SNSに作って欲しい「自分より上の情報排除ボタン」


先日、旧知の友人とお酒を飲んでいると、彼がこんなことを言っていた。

「インスタとかTikTokとか見てると、なんか凹むんだよね・・・」

その理由を聞くと、お金持ちがプライベートジェットや高級車を乗り回したり、海外で豪遊していたり、そんな自慢動画ばかりが流れてくると、自分とのあまりの差に愕然とするのだそうだ。

特に20代から30代前半の「若者」の成功者がはしゃいでいる姿を見ると、嫉妬と羨望と自分のダメさと、色々な感情が沸き起こるとのこと。

何となく言わんとすることは分かるのだが、その彼も別に普通と言うか、いや、むしろ社会的地位や年収は同年代と比べて高い方であり、そこまで自分を卑下する必要もない。

そのことを告げ、更には「この際だからハッキリ言うけど」と、普段から彼に対して思っている「良い事」を連続して言ってやった。

1 いつも置かれた場所で最大限努力し、常に結果を出している

2 年下から慕われている

3 相手の立場にたったアドバイスが出来る

4 金にキレイ

5 自慢話をしないのに、人の自慢を黙って聞ける

6 とても素晴らしい奥さんがいて、そしてその奥さんを心から愛している

7 子供の教育に熱心。良い子に育っている

8 40代後半という年齢にしては見た目が若い

9 時間を守る

10 どんなものでも美味しそうに食べる

以上、こんな素晴らしいお前が、会ったこともない金持ちに嫉妬する必要はない。

最後の方は流石にコンテンツ不足になり、まるで小学生を褒めるような内容になってしまったが、それでも年齢が上がれば「人から褒められる」ということ自体が少ないので、当人はまんざらでもなさそう。

結果、

「照れるけど、そう見られてるってことは俺も捨てたもんじゃないぁ」

と機嫌を直してくれた。

しかし、良い歳こいたおっさんが、同じおっさんを真正面から褒める。

そんなことを真顔でやれる自分が怖いが、まあ、これもある種の芸である。

自己肯定感

日本人の自己肯定感は、諸外国と比べ低いことが指摘されている。

若者に限定した調査(内閣府)ではあるが、

「自分に満足しているか?」

という質問に対し、「はい」と回答した日本人は45.8%と半分に満たない。

対して、アメリカでは86%、イギリス83.1%、フランス82.7%、ドイツ80.9%が「はい」と答えている。

お隣韓国でも71.5%と、日本よりはかなり高く、つまり、日本人は極端に「自分に自信がない」ということになる。

言い換えれば自己肯定感が低いということだろう。

参考資料:内閣府「今を生きる若者の意識」調査

なお、本調査は今から9年前の平成25年に29歳以下を対象に実施されていることから、当時の「若者」も今は30代。

つまり現在における中年予備軍のデータだと思って良い。

また、同じ日本に住んでいる以上、世代別でそこまで数値が異なるとも思えないので、40代も50代もおそらくは似たようなものだろう。

日本人はとにかく自分に自信がないのである。

冒頭の友人が、金持ち動画を見て嫉妬しているように、日本人はとにかく「比べること」が好きで、常に自分と誰かを比較し、一喜一憂する。

上を見て劣等感を感じ、下を見て優越感を感じるという具合に。

で、話は冒頭の友人との会話に戻る。

「そんな動画、見なければ良いのでは?」

そう提案したが、実際には様々な情報が垂れ流しになるネット、特にSNSでは、なかなか受け手が情報を選ぶことが出来ず、しかも彼の場合、結構な頻度でそれらの情報をガン見しているので、AIが「興味があるのだろう」と、余計にそのような情報を配信してくるそうだ。

なんでわざわざ劣等感を持つような情報を自らすすんで見るのかよく分からないが、彼がふとこんなことを言った。

「あーあ、『自分より上排除ボタン』とかないかなぁー」

彼曰く、そんなボタンがあれば、スマホには常に「自分より下」の情報があふれ、「俺、勝ち組だ!!」と優越感に浸れるとのこと。

あまりに卑屈な発想に呆れてしまったが、しかしながら、意外と斬新なアイディアかもしれない。

特に日本人には大事だろう。

そもそもが、下とか上とか、何をもって定義するのかも分からないが(金か容姿か地位か)AIが「あなたより上です。下です。」と決めて情報を配信してくるのは確かに面白そうだ。

だが次の瞬間、お互いに顔を見合わせた。

「流れてくる情報がだんだん少なくなってきたら怖くない?・・・」

それはつまり、AIが私という人間の格付けをどんどん「下げている」ということであり、ある日突然、何の動画も写真も流れてこなくなったとしたら。

つまりは、

「あなたより下はいません。最下層です」

とAIから宣告を受けるようなもので、そこまで行けば自己肯定感もクソもない。

「排除ボタン。恐ろしくて押せないな・・・」

そんな言葉を最後に友人と別れた。

しかし、これはまだ大人同士だから笑い話で済むが、今の子供たちは小さい頃から「世界レベルの自慢話」と自分を比較する羽目になる。

そんな中では「俺なんか、私なんか」と思ってしまうのも仕方がないような気がする・・・

うちにも8歳と5歳の子供がいるが、そんな子供たちにいかに「自己肯定感」を持たせるか?

算数や国語を教えることより難しいこの問題の解は、まだ見い出せてはいない。

本日のコラムでした。

 

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1月 15th, 2022 by