門倉だけじゃない?保険金目的の「失踪」裏話


何とも面白い事件だ。

門倉中日2軍投手コーチの話。

単身赴任していた愛知県内の自宅から、携帯、財布を残したまま失踪。

結果、横浜市内で野宿しているところを確保されたらしい。

このあたり、まるで動物園から逃げて、無事保護されたチンパンジーのようでもある。

原因として、借金問題や愛人問題があったそうだが、過去にも何度か失踪しているそうで、何とも困ったおっさんだ。

奥さんも大変だろう。

さて、失踪。

我々、保険業界でも多い。

契約者の失踪である。

保険会社としては、どこの会社でも年に数件は発生している。

失踪するのは中小企業の経営者が多い。

要は借金でクビがまわらなくなり、そのまま誰にも何も言わずに「姿を消して」しまう。

担当者が安否を確認するのだが、ご家族も行方を知らず、どうにもならない。

このような場合、大抵はその後、保険料の支払いが滞り、保険が失効してしまうので、その時点で契約者と保険会社の縁は切れてしまう。

しかし、稀にその後も保険料を支払うケースがある。

もちろん失踪した本人が払っているのではなく、帰りを待つ妻などが払っているのである。

なお、「帰りを待つ」とやや綺麗な表現をしたが、実際のところ、妻が保険料を負担する理由は以下の2つだ。

1 どこかで亡くなっていた場合、保険金を受け取るため

2 7年間失踪状態が続ければ「失踪宣告」を受け、法律上死亡したことになり、保険金を受け取れるため

注:災害や事故などに巻き込まれ、行方不明となった場合には「特別失踪」という扱いで、経過1年間で死亡したと扱われるので、通常の失踪とは取り扱いが異なります。

とても切ない話ではあるが、事業などに行き詰まり、社長である夫が失踪した場合、やはり「自殺」が家族の脳裏をよぎる。

なお、自殺の場合、加入から3年以上経過していれば、保険金を受け取れる。

無事帰ってきて欲しい、そうは願いながらも、仮に自殺したのであれば、遺された家族のためにも保険金は重要であり、そのため「保険をかけ続ける」ということを選択するだろう。

なお、2に関しては、事前に夫婦間で口裏を合わせていることが多いらしい。

「らしい」というのは、ある酒の席で、某保険会社の支払査定部の部長さんから聞いた話であって、私の実務上の経験ではないからだ。

その方のお話では、失踪宣言絡みの請求は保険金詐欺の可能性が「かなり」高いそうだ。

「7年間姿を消せば、保険金を受け取れる。それで人生をやり直そう」

そう決意した夫が、妻と示し合わせた上で家を出る。

あらかじめ言っておかないと、勝手に保険を解約するリスクがあるからだ。

妻は計画通り、警察に失踪届けを出し、保険料も払い続ける。

夫は7年間身を潜める。

そして7年後、裁判所で失踪宣告をしてもらい、保険会社に死亡保険金を請求する。

こういう流れだ。

だがこれ。

ほんとど上手くいかない。

保険会社も馬鹿ではないから、失踪宣告による保険金支払には調査をかける。

どこの保険会社も元刑事などの警察OBがいる調査会社と関係があり、そこを使って妻の周辺を徹底的に洗うのである。

気づかれないように妻を尾行・監視をしていると、だいたいがどこかのタイミングで夫と接触するそうだ。

多いのは、自宅からちょっと離れた安アパートなどに身を潜め、そこに週に1度程度、妻が食料品などを届けるというもので、調査員がそこを突き止めればそれで終わり。

他にも色々なケースがあるが、彼らの捜査力は半端じゃないらしく「絶対バレる」とのこと。

逆説的に言えば「7年間、完全に連絡を断てば良い」ということでもあるが、無事保険金を受け取っても、それからも監視は続くので、大手を振って家族と生活出来るわけではない。

つまり、7年間孤独に耐え、それからもほとんど家族と会わず、免許証も健康保険証も持たずに暮らしていかないといけない。

それに失敗し「生きている」ということがバレれば、保険金は返還請求され、下手すれば保険金詐欺で逮捕される。

そのため、その部長さんも

「そんな根性あるなら、普通の仕事で成功するよ」

と笑っていた。

逃げた先にはまるで逃亡者のような過酷な生活が待っているだけだ。

こんなこと、ちょっと想像すれば分かりそうなものだが、それでも人間追い詰まってしまうと、「よし、逃げよう」となるのかもしれない。

このように考えれば、危機に面した時に「思わず逃げてしまう」というのは、ある種人間の原始的な習性なのかもしれない。

このあたりもチンパンジー的で面白い。

本日のコラムでした。

 

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6月 4th, 2021 by