客単価1万円のお店でデートはランチェスター戦略か?


先日、友人から「相談がある」と連絡があった。

その友人は40代の男性、そして独身。

このコロナ禍でもせっせと婚活に励んでいる。

以前はお見合いパーティなどに参加していたが、コロナにより、それらの開催も激減し、今は「おごって!!アプリ」なるもので出会いを求めているそうだ。

このアプリでは、女性が「このお店で食事をしたい!!」と要望し、それに対し「ご馳走します!!」と男性が手を挙げる。

彼はこのアプリである女性と知り合った。

ここではA子さんとしよう。

歳のころは30代中盤。

数日後、彼女の希望のお店で一緒に焼肉を食べたのだが、わりと盛り上がったようで次回の約束を取り付ける。

2回目もオシャレな焼肉屋さん。

1回目の焼肉屋さんは客単価1万円程度で、2回目が1.3万円程度。

40歳過ぎの男性と、30代中盤の女性のデートとしては「まあ、そんなもん」と言ったところだろう。

が、この2店目でちょっとした事件が起こった。

そのお店では、土鍋ご飯の上に生肉と雲丹と卵黄が乗ったものが「締め」として提供されるが、その女性がトイレに行っている間に持ってきたようで、その帰りを待たず、店員が混ぜてしまったそうだ。

トイレから帰ってきたA子さんは、それを見て「写真撮ってないのに!!」と激高。

「私が毎回写真撮ってたの知ってましたよね?」

と彼に詰め寄り、店員には

「他の席で提供する時に写真を撮らせて欲しい」

と要望したそうだ。(流石にそれは・・・と断られたとのこと)

A子さんは、料理が出てくる度に「加納典明ばり」に料理を激写していたらしく、そんなA子さんにとって、最後のメインを撮り忘れたのは、痛恨のミスだったようだ。

結局、A子さんの不機嫌な空気全開で会は終了。



そこで彼はこう思った。

「俺ってただのメッシー?(注1)つーか、SNSの写真撮りたいだけじゃん・・・」

注1:バブル時代に流行った言葉。ご飯だけをご馳走する「メッシー」、送り迎えだけをする「アッシー」などがいた。

賢明なる読者の皆様なら、声を揃えて言うだろう。

「そりゃメッシーでしょ」

と。

当然、私もそう言った。

「そりゃリオネルだな(注2)」

注2:FCバルセロナのリオネル・メッシ選手。メッシーの令和版的比喩。

彼も

「ですよね・・・・」

と力なく答える。

しかし、話は続く。

何と3回目の食事に行くと言う。

口には出さないが、彼もA子さんを結構気に入っているのだろう・・・・

彼からA子さんに「ここはどうでしょう?」とお店の候補を送る。

客単価1万円前後のお店、それを4つほどリストアップしたそうだ。

すると、A子さんからはこう返信が来た。

「フレンチで食べログ100名店にランキングされているお店の中からお願いします!!」

なお、普通の会話のLINEは異様に反応が悪いそうだが、店決めのLINEだけは早いそうだ。

これに対し、彼は返信を保留。



私に「どうしたら良いですか?」と聞いてきた。

昔、大先輩の経営者から

「1万円は大抵の人間にとって丸一日働いた対価」

「客単価1万円はそれを『2,3時間で使う店』であり、そのお店でご馳走されて感謝出来ない人間は育ちに問題がある。だから付き合ってはいけない。採用もしない。」

そう言われ、それを実践している私としては、率直に言って「そんな女やめておけ」だ。

だが、彼が好意を持っている以上、何を言っても無駄。

そこで一緒に食べログ100名店(フレンチ)を検索した。

まあ、高い。

1人5万円以上というような店も多く、安くても2~3万円という感じ。

探せば1万5,000円ほどの店もなくはないが「低めの店」で返すのは少々惨めだ。

そこでこう提案した。

「一人5万円の店にしろ」

と。

二人で10万円。

彼の収入は低いわけではないが、正直10万円はかなり痛い。

「じゅ、10万っすか・・・」

そうビビッていたが、巨大な敵に立ち向かう時に戦力を小出しにしてはいけない。

ランチェスター戦略の基本だ(注3)

注3:英国の技術者、F・W・ランチェスターが第一次世界大戦時に考案した軍事論。
その論の主軸は「相手より多い戦力(兵士数)を集めることで勝利の確実性が増す」ということ。
しかし、それがかなわない場合、兵器の戦力を上げることで対抗できるとあり、それらの現象を数学モデルで実証した。
近年、ビジネス論に応用され、日本においては、中小企業は自社の武器(製品)を磨くことで大企業に勝てる、という解説本が多く、そのため「弱者の戦略」などとも言われる。

「いいか?このまま1人1万円の飯を5回食わしたところで勝ち目はない。だったら1人5万円という強烈な『武器』で勝負をかけろ!!そして、その後、こちらからは一切連絡するな!!これがランチェスター戦略だ!!」

ちなみに彼は最後まで「マンチェスター戦略(注4)」と言っていたが、それは聞き流した。

注4:マンチェスターはイギリス イングランドの都市。マンチェスターシティと、マンチェスターユナイテッドの2つのサッカーの強豪チームがある。サッカーファンにはお馴染みの街。F・W・ランチェスターも英国人なので、このあたりは「佐藤と斎藤」程度の誤差と言って良い。

こんな紆余曲折があり、3回目の食事がセッティングされた。

その結果はどうなったのか?

それはまだ分からない。

A子さんは「ワインにうるさい」ので、お酒を飲める「緊急事態宣言明け」に開催するらしい。

本件の続報については、また機会をみてお送りしたい。(私の興味が続けば)

無意味に「何だ!その女!!」と怒りを煽るだけの本日のコラムでした。



 

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5月 2nd, 2021 by