地味だけど大改革!!来年から「契約者変更」にも支払調書が出される?!


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生命保険会社から受け取る保険金や解約返戻金、そして年金。

このような「お金」を受け取った方は原則「税金」を支払う必要があります。

保険金なら相続税、返戻金、年金なら贈与税や所得税などが対象になります。

本来はこれらを自ら「申告」する必要があるのですが、意外とうっかり(もしくはちゃっかり)申告していない方もいます。

しかし、これらは全て税務署に筒抜け。

何故なら、生命保険会社から税務署に

支払調書

を提出するように義務付けられているからです。

つまり、

「誰々にいくら〇〇の名目(保険金、返戻金など)でお金を払いましたよ。」

という情報は、保険会社から税務署に全て報告されているということです。

なお、「支払調書」は以下の場合に提出されます。

・1回の支払金額が100万円を超える死亡保険金、満期保険金、解約返戻金等が支払われた場合

・同一人に対して年間に20万円を超える年金給付金が支払われた場合

税務署は、こうした情報により、生命保険に関わる所得を把握し、適切な申告がされているかチェックしているのです。

しかし、税務署が全てを把握できているかというと、実はそうではありません。

今までは、

契約者を変更した場合

は税務署には知らせる義務がなかったからです。

次のようなケースです。



事例1 父から子への契約者変更

父親(契約者=保険料負担者)

子(保険の対象者)

よくあるのは、子供の保険をお父様が肩代わりして支払ってあげている場合です。

子供が小さい頃ならそれも当然ですが、社会人になってからも「何となく」がお父様が支払っているケースもあり、それが

父の死亡により、お子さんに契約名義を変更する

というパターンです。

この場合、お父様の支払ってきた保険料とそれに伴う返戻金が、

相続財産

となりますが、この時点では保険金の支払いがない「ただの契約者変更」なので

支払調書を提出しない

ということになります。そのため税務署はこの事実を把握できていませんでした。



事例2 夫から妻への契約者変更

夫(契約者=保険料負担者)

妻(保険の対象者)

契約当時に妻の保険であるにも関わらず、「特に理由もなく」一家の大黒柱である夫が契約者になっているパターンです。

昔の国内生保のセールスレディーが販売した商品に多く見られます。

これも先ほどの例と同じで、契約者変更を行えば、それまで支払ってきた保険料に伴う返戻金や満期金は

贈与されたもの

として、贈与税の対象となります。

しかし、こちらも契約者の変更を行った際には、支調調書が出ませんから分かりません。

また、この事例1,2ではその後、実際に保険金や満期金を受取った際に作成される支払調書には、

前契約者(父や夫)が支払った「途中まで」の保険料

は記載されていませんから、ここでも税務当局はその金額を把握できないことになります。



そこで、本来の正しい課税をするために、平成30年1月1日以降より、保険会社に対して

契約者の変更をした場合

も支払調書の提出が義務付けられることになりました。

下記の2点が新設される制度です。

① 死亡による契約者変更の場合の調書の新設

先ほどの「事例1」の場合です。

死亡による契約者変更があった場合、契約者の変更情報とともに、解約返戻金相当額を記載した調書を提出します。

新しい調書は次のようになります。

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これにより、契約者変更時点での解約返戻金相当額が分かり、相続財産として認識されます。

 

② 生命保険等の支払調書の記載事項の追加

こちらは事例2の場合です。

「死亡以外」のタイミングで契約者変更があった場合、その後の

保険金等(満期金、年金など)の支払時

「前」契約者の支払保険料を記載した調書を提出します。

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こちらの場合、「契約者変更をした時」に支払調書が出るわけではありませんが、その後、実際に保険金や満期金、年金を受け取った際、

「前契約者」が「どれくらいの保険料を負担したのか」

が明記されることになります。

 

これらの改正により、いままで課税漏れが発生していたケースを把握することが可能になります。

将来、契約者変更を前提として加入している契約や、何となく一家のお父さんが契約者になっているものなどは、今年中に契約形態を見直した方が良いかもしれません。

地味な改正ですが、意外と来年以降、様々な問題が起こるかもしれません。

本日のコラムでした。


 

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6月 6th, 2017 by