政府の支援策ではロスジェネは終わらない・・・


この図を見てほしい。

これは、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が出している新規求人倍率(新卒者)と有効求人倍率(全体)の推移である。

75年の石油ショック、90年代中盤のバブル崩壊、2008年のリーマンショック。

それらをきっかけとした「就職氷河期」が3つの谷を形成しているが、昨今とりわけ話題なのがバブル崩壊後の10年間。(90年代後半~2000年代前半)

これを経験した人達は、現在、35歳~48歳くらいだろうか。

この層を世の中ではロストジェネレーション世代、通称ロスジェネと呼ぶのだが、それを政府が新たに「氷河期就職世代」と命名し、今後、色々と支援をしてくれるそうだ。

ちなみに私は1998年就職。

ロスジェネのど真ん中である。



まずはロスジェネの定義だが、下記のように言われることが多い。

・バブル世代のような美味しい思いも出来ず、就職する時は求人倍率1以下の『超』氷河期

・職にあふれた人が多く、非正規雇用率が高い。

・正規雇用者も、社会人になってから「ずっと不景気」のため、給与水準が低く抑えられ、前の世代と比較して年収が低い傾向がある。

・そのため結婚、出産に後ろ向きで、少子化の一因とも。

もちろん「人による」という大前提があった上で、あくまで「世代」としての特徴である。

要は「非正規雇用」、「収入が低い」、「結婚しない」という烙印を頂戴した世代だ。

で、肝心のその支援策だが、政府が業界団体と組んで、ロスジェネに短期で資格を取得させるとのこと。

短期資格には、建設業ではフォークリフトや小型クレーンなどの操縦が想定されており、運輸、農業などは、これから資格を設定していく。

その後、職場見学と体験。

実際に正規雇用となった場合、その後の就労期間によって支援金を支払う。

「成功報酬型の支援」

とのこと。



政府に物申したい。

おい、お前、ロスジェネなめてんのか?

そんな短期で取れる資格を40歳近辺の「おっさん」が取って、職場見学、体験、正規雇用。

小学生か?

だいたい建設も農業も運輸も人手が足りなくて、どうにもならない業界。

外国人を集めるのにも苦労しているので、やる気さえあれば、すぐに「正規雇用」だけはしてくれる。

それに、あの世界には根性と志を持って、若い頃から研鑽を積んだ人達が大勢いる。

そんなところに「気軽な資格」を持ったオジサンが入っていてうまくいくとはとても思えない。

政府は

3年間で30万人の正規雇用を生む!!

そう息巻いているそうだが、絶対に達成できない。

はっきり言いたい。

我々の世代はもう手遅れだよ。と・・・



社会に出て15年~25年。

正規も非正規も自分の生き方が固まっている。

「超氷河期」の煽りで、正社員になれなかったり、希望しているレベルの会社に入れなかったりした人もいるかもしれないが、それでも何とか生きてきたわけで、人それぞれの誇りもポリシーがある。

そんなところに、

「正規雇用こそ善」

という価値観で

「建設とか農業とか人手不足だからちょうど良いじゃん。ロスジェネとお見合いさせちゃえよ。成功したら金出すから」

そんな発想に腹が立つ。

確かに、我ながら不運な世代だと思う。

上の世代のバブル。

その後始末を長らくさせられて、下の世代は今の好景気。

私たちがあれほど苦労した「就職」も引く手あまた。

それを横目で見て「今ならもうちょっと良い会社入れたんじゃないか?」そうも思う人も多いだろう。

この世代のファイナンシャルプランニングをしていても、

・「35歳」の時、景気の良かった上の世代と比較して給料が安い

・「25歳」の時、人口減で大事にされている今の若い世代より給料が安かった

という話も散見される。

上にも下にも逆転現象が発生していて、その点「ついていない世代」とも言えるだろう。

しかし、生まれてくる時代なんて選べない。

戦争中じゃなくてまだ良かった・・・そう思うしかない。

更に言えば、バブル世代がどこの会社でも「お荷物」になって冷遇されていることはあちこちで聞く話だし、今の世代も「甘い条件」で入ってきているので、バブル世代同様、時代が厳しくなった時にどんな洗礼を受けるか分からない。

どの世代でもいつかは景気の影響を受けるのである。

むしろ「底」を知る我々はどんな時代でも強いとも言える。



そして、話はまだ終わらない。

下記の表を見てほしい。

(独立行政法人 労働政策研究・研修機構のサイトより抜粋)

これは15歳から24歳。

つまり、中学、高校、大学の「新卒者」たちの「非正規雇用率」のデータ。

赤字にした部分が「ロスジェネ世代」で、確かにそれ以前は20%程度で推移していた「非正規雇用率」がグンと増え、僅か10年で2倍(94年 22%→ 2003年 45%)になった。

乱暴に言えば「『正規雇用枠』にあふれた人たち」ということだろう。

しかし問題はその後。

非正規雇用率は落ちるどころか伸び続け、好景気のはずの2018年にとうとう50%を超えた。

もちろん我々の時代とは仕事に対する考え方が違うので、一概に非正規が良い悪いとも言えない。

それでも両者の生涯賃金の差を考えるとやはり問題だろう。

ロスジェネ。氷河期世代。

我々を何と呼ぼうと構わないが、そんな「世代」の問題でごまかしてはいけない。

「ロスト」は今も続いている。

本日のコラムでした。



 

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8月 17th, 2019 by