた。
トップが相撲で、ナンバー2がアメフト。
日本「スポーツ協会」の話ではない。日本「大学」の話。
ここで大学組織について少し解説すると、学校法人である大学の最高意思決定機関は理事会で、その代表が理事長となる。
対して、大学には学長という肩書きもあるが、これは校長と似たようなもので、教育現場の長ということを意味する。当然、有力な教授がこれに就く。
理事長と学長。経営と教育。組織論で言えば全責任を負う理事長の方が重い。
とは言え、多くの大学、それこそ早慶、MARCHではほとんどの場合、学長の教授が理事長も兼任し、合わせて「総長」などと言われる。(慶応義塾の場合は「塾長」)
が、我が日本大学は違う。
前述の相撲部OBの理事長と、学長(今は歯学部の教授)が分けられていて、まさに経営と教育・研究が分離している。
ここで重要なのは、職員がダメで、教授が良い、という話ではない。
経営はそれに才能のある人間が担えば良いだけで、出自に関わらず実力のある人間が適材適所で活躍できる日大は、良い意味で実力主義ということになる。
しかし、概して経営者は結果を急ぐ。
大学が名を上げる場所は本来は学術的な研究発表や、人材育成にある。
もちろん日大の研究者は日々地道な研究を行い、それぞれの場で成果を出しているだろうし、日大は有能は人材を多く輩出している。
私も含め中小企業の社長に日大卒が多いことも良く知られたことである。
が、いかんせん目立たない。
日大レベルの研究が世の注目を浴びることもないし、大企業のトップに日大の卒業生が就くこともない。
対して、スポーツには即効性がある。
箱根駅伝に出れば、正月二日間に渡り10時間以上も大学の名前が全国放送され、その広告効果は計り知れないし、アメフトで大学日本一になれば、同じく正月3日に社会人と大学のそれぞれのナンバーワンが競うライスボウルに出場し、これまたテレビで放映される。
ちなみに今年は日大 vs 富士通だった。
そのスポンサーは私の前職のP生命であるのだから、何かしらの運命を感じずにはいられないが、結局のところ、
チンタラと研究や人材育成をやるよりスポーツの方が手っ取り早い。
という短絡的な結論になる。
これも何とも日大らしい。
かくして、スポーツ偏重は加速し、そこで実績を挙げた人間が組織の中枢を占め、相撲とアメフトの強烈スクラムは教授陣を圧倒する。
そして成果を焦るあまり、学生へのパワハラ、他大学生徒への暴行と続き、逃げ回った挙句に謝罪の場で「かんさい学院大学」となれば、逆の意味で日本大学の名を轟かせることになる。
太々しいくらいに貫禄のある大学ナンバー2が、何度も漢字を読み間違える映像を見るたび、愛校心のない私ですら、
「何やってんだよ・・・」
と苦々しく思う。が、次の瞬間。
「まあ日大だからこんなもんだろう」
と溜息しか出ない。
最後に余談になるが、ライスボウルの協賛をしているくらいなので、P生命にはアメフト経験者が多い。そして、彼らの業界では「ケイソン」、「ヨウソン」という言葉がる。
「ケイソンか。かわいそうだな」
「ヨウソンでまだ良かった」
というように使われる。
頸椎損傷、腰椎損傷のことで、本格的にアメフトをやった人間であれば、同世代の選手がケイソンで全身麻痺になった、とかヨウソンで車いすというような話を耳にするらしいく、こんな不気味な略語が通じる。それくらい危ないということ。
あの監督がいかにアホだとしても、このことを知らないはずがない。
そういう意味では、今回の事件はあの映像のインパクト以上に悪意がある。
幸いそこまでの大事には至らなかったが、一歩間違えれば若者の未来を奪う行為であり、指示した方もそれに従った方も許されない。
報道によると、関学の生徒に刑事告訴され、更には日大側の学生が記者会見で監督の指示を証言するらしく、監督だけでなく理事の職も辞するしかないだろうと思うが、アメフトは最後の1ヤードが勝負とばかりに粘るだろう。
しかし、
「おじさん。もうライン割ってるから・・・」
卒業生としては声を大にしてそう言いたいが、このあたりの往生際の悪さも「日大らしい」と言えなくもない。
本日のコラムでした。
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