法人保険死亡フラグ・・・


各社がかねてより販売を停止していた法人保険に大きな動きがあった。

国税庁の方針が正式決定。

まずは今回の改正。過去の契約には「遡及しない」と明言されており、一安心した。

で、その肝心の改正の中身だが・・・・

法人保険に死亡フラグが立った

皆がそう口を揃えるような「厳しい」内容で、各保険会社、代理店ではお通夜のような暗さとなっている。

その詳細はかなり複雑で、プロの私でも一度読んだだけでは意味が分からなかったが、大まかなところでは以下の通り。

 

① 短期払いの医療保険の損金処理ルールが変わる

② 法人保険の「損金割合」が大幅に変わる



まず①について。

法人で社長や役員の医療保険やがん保険に入り「短期払い(3年程度)」で保険料を支払った後、名義変更する、という手法がここ数年流行っていた。

「会社に保険料だけ支払わせ」て、社長や役員はその医療保険をタダで手に入れるというやり方で、これに網がかかった格好だ。

新しいルールは非常に複雑なのだが、簡単に言えば

「名義変更する時に、会社が支払った保険料のほぼ全額を個人が会社に支払わないいけない」

ということで、この手法のメリットがなくなった。

但し、「年間保険料が30万円以下」であれば適用外ということなので、

規模が小さければ、引き続き良し

と言うこと。

温情判決という感じか。



②については、今回から「最高返戻率」というものが導入された。

これは商品の全期間の中で「最高(ピーク)」の返戻率を基準に損金の割合を決めるという考え方。

通達の文章を読むと何のことだが分からないので表にまとめた。

最高返戻率(ピーク)が50%未満であれば、貯蓄性が低く、間違いなく「保険」であるため、保険料の全額が損金でOK。

次いで50~70%。

やや「貯蓄性がある」ものの、解約時には支払った保険料の5~7割程度しか戻ってこないので、保険料の6割を損金として認めている。

これが70~85%になると「かなり貯蓄性が高い」と判断され、損金は保険料の4割に。

更に85%超の場合には「ほぼ貯蓄」と解釈し、

当初10年は最高返戻率×0.9を資産計上し、その「残り」が損金

11年目以降は最高返戻率×0.7を資産計上し、その「残り」が損金

となる。

例えば最高返戻率を100%とすると、当初10年間は

100%×0.9=90%

が資産計上で、その残りの10%が「損金」

11年目以降は

100%×0.7=70%

が資産計上で、その残りの30%が「損金」となる。

保険料を100万円とすると、当初10年間は損金10万円、資産計上90万円、11年目以降は損金30万円、資産計上70万円となるので、まさに「ほぼ貯蓄扱い」だろう。

この新ルールに当てはめると、最高返戻率と「損金、資産計上」の関係は以下のようになる。


実質的には、過去に販売されていた商品の返戻率のほとんどが「85%超」であったため、今までは「半分損金」で処理していたものが、今後は1割、良くて2割程度しか損金にならなくなる。ということ。



では「節税性」はどうなるのだろうか?

それを考察するために、以下のような表を作ってみた。

最高返戻率から導き出される「最高実質返戻率(そんな単語はないが)」である。

なお、保険業界で頻繁に使われる「実質返戻率」は、現場では

これが100%を越えれば納税してお金を貯めるより得

などと説明されるが、実際のところ解約時の課税を考慮していないので、個人的にはあまり参考にはならないと思っている。

しかし、ここではあくまで「目安」として計算してみた。

最高返戻率が96%を超えれば「実質返戻率」も100%を超えるようだが、「節税」とは言えないレベル。

そのため、今後のセールストークでは「節税」を前面に出すことは出来ず、

・保険料の「ほんの一部」が損金になります

・長い目で見ればタダで保険に入っているようなもの

・貯蓄も出来るが、メインの目的は保険です

というような「保障重視」のものになっていくのではないか?

とは言え、商品の魅力が落ちてしまったことは事実。

これから今回の改正に則った保険商品が各社から出てくるだろうが、正直なところどの営業マンも(当然、私も含め)苦戦するだろう。

だかゲームのルールは変わってしまった。

今更どうこう言っても仕方ない。

新しい商品を使って、どのようにお客様のお役に立てるのか?

節税屋ではなく、「保険屋」としての正念場だと思っている。

本日のコラムでした。



 

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7月 2nd, 2019 by