セールスと宗教の微妙な関係・・・


保険の仕事をしていると、宗教の話になることがある。

もちろん日本においては、家としては何かしらの宗派に所属していも、実態としては「無宗教」の方が多く、私もその類である。

その実「〇〇を信仰しています」という人もわりといらっしゃる。

特に経営者は信仰を持っている場合が少なくない。

保険のセールスは、ごくごくプライベートな部分に立ち入るし、また「生命保険」の性質上、自分の人生、そして死について考えて頂くことになるため、その方の人生観・死生観を伺う際、その考えが信仰しておられる宗教の教義に根ざしていたりすると、自然と宗教の話に及ぶのである。



創価学会、立正佼成会などの新宗教系、他にもキリスト教、イスラム教などのワールドメジャー系、更には聞いたこともないような新興宗教まで、色々な信仰を持つ方とお会いした。

人生観・死生観という意味では、やはりキリスト教系、イスラム教などは「しっかりしている」という印象を持つ。

何とも変な感想だが、「人生とは◯◯」、「死とは◯◯」というそれぞれの考えがブレないと言うか、やはり何千年も続いてきた宗教だけに、そのあたりの思想の作り込みは緻密で、教え一つを聞いても「人間こうあるべきですなぁ」と唸らされるものが多い。

特にキリスト教に関しては、現代が「キリスト教的な世界」である欧米文化がベースになっているので、しっくり来る人が多いかもしれない。

全世界に広まった理由も分かる。

ちなみにキリスト教もイスラム教も「これを信仰しています」とはっきりおっしゃる方が多い。

だが、日本では(日本だけではないだろうが)イスラム教への偏見が強く、「肩身が狭い」とおっしゃっていて、その点は気の毒だったが・・・・

一方、新宗教系は、完全に2つに分かれる。

そこには触れるな、という方と、積極的にお話になる方。

前者は親が信仰していて、その関係で自分も、というタイプが多く、もちろん心からその宗教を信じているのだが、あまり周囲には知られたくないという感じ。

ただ、ご自宅などにお邪魔すると、その宗教を象徴するようなものが飾ってあって、ああそうなのだな、とは分かる。

もちろんこちらから話題にすることはない。

逆に自分自身で「これが良い」と思って、その宗教に入った方、私は「初代」と呼んでいるが、そのような方々は堂々と自分の信仰を打ち明け、その宗教の良さをお話になられる。

時にはそれが勧誘のようになってきて、

「君が入るなら(宗教)、僕も入る(保険)」

というシンプルな構図になることもあり、もちろん、やんわりお断りするが、そうすると保険の方もやんわり断られ、まあ、こればかりは仕方がない。



しかし、こんな姿勢をある業界(保険業界ではない)で「伝説のセールス」と呼ばれた大先輩に叱られた。

ここではAさんと呼ぼう。

Aさんいわく

「そんなもの全部入れ!!仕事になるなら、片っ端から入れ!!」

そうおっしゃる。

実際、Aさんは先程挙げた新宗教から、「えっ、それにもいっちゃうの?・・・」という結構ヘビーな宗教にまで(名前は出せない)、全部入っていた。

しかし、宗教に入ればそれなりに義務と言うか、お勤めがある。

それも「仕事があるうちは、やれる範囲でやる」、そして「仕事がなくなればやめる」と、徹底している。

中には「一度入ったら死ぬまでやめてはいけない」というものをあり、そのような時には結構揉めるらしいが、それすら

「そちらが(仕事を)やめたから、私も(宗教も)やめる」

と、その態度はある意味清々しい。

もちろん絶対真似出来ないが、そもそも仕事を餌に宗教への加入を迫っている時点で、どっちもどっちのような気もして、狸か狐か、というような話だろう。



このように、セールス活動をする上では、変な形で宗教が絡んでくることもあるので、私自身、どうしても斜に構えてしまうが、一方で、ある種の憧憬とでも言うか、羨ましさのようなものもある。

経済的な苦難や、身内の不幸、そして自分自身の大病や死

それらの場面で、信仰を持つ人の方が、そうでない人より強い。(もちろん個人差はあるが)

貧困、死、病

その苦悩を少しでも楽にするため、過去に同じ経験をした何千万人、何億人の人たちの知恵の結晶(教義)が宗教の本質だとすれば、自分が同じ場面になった時、そのバックグラウンドはかなり有効だろう。

保険の仕事を通じて、信仰がある方々の「強さ」を垣間見たこともあるので、そういう意味では

「自分にも何か信じられるものがあったら」

と考えなくもない。

だが同時に「今更な」とも思う。

「何か」を信じるには、ちょっと人間が穢れ過ぎているし、アラを探す性格でもあるので、何を聞いても胡散臭くしか感じないだろう。

ちなみに先程登場したAさん。

相当な数の宗教を「経験」した結果、今は無宗教だ。

「どの宗教も同じ。『良いことをすれば天国にいける』ってこと。」

と、極めて簡潔な感想を述べていたが、実際に経験した上での言葉なので、これはこれで重みがある。

なるべく良いことをする。

信仰のない者にとって、せめてこれくらいは心がけて生きていきたいと思う。

本日のコラムでした。

 

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2月 20th, 2021 by