駅前の飲食店閉店ラッシュが不動産価格にもたらすもの


不動産、今、買いですかね?

これ、ものすごいよく聞かれる。(私が活動している東京エリアの話)

特にコロナ禍になってから顕著で、多ければ週に2,3回この話題の話をしている。

コロナによる不景気は深刻ではあるが、それでもお金はあるところにはあるので、

「安くなったら買いたい」

と思っている人が多いよう。

そのような方々から「今は買いなのか?」という連絡が入るのである。

では実際、物件の価格は下がっているだろうか?

結論から言えば、

「さほど変わっていない」

むしろ、山手線の内側の中心地については、多少上がっているような気配もある。

まだ上がるのか?それを見越して買った方が良いか?

それとも待つべきか?

あくまで私見ながら、出来ればあと1,2年ほどは待った方が良い。そのようにお伝えしている。

その理由は店舗やオフィスの賃料が落ちているから。

特に駅前の物件の賃料低下が激しい。

人がいないのだから、これは仕方がないのだが、これがあと1,2年で居住用にも影響するのではないだろうか。

店舗、オフィスと居住用。

これらは一見関係のないように見えるが、実は密接に関係している。




私のオフィスのある水道橋などは、元々が「東京ドーム&学生、会社員の街」であったのが、ドームのイベントは出来ないわ、学生も学校に来ないわ、会社員もテレワークだわの三重苦で、めっきり人出が減ってしまった。

そのため賃料が高い駅前の店から、バタバタと閉店し、軽いスラム街状態となっている。

個人商店ならいざ知らず、多分それなりの資本もある、プロント(喫茶店)、築地銀だこ、富士そば、小諸そばなどが撤退したのだから、その惨状が分かるだろう。

では何故、店舗やオフィスの賃料が下がるとマンションの価格が下がるのか?

理由は、本来商業施設があるべき「駅前の超一等地」にマンションが立つから。

不動産業界にはある法則がある。

不景気になると、都心にマンションが建つ

というもので、実際、バブル崩壊後には、赤坂や、六本木、渋谷などの「超一等地」にバンバン新しいマンションが建った。

本来であれば、利益率が高い商業施設を建てるべきなのだが、不景気になると、それらが埋まらず、空室率が上がってしまう。

不動産デベロッパーとしては、リスクの高い商業ビルより、利益率が低くともマンションの方が手堅いだろう、そう判断して、商業ビルの計画を居住用のマンションに変更してしまうのある。

ちなみに、これ。既に地方都市で顕著で、今やどこの県庁所在地に行っても、駅前にどでかいマンションが複数建っている。

先日も甲信越の中堅都市に行ったが、駅前のデパートが取り壊され、マンションに生まれ変わるとのことだった。

本来であれば、商業複合施設やオフィスビルなどを建てるべき土地に、人が住むマンションを建ててしまっているのである。

今から15年前。誰だったが忘れたがアメリカの有名な投資家が東京に来て、中心地にあまりにマンションが多いことに気付き

「こんな一等地にビジネスじゃなく人を住ますなんて、日本はもうダメだ」

と言ったという記事を読んだことがあるが、まあ、そういうこと。




駅前の土地にマンションが建つことは、必ずしも良いことばかりではない。

そのような物件が多く供給されてしまうと、周辺の不動産価格を下げてしまうからだ。

駅チカの新しいマンションの方が人気があるので、そこから離れている物件はどうしても相対的に魅力が落ちる。つまり価格が下る。

このような現象は既に、湾岸エリアなどでも発生している。

湾岸エリアのマンションなどは、駅前、駅チカであることが「大前提」で、そこから徒歩10分となると、一気に値段が下がってしまう。

また、駅前の土地が「固定化」されてしまうことも問題。

マンションの権利は、住人全員で共同所有するような複雑な形態なので、一度建ってしまえば、それを動かすことは現実的には不可能。

本来は、限られた駅前の土地には皆が必要とする商業施設や商店街があって、その周辺に住宅地が広がるというのが理想なのだが、そこにマンションが建ってしまえば、その場所は半永久的にマンションのままということになる。

店舗、オフィス、居住用。

この3つの価格は直接的には関係なくとも、間接的には連動しているので、店舗、オフィスの価値低下は、さほどの時間を経ずに居住用にも波及してくると思われる。

そういう意味では、現在の居住用の物件が「それなりに高値」を維持しているのは、最後のバブルなのかなぁ、という気もしている。

逆に言えば、今は「売り時」とも言えるかもしれない。

本日のコラムでした。

 

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10月 31st, 2020 by