安倍政権の印籠「緊急事態宣言」はいつ出されるのか?


水戸黄門の印籠、遠山の金さんの桜吹雪、暴れん坊将軍の「予の顔を見忘れたか」

これらの時代劇を見ていて昔から思っていた。

その切り札・・・

もっと早く出してれば犠牲者がでなかったんじゃない?

と。

何か悪事があり、主人公たちがマゴマゴしているうちに、善人が巻き込まれ、悪い奴に殺される。

許せない!!と敵陣に乗り込み大立ち回り。

最後の最後に印籠、桜吹雪、予の顔が出てきて(だいたい開始50分くらい)、悪い奴らが「へへぇ~」となる。

夫や恋人を亡くした女性が、

「これであの人も浮かばれます」

と感謝して終演。

だいたいがこんなストーリーだが・・・・

いやいやいや、開始10分くらいで公権力を行使しておけば誰も死なずに済んだでしょ?ちゃんと仕事しろよ、光圀、遠山、吉宗!!

そう思って見ていた。我ながらひねくれた子供である。




無論、ドラマの中の話ではあるが、権力者が「出し渋る」のはこの国の伝統のようなもので、今、まさにそれが起こっている。

緊急事態宣言

何だか良く分からないが、マスコミや国民が安部総理にその宣言を懇願するような形になっている。

なお、私自身、批判されることを覚悟で言えば今の時点では「経済優先」なので、宣言自体には反対ではある。弊社のように小さい会社にとっては死活問題だからだ。

しかし、もうここまで来ると出さないわけにもいかない雰囲気。

本当のところ「宣言」そのものより、今こそ皆が「強いリーダーシップ」を欲しているのだろうが、もはや緊急事態宣言がその象徴のようになってしまっている。

多くの人が印籠を、桜吹雪を、そして予の顔を待ち望んでいるのだろう。

しかし、安倍首相と言えども感染症に関してはズブの素人。

本当に出すべきか、悶々としているのではないだろうか?



そこで重要なのが「専門家会議」である。

結局のところその道のプロたちの意見を尊重するしかないが、その意見が大きく2つに割れている。

先日、日本医師会の常任理事でもあり、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(いわゆる専門家会議)のメンバーでもある釜萢医師が

「緊急非常事態宣言を出すべき」

「専門家の間でも出した方が良いという意見がほとんど」

と発言し、危機的な状況であることを訴えている。

一方、政府の高官は

「専門家も『何とか持ちこたえている』と言っているので、まだその(緊急事態宣言)段階ではない」

と言う。

一体、どっちの意見が正しいのか?

ちなみに専門家会議のメンバーは以下のようになっている。

「国の機関 4名(感染症のスペシャリスト)」
「国立大学 4名(同)」
「私大 2名(同)」
「医師会 1名(釜萢医師)」
「オブザーバー(弁護士) 1名」

12名のうち、国の機関、および国立大学など「政策に近い筋」が8名で、その他が4名。

これは安倍政権が作る「専門家会議」では良く見られる構成で、それなりに政府のバイアスがかかるような仕組みになっている。

ちなみにかなり踏み込んだ発言をした釜萢医師は「日本医師会枠」であり、普段は小児科の医師として活動されているので、感染症に関しては専門家ではないものの、医療の現場には精通している。

そして、その発言を信じるのであれば、

メンバーの「ほとんど」が宣言を出した方が良いと考えている
(公的、私的立場は別にして)

というのが内情なのだろう。

なのに、専門家会議の総意としては「ぎりぎり持ちこたえている」となる。

このことは「国の機関」や「国立大学」のメンバーが過半数以上を占めている会議の人員構成と無関係ではないように感じる。(ただの邪推ながら)

もしかしたら、そのことに業を煮やした釜萢医師の「告発」なのかもしれず、日本医師会という「最強のロビー団体」の後ろ盾がある人にしか出来ない行動だろう。



これらの「専門家会議」で思い出すのは、昨年6月の「老後2,000万円問題」だ。

あの時も金融庁の金融審議会の市場ワーキング・グループ(こちらも専門家会議。錚々たる金融のプロが並んでいた)が作成した

「高齢社会における資産形成・管理」

というレポートの「老後2,000万円が必要」という一節だけを斜め読みした麻生財務大臣が、

老後2,000万も足らねーんだよ!!

とやってしまい大炎上。

挙句の果てには、金融の専門家たちが練り上げた報告書を「受取拒否」して、なかったことにしたことは記憶に新しい。

金融、コロナ、どんな高度なプロの意見も、政策に反映されなければ意味がない。

再び話は時代劇に戻るが、水戸黄門には「弥七」が、暴れん坊将軍には「御庭番衆(忍者)」という情報分析係がいて、光圀も吉宗もその声には真摯に耳を傾けていた。

しかし、今の権力者たちはどうだろうか?

印籠、桜吹雪、予の顔。

それを出す最高のタイミングだった「開始10分」はとうに過ぎてしまった。

そして今が50分なのか、55分なのか、それは誰にも分からない。

しかし「61分」で出しても、番組が終わってしまえばそこに観客はいない。

前述した通り、小さな会社でも一応経営をしている身としては、ロックダウンは本当に困る。出来ればやって欲しくない。しかし、日本全体が重い病にかかっている可能性がある時に、医者が「寝てろ」と言うなら、その指示に従うしかないだろう。

どうかタイミングだけは間違えないで欲しい。

本日のコラムでした。



 

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4月 1st, 2020 by