「コロナ疑い」で感じた医療崩壊のリアル


数週間前の話だが、ひょんなことから「コロナ扱い」を受けた。

その数日前から母が「息苦しい」と言う。

元々持病もあるので、私も同行の上、かかりつけの大学病院へ。

そこでの診断は「軽度の心不全」とのことで、そのまま緊急入院となってしまった。

しかし、ここで問題となったのが「咳」

心不全で心臓が弱まり、肺を十分に膨らますことが出来ず、それが息苦しさの原因なのだが、その肺に少量の水が溜まっており、それが故に「コンコン」という乾いた咳が出る。

そうなると、時節柄、コロナを疑わないといけない。

医師も

「熱もないし、肺の水が原因の咳。99%コロナではない」

とは言うものの、咳の症状がある以上、一応は『コロナ対応』にしないといけないそうだ。

それもそうだろう。

仮に自分が入院していて、隣のベットにコンコンと咳き込む人が入ってきたら、やはり嫌だ。

しかし、ここからが大変だった。

母の身は一般外来から

「コロナ対応班」

に引き継がれる。

そこでPCR検査や、心臓や肺の追加検査を受けることになるのだが、当然、それらのコロナ対応班は「目の前の人はコロナ」という前提で応対する。

ちなみに、私もその前週に母を連れて東京近郊の温泉に宿泊していたため、「濃厚接触者」となり、同じ対応をされつつ半日ほど母の検査に付き合った。

そこでの扱いは、

完全にバイキンマン(当たり前だが)

病院内の移動も、一般患者とは別ルートの「内部スタッフや業者用の裏道」のようなところを通り、更には前後に警備員、そこに完全防護(二重マスク、フェイスシールド、防護服)の看護師が付き添う。

周囲から見れば「何事か?」と思わせるような陣容。

我々も青色の手袋を渡され、

「手袋をはめ、絶対にどこも触らないように」

と厳命される。

そして、コロナ患者用の減菌室(異様に湿度が高い部屋)で待たされ、そこに完全防御をした医師が、ビニールでぐるぐる巻きにされた機材を持って母の検査にやってくる。

あまりに待ち時間が長いので、完全防御した看護師さんと世間話をしていたのだが、話を聞くと今の病院内には、大きく分けて

1 一般患者(非コロナ)

2 コロナ疑いA(風邪/インフル/コロナのどれか)

3 コロナ疑いB(別の病気 がん、心臓、脳など:母のケース)

4 コロナA(症状コロナだけ)

5 コロナB(コロナ+別の病気 がん、心臓、脳など)

の5つのグループが混在しているとのこと。




そのため、各グループの治療、入院スペースは物理的に分けられていて、特に「コロナ疑い」に関しては、誰がコロナか分からない状態で相部屋にするわけにもいかず、原則個室。

一方、医師は1から5のグループをぐるぐると回らないといけない。

医療の専門化がすすんでいる現状では、心臓のことは心臓の専門医、脳のことは脳の専門医が担当することになるが、その数は限られているので、その人員を先の各5グループに割り振って、それぞれに「専属」させることは不可能だからだ。

グループをまたぐ度に、着替え、機材の消毒を行う手間は甚大で、オペレーションは複雑を極める。

それでも、母が今回お世話になった病院は大規模病院なので、こういった対応が可能なのだろうが、地方の中規模病院では、同じことをするのはまず不可能ではないか?

わずか半日ほど、「コロナ疑い」として現場を眺めさせてもらっただけだが、大げさでなく

「医療崩壊はリアルな話なんだな」

ということを肌身で感じた。

コロナ患者そのもの治療より、それ以外の手間が膨大で、そこでミスが発生すれば、入院している一般患者にコロナが広がってしまう。

当然、どこの病院も高齢者が多いので、そうなれば大惨事だろう。

なお、母はPCR検査は2回とも陰性で、2日後に一般病棟へ移り、既に退院している。

私も念のため、2日程自宅待機したが(たまたま土日だった)、母の陰性をもって待機解除となった。

このような問題の解決策として、現在、日本各地で進められているのが、

コロナ専門病院

の設置である。

先の5グループのうち、

4 コロナA(症状コロナだけ)

5 コロナB(コロナ+別の病気 がん、心臓、脳など)

の2つを専門的に診る病院。

全員コロナと分かっていれば、相部屋でも問題ないし、医療従事者も自分の身だけを守れば良いので、随分オペレーションが楽になるらしい(それでも大変だろうか)

かつ、その専門病院があることで、周囲の病院の負荷が下がり、こちらの方が効果は大きい。

が、今東京で稼働している専門病院は

・東海大学医学部付属東京病院(渋谷)

・都立府中療育センター(府中:2020年12月より稼働)

の2つのみ。病床も合計で200程度しか確保されていない。

もちろん行政の現場の方は必死で働いておられると思うが、今の感染増大を見るに、どうしても対応の遅さを感じてしまう。

正直、この経験をする前までは

「死者数はそれほど増えていない。医師会も大袈裟な・・・」

という感想を持っていたが、わずか半日、現場を見ただけでそんな考えは180度変わってしまった。

そんなことを思いながらテレビをつけると、感染者増大で、久しぶりにクローズアップされてテンションの上った小池知事が

「5つの小(こ)」

などと、下らないことをどや顔で言っていた。

そういうの、もう良いから・・・・

ため息しか出ない本日のコラムでした。




 

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11月 22nd, 2020 by