サトシナカモト「100万BTC遺産」の行方


先日、テレビで

「サトシ ナカモトの正体は金子勇氏なのでは?」

という仮設を検証する番組が放映されていた。

サトシ ナカモトはビットコイン(以下BTC)の開発者。

2008年ごろから、暗号理論を研究するメーリングリストにBTCの論文を発表し始め、翌年2009年にはそれらの理論を実装するソフトウェアをネット上に公開。BTCの運用を開始した。

しかし、このサトシ ナカモトが一体誰なのか?それはBTCが誕生して10年以上経過している今も謎とされている。

ちなみにBTCの「生みの親」であるサトシナカモトは、スタート時点に大量のコインをマイニングしており、その保有量は100万BTCとも言われている。

しかし、過去、自身の保有しているBTCを売却した形跡はない。



今の相場で1BTCは625万円(2021年3月時点)、100万BTCは6.2兆円の「価値」がある。

これは富豪ランキングで言えば、ジョフ・ベゾス11.3兆円(アマゾン)、イーロン・マスク11兆円(テスラ)、ビル・ゲイツ10兆円(マイクロソフト)に次ぐ規模であり、4位の座をウォーレン・バフェットなどと競うレベル。

ビットコインを生み出した独創性、天才的なプログラムスキル、大金持ち、そして正体不明。

あまりにミステリアスな存在だが、冒頭のテレビ番組では、その正体は金子勇氏だと言う。

次に金子氏について触れておきたい。

金子勇氏はファイル交換ソフト「Winny」の開発者として知られ、その後、Winnyが著作権違反コンテンツの流通プラットフォームのようになってしまったことから、著作権侵害「幇助」という名目で2004年に逮捕されてしまう。

結果的に最高裁で無罪となるものの、それを勝ち取るまでに8年の歳月を費やした。

2012年、晴れて自由の身となり、東大特任講師などに就任したものの、翌2013年7月6日に急性心筋梗塞にてこの世を去った。

悲劇の天才プログラマー

国に潰された才能

など、その死を悼む声は多い。

その金子氏がサトシナカモトであるという仮説だが、率直に言ってかなり説得力があった。

・ビットコインとWinny、両者に技術的共通項が多い

・Winny裁判で、国家権力の暴走を痛感した金子氏が中央集権的ではない貨幣システムを創造した

・Winny開発者として辛い体験をしたことから、ビットコインに関しては完全に正体を隠した

そして、最大の謎。

100万BTCもの巨額の資産を売却しないのは何故か?

それは、金子氏が2013年に死亡しているから、という結論だった。

仮にサトシナカモト=金子勇であった場合、ご本人がお亡くなりになっている以上、この100万BTCは「遺産」ということになる。

では、これは誰のものなのだろうか?

「遺産」となると、妻、子、親、兄弟姉妹の順番で相続権がある。

調べた限り、金子氏は独身であり、ご両親はおられるだろうが(兄弟姉妹は不明)、そのような身内にビットコインという難解なプログラム(と言うより思想)のことを話していたとも思えないので、そもそもご家族が「知らない」可能性が高い。

また死亡時42歳であり、死因が急性心筋梗塞ということは発作を起こしてから亡くなるまであっという間。

自分自身でもまさか死ぬとは思っていなかったのではないか?



つまり遺言的なものは何もなく、ヒントがあるとすれば当時使っていたコンピュータだけ。

しかし誰もが認める一流プログラマ、そして無罪になったとは言え逮捕もされている。

まさかパソコンの横にパスワードを付箋で張っているような真似をするはずもなく、金子氏以外の人間が、彼のコンピュータを操作することは出来ないだろう。

またBTCの所有者であることを証明するには、本人しか知り得ない暗号鍵を持っている必要があり、それも巧妙に秘匿されているはずだ。

つまり、親族はおろか、プロでも100万BTCにたどりつくことは難しい。

しかし、もし親族の努力によって、

金子勇=サトシナカモト=100万BTCの保有者

が立証されたとしたらどうか?

その場合、相続税が発生することになる。

ビットコインの相続については、株式評価と同様「死亡時(相続発生時)の時価」が適用されることになっている。

金子氏が死亡した2013年7月のBTCは9,000円前後で推移。

今の1BTC625万円からすれば、タダ同然の金額だが、それでも100万BTCとなると、当時の時価評価額でも90億円となる。

相続税の最高税率が55%なので、90億円の資産に対して、約50億円の税金がかかることになるが、それでも現在の価値である6.2兆円からすれば0.1%にも満たない。

そして、それを手にした親族は一気にビルゲイツの「次」の富豪になるわけだ。

が、これは先に述べたように実現性は低い。

100万BTCに誰もたどり着けないからだ。

では、このまま時が流れるとどうなるのか?

親兄弟も亡くなり、相続人がいなくなった場合、その時は

国庫に没収される

事実、2018年には603億円もの行き場を失った遺産が国庫に納付されている。

6兆円

国からすれば喉から手が出るほど欲しい額であり、その時が来れば国家プロジェクトとして、サトシナカモト=金子勇を立証するかもしれない。

もし国庫納付ともなれば、当然ながら過去最高金額だし、納税額でもこれだけの金額を収めた者は個人はおろか法人でも今までにいないだろう。

しかもそれが、国が「犯罪者」のレッテルを貼った者からのギフトだと言うのだから何とも皮肉なものだ。

だが、ほんの少しだけ淡い期待をする別のストーリーもある。

金子氏の暗号鍵、それを他人が使った瞬間。

どのような方法かは分からないが、全てのBTCが無価値になる。

哀れ6兆円は泡と消え、国の面目丸つぶれ。

見事、金子氏の復讐が達成される。

まるで魔法のような話だが、そもそもビットコイン自体がマジックのようなもの。

こんな「オチ」があっても面白い。

本日のコラムでした。



 

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3月 20th, 2021 by