海っぺりの土地を探せ!!千葉、沖縄、奄美、海沿い探訪記


「海っぺりの土地が欲しい。探してくれ」

海っぺりとは、海に面した土地のことで、自宅だけでなく、別荘地やレストランなどの商業地としても人気がある。

長いお付き合いの会社経営者から頂いた

「関東近郊の海岸沿いに別荘を建てたい」

という要望のもと、この1年間、千葉、神奈川の「海っぺり」を探していたのだが、そこに来て別の方から

「沖縄や奄美大島で海沿いの土地を」

というお話も頂いた。

この2件のお陰で「海沿いの土地」には相当詳しくなったのだが、しかし、これらの土地はかなり特殊・・・

「海の目の前の別荘」に憧れている方も多いだろうから、参考までにレポートしたい。



まず、一口に「海沿いの土地」と言っても、大きく分けて3タイプある。

1 海に面し、そのまま浜辺に出れる(目の前がビーチ)

2 海に面してはいるが、目の前はビーチではない(岩礁や堤防、漁港など)

3 海に面してはいるが、目の前は切り立った崖で、海に直接アプローチは出来ない(眺望だけ)

当然、人気があるのは1、次に2、最後に3となる。

価格もこの順番で下がる。

なお、業界用語では、本当に目の前が海の土地を「最前列」と言い、2列目、3列目と続く。

2列目なら「2階建などにすれば海を望める」という感じだが、3列目以降になると、眺めは厳しくなる。

だが、最前列が「砂、風」に悩まされるにに対し、2,3列目は随分穏やかになり暮らしやすい。

このあたりはコンサートのチケットにも似ている。(最前列はもみくちゃ)

つまり、海沿いの土地もタイプ1、2、3があり、そして、それぞれに最前列、2列目、3列目があることになる。

なお、タイプ2、3の2列目、3列目となると「海プレミアム」はほとんど付かず、その価格も内陸部の土地とあまり変わらないので、穴場と言えば穴場でもある。

もちろん今回依頼を頂いた土地はタイプ1の最前列か2列目。

家から海が眺められ、気が向いたらすぐに海に入れる土地が希望。

だが、これがない。本当にない。

不動産事業者だけが見れるデータベース(RAINS)などを検索しても一切載っていない。



本来であれば、不動産業者は売主から物件を預かると、一定期間内にはこれらのデータベースに「掲載しないといけない」のだが、海沿いの土地に関しては「ある事情」で、あえてそのルールを無視しているようだ。(詳しくは後述)

そのため現地に行かないと「活きた情報」は入ってこない。

現地をまわり、実際の土地に刺さっている「売地」などの看板に記載されている業者に電話し、事情を聞くしかないのだ。

この1年で千葉、神奈川は随分行ったし、沖縄、奄美大島へも何度か飛んだのだが、そこで最大の障壁となるのが「国」と「漁師」

私も今回の案件を手掛けて初めて知ったのだが、沿岸部分の大部分は「国や自治体」が保有している。

自然公園エリアや、津波対策に堤防を築くための準備地であったり、背景は様々だが「おっ、ここ良いな」と思うと、だいたい国保有で、個人所有が極端に少ない。

そして、その少ない個人所有のほとんどが「漁師」

現役でなくても、元漁師や親が漁師だったという地主さんが海辺一帯をもっていることが多い。

この方々との交渉が難しい。

まず、心情として「自分の代で土地を減らすこと」への抵抗感がある。

しかもそれをよそ者に渡すとなると更にハードルが上がる。

また固定資産税が激安(100坪で年1万円前後)なので、相続などで引き継いで「自分では使わない土地」であっても売り急ぐ必要がない。

もちろん実勢価格としては「海プレミアム」が付くので、坪5~20万円と、そのエリアの他の土地に比べれば「10倍以上の価値」があるのだが、それらは固定資産評価額には反映されないので、税金は安いのである。

そのため、持っていてもさほどの負担にならない。(維持費が安い)



これらの事情もあり「なかなか売りに出ない」のだが、それでも丹念に聞き込みをすると、年に何件かは情報が出てくる。

言い方は悪いが、現地の不動産屋に「口説き屋」のような人がいて、それらが地元のネットワークを駆使して地主に接触。信頼を得て売買を任せてもらえるようだ。

だが、ここからも難しい問題がある。

とにかく狭い世界なので、ゴミルールを守らなかったり、騒音問題などを起こす「質の悪い住人」をコミュニティに入れてしまうと、

「あいつは金で魂を売った」

というような責めを売主が受けかねないのである。

そのため不動産屋も、変な買い主を連れてこないよう細心の注意を払う。

買手に対しても「何となくの審査」があり、「金ならあるぞ!!」というようなガラの悪い買主は相手にされない。

だからこそ、一気に買手が殺到してしまうようなデータベース(RAINS)には掲載せず、信頼できる筋からの紹介や、私のように現地に来て看板を見たような人(熱意のある人)しか相手にしないのだろう。

だがそれでも本当に良い「最前列プレミアム物件」は情報が表に出ることがないようで、その世界は海のように深い。

今回、1年がかりで2つの案件を手掛けたが(まだ1つは探しているけど)、正直言って私自身が「海っぺり」に完全に魅了されている。

やっぱり海は良い。

自社でも一つくらい買いたいと思っているが、現地の不動産屋と話をしても「こいつは転売しそうだな」とかなり疑いの目で見られているようで、こればかりは人間性だろう・・・

本日のコラムでした。

 

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9月 4th, 2021 by