保険業界とIT業界と適応障害


おじさんでフカキョンこと深田恭子さんを嫌いな人はいない。

そのフカキョンが適応障害でお仕事をお休みになられるそうだ。

思えば、若かりし頃のフカキョンは

「私はマリー・アントワネットの生まれ変わりですぅ」

と真剣に言っているような、少々イタイ感じの子だったが、いつしか確かな演技力と凛とした美しさで「大人な女性」というステータスを得た。

とは言え、人間の中身など歳をとったところでさほどには変わらない。

フカキョンも、実際の中身は今でも不思議少女なのに、周りから求められる「理想像」を演じ過ぎているうちに疲れ切ってしまったのかもしれない。

まあ、このあたりはただのゲスの勘ぐりでしかないが、まずはしっかりお休みされて、体を治して欲しい。



さて「適応障害」だ。

苦しんでいる人が多い。

私のいる保険業界にも多い。

入社して1、2年間に受ける保険屋特有の拒絶ストレスは「半端じゃない」ので、どんな強靭な精神力を持っている人でも、多少は壊れる。

まさに「環境に適応出来ない」わけだ。

私自身も入社して1年くらいが経過した時「顔の左側だけ動かない」という奇怪な体験をした。

笑っていても左側だけ引きつってしまうし、とにかく左側だけが無表情なのだ。

今思えば、適応障害か、自律神経失調症か、おそらくはそのあたりの病気だったのだろう。

ちなみにこの時は風呂に左半分だけ浸かる、という独特の方法で治した。

毎日、息を止め、左半分だけを湯船に漬け、ユリ・ゲラーのように「動け!!動け!!」と念じる。

なお、このエピソードをもって「俺は気合が入っている!!」と言いたいわけではない。

ただ単に軽度だったので、自然治癒し、運が良かっただけだ。

本当に具合が悪いなら、ちゃんと病院へ行った方が良い。

こんな感じで、やっぱり保険業界はかなりストレスフルであり、私の感覚的では10人1人くらいは潰れてしまう。

会社に来れない。電話に出れない。会話が成立しない。というような新人を結構な数、見聞きしてきたし、ショッキングな話だが、自らの命を断ってしまった人も何人かいた。

ほとんどの人にとっては、

「死ぬほどのことかね」

と思うだろうが、私自身も顔面左側不動症の時は、とにかく目の前の契約だけに必死で、街角の猫を見ても「契約してくれないかな・・・」と妄想したほどだったので、追い込まれる気持は分かなくもない。

正直に言えば、自分自身がその経験をするまでは「適応障害なんて弱い奴がなるもの」という思い込みもあったが、今は

誰でもなりうる

ということを重々理解している。



しかし、そんな保険業界以上に適応障害が多いのが、IT業界だ。

ここである保険の商品の話をしたい。

「GLTD」

日本語では団体長期障害所得補償保険と言う。弊社でも扱っている。

会社が入る保険で、自社の社員が病気や怪我で働けなくなった時に、毎月10万円などの給付を行う商品で、業務中、業務外を問わない。

とにかく「働けなくなったら」お金を払う保険だ。

うつ病を含む精神疾患でも「1年間だけ」という条件付きで払うものもある。

業界的には「うつ病あり/なし」などとも呼ぶ。

そして、このGLTDは、業種ごとに保険料が異なる。

業種ごとにリスクが異なるからだ。

うつ病なし、の場合、建設業、製造業などは高く、小売業などは安い。

しかし、うつ病あり、にすると、IT業界がダントツで高くなる。

つまりそれだけ引受リスクがあるということで、実際にお金を支払う保険業界の評価だけにリアルだ。

私自身、若い頃にIT業界も経験し、その後保険業界にうつった。

どちらもストレスフルで、適応障害は「業界病」のようなもの。

そのため、知り合いでも適応障害に苦しんだ経験を持つ方は多いが、その方々のほとんどは完治している。

その解決策は「仕事を辞めた」という単純なもの。

知り合いの精神科医に聞くと、適応障害は

「ある環境(会社や学校)に適応出来ずに精神的に不安定(躁鬱状態)になる」

ことを指し、うつ病の一緒ではあるものの、基本的にはその環境さえ変えれば改善することが多いそうだ。

であるなら、環境を変えれば良いし、実はそれが一番の特効薬とのこと。

なお、仕事を辞めると言っても、いきなり田舎に行って農業をやるとか、そういうことではない。

例えば保険業界であれば、インセンティブの会社から、固定給の保険会社に移る場合が多い。

私が前にいた会社は「完全フルコミッション」だったが、銀行窓口での保険販売をメインとする会社に転職した友人などは、毎月の給与に一喜一憂する必要もないので、精神的に落ち着いたのか、数ヶ月で症状が改善。

その表情もみるみる明るくなった。

IT業界でも、社風が緩い会社に移って、少しだけノンビリ仕事できるようになったことで、適応障害が良くなったというようなこともあったし、逆に仕事量は多いのだが、失敗を許容する(怒らない)文化の会社に転じ、水を得た魚のように仕事をしている方もいた。

やることは変わらないのだが、給与形態だったり、勤務形態だったり、社風だったり、そのようなことをちょっと変えただけで、良くなることが多いように感じる。

とは言え「環境を変える」のは簡単なようで難しい。

私の知人たちも結構な長い間、同じ環境で「耐えて」いたが、悩みに悩んで転職した。

ほんの少しの勇気が必要、などと言う人もいるが、実際問題、追い詰まった状況下での転職は、「ほんの少し」ではなく、「かなりの勇気」だ。

だが、その「勇気」を振り絞った人のほとんどはこう口をそろえる。

「もっと早く辞めておけば良かった」

と。

つまりはそういうことなのだろう。

本日のコラムでした。



 

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5月 29th, 2021 by