法人保険 「失効トーク」を考える


 

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法人保険のセールストークに

「わざと失効させる」

というものがあります。

例えば、逓増定期保険などで、返戻率のピークがわずか1,2年という商品があり、本来はその時に解約しないといけないのですが、解約を行うと当然ながら解約返戻金が発生します。

例えば1/2損金タイプの逓増であれば、それまでに支払ってきた保険料の半分は損金として、1/2は資産計上されていますから、返戻金から資産計上した分を除いた分は雑収入となります。

返戻金 - 資産計上分 = 雑収入

設備投資や赤字の穴埋めなど、何か使う用途があれば良いのですが、何も使用するあてがない場合には、単純に雑収入が利益を押し上げるだけで、結局はその分の法人税が上がることになります。

それを回避するのが「失効」です。



このスキームのポイントは解約するのではなく、「わざと」保険料を払わずに保険を失効させることです。

そうなると、解約返戻金は発生せず、そのお金は保険会社側にストックされている状態になるので、雑収入は発生しません。

そして、その状態をキープしておけば、必要な時に解約したり、契約者貸付を受けて返戻金を使うことが出来るわけです。

そこで、この失効のロジックを使うことにより、

返戻率のピークは関係なくずっと(もしくは半永久的)内部留保できます。

というセールストークがあるのですが、この手法に安易に乗るのは危険と言わざるを負えません。

まず、「わざと払わず失効させる」という行為への正当性がありません。

税務調査が入った時など、

「儲かっているのに何故保険料を支払わないのか?」

という疑義を生みます。そしてそれを納得させられるだけの回答はまずないでしょう。

資金繰りが厳しくて。。と言っても

「だったら解約して返戻金受け取りなさいよ」

と言われるだけです。

次に「ずっと」もしくは「半永久的に」というのは明確な間違いです。

保険が失効した場合、復活期限というのものがあります。

これは失効してから一定期間の間は滞った保険料を支払うことで、本来の保険に戻すことが出来る保険会社側が用意した制度です。

この復活期限は多くの保険会社で3年になっており、それを過ぎると保険を元に戻すことは出来ず、「解約忘れの現金」が保険会社にストックされている状態になります。

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そうなると、これはもはや「保険」ではありません。

簿外にある会社の資産とし認識するのが自然です。

必然的に、この復活期限を過ぎた段階で雑収入に計上するべき、というのが、多くの専門家の共通認識です。

つまりは、失効させたとしても、そこから3年程度で雑収入の計上をしなくてはならず、保険の営業マンが言う「ずっと」とか「半永久的に」というのはまやかしだということです。

しかし、逆の言い方をすれば3年程度の猶予を設けることは可能。

前述の「何で失効させたの?」という質問をクリア出来れば、返戻率のピークを3年間延ばすことが出来るということになります。

常に資金繰りのことを考えている経営者にとってはこの「3年の猶予」はメリットがあるかもしれません。

一番の問題はこの失効時の処理については、未だ国税からは何の通達も出ていないことです。

ルールがないので、皆が勝手に解釈しているとも言えますが、あまり拡大解釈をすると後で痛い目にあうことになります。

なお、セールストークとしては完全に「コンプライアンス違反」ですので、ご注意下さい。

いきなり失効の話を持ち出すようなセールスマンには気をつけた方が良いでしょう。



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4月 20th, 2017 by