先日、発足した菅新政権。
総理と党四役の平均年齢が71.4歳とのことで、政治家の高齢化が話題になりました。
しかし、これは日本全体が「年老いている」現状においては、仕方がないことでもあります。
ここで一つ質問です。
今の日本人の平均年齢をご存知でしょうか?
答えは47.2歳です。
なお、今から20年前の2000年には41.4歳だったので、この20年間で約6歳も上がっていることになります。
国民全員が歳を取るのに、生まれてくる子供の数は少ない。
そのため平均がどんどん上がっているのです。
政治の世界でもその傾向は顕著で、例えば2001年の小泉内閣では、総理と党三役(当時は選挙対策委員長ポストが存在せず「三役」)の平均年齢は63.5歳でしたが、対して現政権は71.4歳と、こちらも20年で8歳ほど上昇しており、まさに日本全体の老化を政界が率先して反映していることになります。
むしろ、日本自体が老化しているのに、政治だけが「若返る」わけがないとも言えます。
また、同時期に「100歳以上が8万人を超えた」ということも報道されました。
こちらも2000年には2万人程度だったのが、20年間で4倍以上になっている計算です。
いままでは毎年、2,3千人程度の増加で推移してきたのですが、今から100年前の1920年(大正9年)の出生数が202万人と、それまでより多かったことから、この1年間だけで9,176人増えたそうです。
1920年以後も、出生数は1949年の過去最高269万人まで右肩上がりで伸びているので、今後も年1万人ペースで100歳以上の高齢者が増えていくでしょう。
まさに政府が言う「人生100年時代」が現実味を帯びているのです。
これらの「100歳まで生きる可能性」は、各家庭に大きなインパクトをもたらします。
それが最も顕著に出るのがFP表(ファイナンシャル・プランニング表)
FP表は、FP相談で作ることが多い資料の一つで、その世帯の一生涯の収支を計算します。
企業で言うところの経営計画のようなものです。
一生分の収入と支出をシミレーションし、人生を終えるまでに資金ショートをおこさないか確認するのですが、そのゴールは一般的に平均寿命とすることが多いです。
ご主人82歳、奥様88歳まで生きた場合を想定して計算するのですが、最近は相談者の希望で、これを95歳、100歳などに設定することが増えています。
しかし、その結果は悲惨。
ほとんどの世帯で「大きなマイナスで人生を終える」というオチになります。
そもそも、平均寿命でFP表を作っても「全く問題なく一生を終えられる」という方は、半分程度ですが、それを100歳まで延長すると8~9割程度の世帯が赤字に転落してしまうのです。
従来のライフプランニングの一般的なモデルは、20歳前後で社会に出て65歳まで働き、それまでの現役時代の貯蓄、退職金、そして年金で、その後の老後20年程度を過ごす、というものでした。
言い換えれば現役時代の約45年間で、その後の20年間の準備をしておくことになり、おおよそ1対0.44のバランスです。
これですらクリア出来る世帯は半分程度なのに、人生100年ともなれば、45年間で35年間分(1対0.78)の準備をする必要があり、流石にこれに耐えられる世帯は少ないです。
その対策を考えると、おおよそ以下の3つにたどり着きます。
・現役時代の生活費を10~20%程度カットして、貯蓄に回す
・75歳~80歳まで働き、収入を得る
・老後の生活費を当初の予定より10~20%ほど切り詰める
どの項目をどの程度やらないといけないのかは、各世帯によっても変わりますが、結局のところ、節約し、なるべく働いて、老後はお金を使わない。という方法しかないのです。
しかし、家計を10%カットするのは、口で言うほど簡単ではありませんし、いつまで働けるかも、周囲の環境、自分の健康状態にもよるので、何とも読めません。
これらの現実を見て、ある相談者などは「早く死ね。ってことですね。」と自嘲気味に笑っておられました。
なお、実際には100歳まで生きる方は少数派で、ほとんどの場合、ここまで考えておく必要はないのですが、それでも自分が何歳で亡くなるか分からない以上、100年、100歳は重い人生の課題になってしまうのです。まるで終わりのないゴールのようです。
本来は喜ぶべきはずの「長生き」に、ある種の憂鬱さをともなってしまうのは、やはりこの国の未来に不安を感じているからでしょう。
新政権のキャッチフレーズは「自助、共助、公助」とのことですが、FP的な観点で言えば、自分の努力、家族の協力だけで生きるには「100年はちょっと長い」というのが正直なところです。
であるならば、最後の共助にこそ期待したいところですが、さて、どうでしょうか。
現在の年金制度の基礎が作られたのは昭和36年。当時の平均寿命は男性65歳、女性70歳であり、それを年頭に設計された制度は限界に達しています。
「長く働く」という点でのみ、超高齢化社会の課題をクリアしている「先生」たちには、是非、安心して長生きできるための「公助」の確立を期待したいところです。
本日のコラムでした。
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