何か良い商品はないのか?
最近、多くの経営者からそのような相談を受ける。
決算対策として、節税が必要な場合、従来であれば1/2損金の商品などに加入していたが、2019年の税改正により、従来保険料の1/2を損金処理出来ていた商品のほとんどが、10%前後の損金しか取れず、こと「節税」ということに関してはほとんど魅力がなくなってしまった。
とは言っても、保険の節税などはそもそも「節税」ですらなく、ただの税の繰り延べ(延期)でしかないのだが、良し悪しは別にして多くの経営者にとって
とりあえずの節税
が法人保険に加入するモチベーションであったことは歴然たる事実。
それがなくなったのだから、今まで「節税といえば保険」だと思っていた中小企業の経営者も困っているわけである。
そんな経営者にお勧めしているのが、
変額保険を使った福利厚生プラン(全養老)
である。
そのメリットを説く前に、まずは大前提の福利厚生プランについて解説しておきたい。
福利厚生プランとは、
1 退職金制度
2 弔慰金規程(社員・役員が死亡した場合のお見舞い金)
の両方、もしくは片方に紐づくもので、保険会社が販売する「養老保険」というものを使う。
養老保険とは貯蓄性の高い保険で、この商品に
勤続〇年以上(例:3年以上勤務など)の社員「全員」を加入する
ことを満たせば、保険料の1/2が損金処理できる。
これを福利厚生プラン、もしくは全養老などと言う。
また、この制度では役員も社員と一緒に加入することが出来る。
更に、役員に関しては
死亡時、会社への影響が社員より大きい
という理由により、従業員より大きい保障に加入することも可能となっている。
例えば、
・社員 毎月 1万円
・役員 毎月 5万円
・代表取締役 毎月 10万円
というように保険料や保険金に差をつけることが一般的で、この代表取締役・役員分の保険料も1/2損金となる。
また、積み立てている資産の保有者はあくまで「法人」
そのため、会社の存亡が危ぶまれるような時には、内部留保として使用することができる。
社員・役員のための貯蓄ではあるが、会社の資産でもある
福利厚生プランはそのような2つの顔をもっている。
・逆ザヤ養老保険
今となっては貴重な1/2損金の「福利厚生プラン」だが、一方では構造的な弱点を抱えている。
それが養老保険の利回り低下
前述の通り、養老保険は貯蓄性の高い保険であり、以前は250万円支払って満期金が300万円というようなものもあった。(20年くらい前の話だが・・・)
それが長引く「超」低金利により、どんどん利回りを下げ、更には「金利がマイナス」という異常事態を迎えてからは、ほとんどの養老保険が逆ザヤになっている。
300万円を受け取るための310万円を支払わないといけない。
こんな状況だ。
そうなると、経営者はこんな感想をもつ。
「1/2の損金をとるために、『損が確定』している商品に投資するのか?何だか良く分からんな・・・」
と。
1/2損金を餌に、国からマイナス国債を押し付けられているようなもの。
そこで、養老保険ではない「別の何か」で福利厚生プランを、という発想になる。
・世界経済成長への投資
そのような流れの中で、昨今、養老保険の「代替え」として注目されているのが、変額保険である。
数は多くはないものの、いくつかの保険会社から販売されている。
具体的な保険会社、商品名などを出すと「広告・募集行為」となり、その保険会社の審査を受ける必要があるので、ここではあくまで「イメージ」として例を挙げる。
・保険料 社員1万円/月、役員5万円/月、社長10万円/月
・運用先 国内、海外の株式、債権、不動産(REIT)、定期預金などに分散投資(自社で決定)
・満期10年後
要は10年間で資産を「運用」しましょう。ということ。
投資先が何種類用意されているかはその商品ごとによって異なるが、だいたい、国内、海外の株、債権、不動産などの選択肢があり、投資信託とほぼ同じ。
そのため運用の結果については、終わってみないと分からない。
完全に自己責任。
養老保険が「ちょっと減るけど、ほぼ元本が戻ってくる」のに対し、変額は「元本を大きく超えるリターン」を得ることもあれば、「元本を大きく下回る」こともある。
しかし、何といってもその最大のメリットは
世界経済に投資できること
である。
長い目で見れば、世界経済全体では成長が続くだろう。
大企業であれば、日本版401k(確定拠出型年金)などで、そのような投資機会もあるが、中小企業にはそのような手段がほとんどない。
その点、この変額保険を使った福利厚生プランであれば、世界経済成長の「うま味」を得ることが出来る上、更には保険料の1/2が損金となる。
これをチャンスととらえるか、リスクととらえるか。
経営者の思考・性格が出るだろう。
・実際の導入/運用方法について
ここからはあくまで私見として、制度の導入、そして導入後の運用方針について述べたい。
まず、導入だが、既に退職金制度があれば簡単。
今まで、A社の養老保険に加入していた。
そんな場合でも、新規加入分(新しく制度の対象となった社員)や、役員の上乗せ分などを変額にすることが可能。
もちろん全員分を切り替えても良いが、養老保険は途中解約すると損をするので、別に無理して替える必要もない。
社員の50%はA社、残り50%はB社(変額)
こんな形でも、福利厚生プランの要件には適合している。
また、退職金制度がない場合は弔慰金規程で行く方が良いだろう。
退職金制度が社員にとって有益であることは間違いないが、実際のところ経営者からすると「重い」
改めて制度を設計し、導入をする手間もさることながら、気持ちの面でも、来年、再来年ですら見通せないご時世に、何十年後の社員の退職金の責任など持ちたくない。と考える方が自然だろう。
であるなら、福利厚生プランは弔慰金規程を軸に導入する方が良い。
弔慰金規程なら導入も簡単で、かつ「社員が死亡した場合」だけ弔慰金を支払えば良く、さらにはそれは保険から支払われる。
経営者にとっては気が楽だ。
そして、最後に変額保険導入後の「運用方針」についてだが、これも私見ながら、今は増えもしなければ減りもしない、
国債が良い
はぁ?国債がダメだから、世界経済に投資しろって話だろ?
そう言われるかもしれないが、今は株も不動産もハチャメチャに高い。
わざわざ高値掴みする必要はないだろう。
高い値段で買ったのに、経済危機でドカンと下がった・・・
そうなっては目も当てられない。
だからこそ、今は国債などに入れておいて、とにかく変額保険内にお金をプールしておく。
そして、「次の危機」が来た時に、バーゲン状態になっている海外株式ファンドなどに全資産を移す。上昇局面で買い増す。
「NYダウ過去最高更新」
などという話が出てきたら、ここらが天井と思い、また国債に戻す。
そのような運用を行えば、しっかりと資産を増やしていくことが出来るだろう。
そして、何度も繰り返すが、その保険料は1/2損金である。
これが最大のポイントである。
以上、変額保険を使った福利厚生プランのメリットを解説した。
個人的には中小企業にとって非常に有益なスキームであると思う。
従来の法人保険がなくなり困っている経営者には是非、検討して頂きたい。
本日のコラムでした。
導入の提案を希望される方は、チャット、メールフォームよりお問い合わせください。
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