大きな「失注」をした夜は・・・・


立て続けに大きな案件を逃した。

数ヶ月前から話をしていた不動産の案件と、3月決算期に合わせて提案していた法人保険。

お客様の経済状態、決算状況が目まぐるしく変わり、更にはそこに急な税制改正の話などが絡まって案件がコントロール出来ない状態に。

結局、受注に至らなかった。

このような時、普段なら落ち込まない。

常に新しい案件が出てくる「仕組み」こそ重要であり、1件1件の勝敗に一喜一憂しても仕方がない。

そう考えているからだ。

だが、今回、案件の大きさから、どこかで気負っていた部分があったのか、自分でも驚くほどガックリきた。

このあたり、まだまだ修行が足りない。



自宅へ帰る道すがら、駅前の中華チェーン店の前で足が止まる。

何となくこの気持ちを引きずったまま家に帰りたくない。

レバニラと餃子をツマミに一杯やることにした。

コロナ禍もあり、店内の客は私1人。

アルコールで多少やわらいだものの、引き続き気分は晴れない。

あれが悪かったのか?

あの時、こうしていれば・・・

そんな「タラレバ」でレバニラの苦味が増す。

こんな時、決まって思い出す「言葉」がある。

前職の外資系生保。

100年以上の歴史を持つその会社では、過去の偉大なセールスの思考と言動をまとめたバイブルのようなものがあり、入社して数年はひたすらそれを実践する。

表紙が青いことから「ブルーブック」と呼ばれていた。

それらの本は厳重な社外秘でもあるので、退職した時に返却するのだが、それでも何度も読み返した部分は覚えてしまっている。

本では、初対面から契約に至るまでのプロセス、それらが順を追って説明されており、その中身は外資ならではの「こうすれば間違いなし!!」という強気一辺倒なのだが、たった一つだけ毛色が違う一文がある。

商談の最終局面、契約に至る「一押し」についてまとめた章、その一番最後の数行。

「人がものを買う理由は全てが合理的というわけではありません。そのため、あなたが完璧なプレゼンテーションを行ったとしても、成約に至らないことがあるでしょう。しかし、残念ながらそれは・・・」

そして、こう結ばれる。

仕方がないことなのです

常に勝つことだけを目的に書かれたバイブル。

その中にあって唯一「どうしようもないこともある」と負けを認めてくれるその一文に、過去何度も助けられ、そして今、ビール片手にその言葉を反芻している。

「仕方がない」

過去のセールスの偉人たちの結論がそれであれば、その足元にすら及ばない私ごときが「仕方がない」ことで落ち込んでいるのも滑稽な話だ。

そんな時、手元のスマホが鳴った。

妻から「夕飯どうする?」というLINE。

「今、駅前の中華屋さんにいる。子供たちと来れば?」と返信。

10分後、1人でのいじけ飲みが、家族との団らんの時間となった。

普段はシェアするラーメンを「今日こそは1人で食べきりたい!!」と意気込む姉。

初体験のレバニラに「これ、意外と旨いねぇ」とおっさん臭いことを言う弟。

その合間に2人は餃子を取り合う。



会計をしようとすると、店員がある種類の電子マネーで払えば、今ならポイントバックされるということを教えてくれた。

たまたまその電子マネーの残高があったので、4,100円の勘定を支払うと、なんと半分以上の2,200円分のポイントが返金された。

外に出ると、店の隣の小さな公園に桜が咲いていた。

お得な食事と夜桜。そして子供の笑顔。

そんなことで気分が晴れるのだから、我ながら安上がりである。

打席に立てば空振りすることもある。

ここ一番で打てない時もある。

それでも打席に立ち続ける。それが大事。

思えばこの1年、コロナ禍によって極端にその機会が減っていた。

そう考えれば、

「落ち込めるだけまだマシ・・・」

そういうことだ。

子供たちと手をつなぎ家路についた。

ちなみに娘はラーメン一杯を見事1人で完食した。

本日のコラムでした。



 

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3月 19th, 2021 by