みかづきナビです。
法人保険のプレゼンテーションを行う時に「単純返戻率」と「実質返戻率」という言葉が使われます。
「単純返戻率」とは、いくら支払って、いくら戻ってくるか?というものを表したもので、本当に「単純」な戻り率を出した数値です。
例えば、年間保険料が200万円。これを5年間続けた時、総支払保険料は1,000万円(200万×5年分)になります。
それに対し、5年目で解約をすると800万円のお金が戻ってくる場合、単純返戻率は80%(800万÷1,000万)となります。
これは極めてシンプルで分かりやすい数字です。
しかし、法人で保険に加入する場合、この「単純返戻率」とは別に「実質返戻率」という数値が出てきます。
法人で保険に加入する場合、保険料の全額、もしくは1/2が損金になる商品が多いため、結果的には法人税を少なくする効果があります。多くの経営者が「法人税が少なくなるのは嬉しいけど、保険に加入した場合と、納税する場合と比較して結局どっちが得なの?」と思うわけです。
それを分かりやすく簡単に表したのが「実質返戻率」です。しかし、この実質返戻率には良い面と悪い面があります。本日はそれを解説したいと思います。
ここでは分かりやすく全額損金の商品について解説致します。1/2損金の商品に関しても基本的に同じ考え方です。
年間保険料 200万円とします。
これは全額損金で計上出来ますが、解約を行った場合、解約返戻金が保険会社から戻されますから、実際のところはお金が貯まっていくような商品です。
商品の詳細はコチラ
5年間続ければ1,000万円の保険料を支払うことになりますが、その8割つまり800万円は解約返戻金としてストックされている、そのような状態を想定して下さい。
先にご説明した単純返戻率で言えば80%ですが、実質返戻率はどうなるのでしょうか?
実質返戻率の計算を行う場合「もし保険に加入しなかったら?」という想定がポイントになります。
このケースで保険に加入しなかった場合、200万円は通常の利益として法人税の対象になります。
法人税負担 200万円×36%=72万円
法人税が72万円。残った128万円が法人に残る内部留保です。
5年の合計で言うと利益1,000万円(200万円×5年)に対し、税金が360万円、内部留保が640万円です。(毎年利益が出ている会社だと想定しています。)
実質返戻率は保険の解約返戻金 800万円と法人税納税の後の内部留保640万円を割り算した数値です。この場合
800÷640 = 125%
この125%が実質返戻率です。
「保険を導入することによりどれくらい効率的に内部留保出来ているかを表す数値」
というのが建前で、このケースの場合、法人税を支払って内部留保するより保険の方が25%ほど増えているような気がします。
しかし、実際はそう簡単な話ではありません。
まずは、保険の解約返戻金の場合、解約を行った期に雑収入として益金計上されます。当然ながらこの益金には法人税がかかってきます。
一方は税処理後の利益、一方は税処理前の利益、それを比較しているわけですから、あまり公平とは言えません。
また、下記のような前提があって計算された数値である、という面もあります。
・法人税が最高税率の36%
・それが毎年かかる(つまり毎年利益が出続ける)
このように、問題点も多い実質返戻率ですが、まったく参考にならないかと言うとそうでもありません。
例えば、数年後に経営者が退職をする、その退職金を保険で積み立てる。そのような場合を見てましょう。
先ほどの例で言えば、法人税を支払ってお金を貯める場合は、5年で640万円ですが、保険を使えば800万円です。
退職するタイミングで解約返戻金(800万円の雑収入:益金)を受け取れば、退職金として全額を損金(800万円の退職金)として処理できます。
このような時には、法人税を納税してお金を貯めるより、保険を使った方が効率的と言えます。
また、一定周期で大規模な投資が必要なお仕事の場合にも、保険が有効です。
・不動産管理業 保有物件の定期的な大規模修繕
・スーパーや飲食 定期的な店舗改装
これらは、「いつ投資(損金)が発生するか?」がある程度読めます。そのタイミングで保険を解約し、必要な投資に充てればメリットが大きくなります。
言い換えると「何年後に大きな損金(退職、投資など)が出る」と分かっているなら、法人税を負担して残ったお金を内部留保するより保険を活用した方が良いということです。
重要なのは保険で内部留保しておいたお金を「何に使うのか?」ということです。これを我々は「出口戦略」と言っています。
このように目的がはっきりしている場合、実質返戻率という数値もあながち間違ってはいないと思います。
色々と都合の良い前提にたっている数値ではありますが、将来の予測が困難な経営の現場では、このような「参考数値」を見て判断するしかないのかもしれません。
今までご説明してきました通り、保険を使って貯めた内部留保は、その使い道が限定的になります。
税引き後のキャッシュは何につかっても税金がかかりませんが、保険の解約返戻金はそうではありません。何かしら損金性のあるものと相殺しないと意味がありませんから「内部留保」と言うよりは「内部留保的なもの」というニュアンスの方が正しいかもしれません。
みかづきナビは、このように言いにくい話もしっかりご説明し、お客様と一緒に「何かベストなのか?」と考え、保険の導入が良い解決策でないなら、はっきりと「やめた方が良いです。」と申し上げます。
保険の見直しや導入をご検討されている方、現在の保険の内容が分からずに不安な方、いつでもご相談下さい。
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