会社前のラーメン屋さん「勝本」倒産劇にみる飲食業の難しさ


会社の目の前にあるラーメン屋さんが潰れた。

弊社があるのはJR水道橋駅近くで、周囲には多くの飲食店がある。

その中にはラーメン屋さんも沢山あって、それが閉店することは、さほど珍しいことではないのだが、そういうお店はだいたい雰囲気で分かる。

そもそも味が良くなかったり、ちょっと高かったり、もしくは清潔感がなかったり、等々。

当然、外から見ても、店内は閑古鳥が鳴いていて、

「なんか、厳しそうだな。。。」

などと思っていると、暫くして予想通り「閉店します」の張り紙。

が、今回は違う。

「勝本」

ご存知の方もいるかもしれないが、ミシュランにも掲載された有名店で、水道橋以外にも、神保町、別ブランドの「八五」という名前で銀座にも店舗がある。

そこが、破産した。



水道橋が一号店で、7年前の開店から、あっという間に人気店に。連日大行列していた。

会社からは近いものの、あまりに並ぶので、数回しか行ったことはないが、確かに美味しい。

元、京都の有名ホテルの総料理長だった方が、退職後に開いたお店で、その経歴もありマスコミに取り上げられることも多かった。

どのお店も行列していたので、てっきり「ムチャクチャ儲かってる」のかと思ったが、実際は違かったようだ。

ネットの情報では、虎ノ門ヒルズに出店したことが原因で、コロナでビジネスマンがいなくなったヒルズでの家賃負担が重荷になったのでは?とあった。

ただ、時短の協力金などもあるし、神保町、水道橋、銀座はコロナ禍にあっても繁盛していたのだから、

「うーん、一店舗だけの家賃で潰れるかね?」

という気もする。

だが、別の報道によると創業以来、赤字決算が散発していたそうなので、そうなると元々からさほど儲かっていなかったということ。

そこに新店舗とコロナが追い打ちをかけたのかもしれない。

通常であれば、ミシュラン掲載などの付加価値があれば、多少赤字でもどこかがM&Aしそうなものだが、そのような助け舟さえなかったところを見ると、利益を出すことが構造的に難しいのだろう。

その原因が原材料費なのか、人件費なのかは分からないが、いずれにせよ「1杯売るごとに赤字だった」ということで、そうなれば「行列」したところで意味はない。

むしろ数が増える分だけ傷口を広げるだけだ。

ただ、それでも「あれだけお客さんが入ってて、潰れるのかぁ」と率直に驚いているし、現役人気店の倒産は飲食業の難しさを如実に物語っている。

逆に冒頭で述べたような「そのうちなくなるかな」と思っていても、いつまで経っても「なくならない」店もある。

味も、店員の態度も良くないし、いつ見てもさほど客も入っていない。しかし、何故か潰れない。

流石に店名は出せないが、会社の近くにもいくつかある。

こちらは利益率が良いのだろう。

誰も注目しないし、リピートもされないが、場所柄、ふらっと入ってくる客もいて、そこからしっかり頂戴する。客の満足は二の次。

ものすごく儲かるわけではないだろうが、潰れない程度には利益がある。だから店は存続出来る。

これ、どっちが良いのだろうか?

もちろん、客からすれば前者が良い。

店側が赤字ということは、客側は黒字。

1杯900円のラーメンが、実は950円、1,000円の価値があるということ。

言ってみれば店先で50円、100円を配っているとの同じなのだから、そりゃ行列する。

しかし、経営的視点から見れば、これはボランティアであってビジネスではない。

この理屈で言えば、繁盛店を作るのなんて簡単で、3000円で仕入れた肉を500円で売れば良い、ということになる。

あっという間に行列店だが、あっという間に潰れる。



だったら客からは不評であっても、後者の店の方がビジネス的には強い。

おそらく、この中間点に「丁度良い」ところがあるのだろう。

飲食業をやる者はそのラインを見極めつつ、更には世間の流行り廃りを敏感に察知し、そして、何かあればすぐに「味が落ちた」としたり顔で語る気まぐれな客の評価に耐える。

何と難しいビジネスなのか・・・・

ミシュラン、大行列という栄光から転げ落ちた勝本の倒産劇。

私自身、いつかは飲食業をやってみたい、などと思っていたが(他業種の経営者でそういうことを言う人は多い。隣の芝生は青い理論)、この劇を見てしまうと、とても怖くて手が出ない。

飲食で成功するというのは、ほとんど奇跡に近い。

本日のコラムでした。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします


3月 26th, 2022 by