マラソン報奨金1億円の「税金」。プロと所属選手。お得なのはどっち?


新型コロナの影響で、世の中何とも暗い。

街の飲食店はどこも閑散としているし、個人消費の落ち込みも相当なもので、こんな状態があと1ヶ月も続いたら経済は大変なことになりそうだ・・・

そんな中での明るいニュース。

東京マラソンで大迫傑選手が圧巻の日本新を出し、代表内定に王手をかけた。
(3/8のびわ湖毎日で、記録を抜く選手がいなければ内定)

そして「オマケ」として褒賞金1億円をゲット。



今まで地味な印象だったマラソンも、夢のある競技になったものだ。

さて、1億円。

別に自分が貰ったわけでもないのに・・・

税金が気になるぅ~!!

ということで色々調べてみると、国税庁のサイトにその回答を見つけた。

質問内容

X社に勤務するA選手は、一般財団法人Bが主催するマラソン大会に出場し、大会記録を更新。1記録を更新した選手に対して支払われる褒賞金を受領。

Aが受領したこれらの褒賞金について、所得区分はどのようになるか?

それに対して回答は以下の通り。

褒賞金は一時所得

回答欄にはその解釈が書かれているが、小難しいのでここでは割愛する。
(ご興味のある方はコチラ:国税庁HP)

ちなみに、一時所得という税制は、かなり「お得な税制」で、その計算式は以下の通り。

(総収入金額 - 経費 - 50万円) × 1/2

最後の「×1/2」がポイントで、要は税金の対象を50%offしてくれるということ。



1億円の報奨金の場合、普通なら1億円全体に税金がかかりそうなものだが、この計算式に当てはめると、

(1億円 ― 経費(褒賞金の経費などないので、0とする) ― 50万円)×1/2=4,975万円

となり、1億円の「半分」の4,975万円にしか税金がかからず、非常に有利な税制となっている。

この4,975万円を他の給与所得などと合算して、そこに税金がかかるので、他の所得がどれくらいなのかによっても所得税、住民税の税率は変わってくる。

しかし、そもそも一時所得だけで4,975万円。

ほぼ最高税率の55%(所得45%+住民10%)だと思って良いだろう。

そうなると、4,975万円の55%、2,736万円(千円単位は省略)が税金としてとられるので、1億円もらって残りは約7,264万円ということになる。

金額のわりに税金は安い。(約27%)

但し、これは「X社に勤務するA選手」が前提。

企業に所属している選手の場合で、2年前に当時の「日本新」を出した設楽選手(HONDA所属)がこれにあたる。

では大迫選手の場合はどうか?



大迫選手はプロランナーであるため、ナイキなど複数の企業とスポンサー契約をしており、形としては個人事業主、もしくは芸能人の個人事務所のような法人だと思われる。

ここでは法人として話を進める。(個人事業主でも理屈は同じ)

この場合、褒賞金は法人が受け取るので、ただの「売上」

これ単独に税金がかかるわけではなく、他の売上と合算し、そこから経費を差し引いた「利益」に対して法人税(約30%)が課せられる。

大迫選手の会社の売上と経費については知る由もないが、仮にここでは他の売上(各社のスポンサー料合計)が1億円だとすると、今回の褒賞金と合わせ今期の売上は2億円となる。

大して、経費は体のトレーニングやメンテナンスに関わる費用、遠征費などはもちろん、耳元にキラリと光るピアスも含まれるかもしれない。

但し、定常的に入ってくるお金(読める売上)であれば、「経費をこれくらい使って」などと計画が立てられるが、今回の1億円は突発的なもの。

大した税金対策も出来ないだろうから、法人税が丸々かかる可能性が高い。

そうなると30%。約3,000万円。法人の手残り7,000万円。

あれ?個人の一時所得とあんまり変わらないじゃん・・・

となり、引っ張ったわりには冴えないオチとなる。

まあ、「税金というのは良く出来てるねぇ」とでも思って頂ければ幸いだ。

東京オリンピックに向け、肝いりで創立された褒賞金制度。

現ナマ1億円の効果はすさまじく、なんと3度も日本記録が記録が更新された。

過去にないほどレベルの高い選手が揃っている。

どうか、そのパフォーマンスを本番で発揮できるよう、今の騒動が早く鎮静化することを祈るしかない。

本日のコラムでした。



 

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3月 3rd, 2020 by