水風呂ヤクザと4歳児が教えてくれること


春休み。

流石に1年にも及ぶコロナ自粛に飽き飽きし、家族を連れて温泉宿に伺った。

目の前に海が広がる大浴場。

そこに浸かり、日々の疲れを癒やす。

ふと横を見ると、一緒に入ったはずの息子(4歳)がいない。

浴場内にはジェットバスだとか、電気風呂だとか、寝湯だとか、色々な風呂があり、息子はその一つ一つに入っては「うん、よし」と何かを確認しては次の風呂に移る。

まあ、何だか良く分からんが、目の端に入る範囲で放っておくことにした。

しかし、数分後。

「凄いよ!!ちょっとコッチきて!!」

と私を呼ぶ声が響いた。

何だよ・・・うるせーな、そう思いながら声がする方に行くと、そこには水風呂の中に鎮座した「稼業」の方が。。。

下から上までビッチリと入墨が入った、歳のころ70くらいの立派な侠客がこちらに背を向けて、大海原を睨みつけていた。

そしてその背を、まるで絵画を見るように鑑賞する息子。

「背中に絵が描いてあるよ!!カッケー、僕もやって欲しい!!」

と絶叫する。

おいおいおい勘弁してくれよ・・・

そうは思ったものの、たしかに全身入墨は子供にとっては興味がつきない対象だ。

このような時、普通の大人なら「やめさない!!良いからこっちに来なさい!!」となるだろうが、それも子供からすれば釈然としないだろう。

しかも、こんな堂々とモンモンを晒しておられるのだから、これはイジっても良いのでは?そんな悪戯心もあり、多少ビビりながらも、こう説明した。

あれは入墨と言うんだね!!

小さな針で体を刺し、肌に模様を入れているんだよ!!

消しゴムに鉛筆刺すと、刺したところが黒くなるだろ?あれと一緒。

でも凄い痛いんだぞ!!

だからあるご商売についておられる方々が、男を磨く修行のためにやるんだよ!!

ハキハキとNHK教育口調で説明するが、その内容は完全に放送禁止である。



水に浸かるヤクザの背中を黒板に見立て、フルチン先生の講義を聞く、フルチン生徒。

なんとシュールな絵だろうか・・・

その瞬間、老侠客がザバッと立ち上がり、こちらを振り向いた。

うわっ!!殺される!!と身構えたが、しかし、その顔は笑っていた。(と言うより苦笑い)

おう、ぼうず。こんなもん入れちゃいけねーぜ・・・

まるでそう言っているように悠然と私達の横を通り過ぎて行った。

息子は

そうかー、痛いのかー、僕には無理だなー

と一定の理解はした様子。

まさに反面教師。

2人で老侠客の背中に一礼した。

旅行中、彼は終始こんな様子で、見るもの全てに「何で?何で?」と興味を示し、どんなことにもチャレンジしようとする。

氷が張った池に乗って、落ちそうになったり、急な岩場を登ろうとしたり、とにかく危なかっしいのだが、非日常の連続である「旅」で、どんどん新しい情報を吸収しているのだろう。

世の中の成功本に、よくこんな内容を見る。

いわく、

 好奇心を持って何事もやってみる

しかし、これが難しい。

4歳に出来ることが大人には出来ないのである。

旅の後半、どうすれば「子供のような好奇心を持ち続けられるのか?」そのことについて考えていた。

解決策の一つは、

単純に子供と一緒にいる時間を増やす

ということかもしれない。

そういう意味では、子供たちとずっと一緒にいられる旅は素晴らしい。

同世代だけで話をしていると「やっぱり無理だよねー」的な空気に支配され、思考がそちらに引っ張らるが、子供と話をしていると「出来る、やってみる」という方に引っ張られる。

また、お子さんがいない方であれば、極力「若い人と飲みにいく」というのも良い。

特に男性。

女性同士は年齢の差がなく付き合える人が多いが、男性はどうしても同世代でかたまる傾向があるので、特におじさんこそ、懐深く、若い人たちと飲みに行く方が良いと思う。(若い女の子がいるキャバクラとか、そういう話ではない)

誤解を恐れずに言えば「若いエキスを吸う」という感じ。

さて、そんな旅から帰ってきて、今の私は限りなく4歳児に近い。

前々から、やろうか、やるまいか、と思案していた仕事もあり、今のところ「やる」と決めている。

でもなー、またズルズルとおじさんに戻っちゃうんだよなー

本日のコラムでした。



 

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4月 4th, 2021 by