ホスト系ライフプランナーの実態


昨年(2021年)7月、54歳(当時)の女性資産家が自宅の浴槽で死亡しているところを発見された。

しかし、手には拘束バンドの跡のようなものがあり、警察は殺人事件として捜査。

そして、今年7月、死亡した女性と養子縁組をしていた28歳の男性Aが逮捕される。

現時点では養子縁組の書類偽造の容疑だが、警察は先の殺人事件との関連を調べているとのこと。

伝え聞くところによると、Aの前職は私と同じ外資系生保のP社だと言うではないか・・・

つまり後輩だ。

だが、私が辞めた後に入社しているため、直接の面識はない。

なお、今も残っている同僚の話では、

「イケメン。アメフトをやっていたのでガタイも良い。入ってきた時から売れそうな雰囲気があった。しかし、売り方が『粗く』、業務停止を食らって2,3年で退職したはず。」

とのことだった。

その後、諸々のニュースを見ると、女性とAは、AがP社にいた時に知り合い、多額の保険を契約していたようだ。

そして、Aは退職後、女性の養子となり、それと同時期に保険金の受取人を自分に変更。

54歳の女性と28歳の男性。

傍目には「親子」であってもおかしくはないが、元は契約者と保険セールスという関係であり、それが養子縁組に至った背景は一体何だったのか?

そこには「ホスト系ライフプランナー」という存在が浮上してくる。

このことを説明する前に、少し遠回りになるが「保険のセールス」という仕事について述べたい。

保険セールスは保険を売るのが仕事だが、保険というのは目に見えない商品で、しかも専門的でもあるので、素人とプロの知識量の差が大きい。

また、各個人で「年収」、「既婚・独身」、「子供がいるか?いないか?」などによってニーズが異なるので、オーダーメイドでプランを設計する必要がある。

要は個別設計の家のようなもので、他社と比較するにしても、今度はそこが「個別設計」してくるため、それぞれ特徴があり、比較検討が難しい。

結局のところ、目の前の担当者を、

信頼出来るか?

と言うところがかなり大きなポイントになってくる。

この「信頼」を更に細分化すれば、

・商品知識があるか?

・問題を解決出来る提案力/プレゼンテーション能力があるか?

・契約後もちゃんとフォローしてくれるか?

・実績はあるか?

・人として魅力を感じるか?(自分に合うか?)

などが挙げられ、要はこれらを複合して判断されるのだろう。

当然、保険セールスの側でも、人によって各分野で得手不得手がある。

商品知識と提案力に自信がある、という人もいれば、派手さはないが加入後のフォローに定評がある人もいる。

そして、稀に人としての魅力「だけ」で売っているタイプがいる。

見た目が良く、で明るくて話が面白い、酒の席が得意で、お金持ちの経営者や富裕層の懐に入るのが上手い。

反面、キャラクターだけでそれなりに売れてしまうので、商品知識や提案力などに乏しく、勉強をしない人が多い。

そんな人達を、私は「ホスト系ライフプランナー」と総称している。

ブランド物で身を固め、夕方、会社に顔を出し、周囲と軽口を叩いたあと、トイレで髪型を決めては、夜の町に消えていく。

主戦場は酒席。

ほぼ毎日参加する飲み会で人脈を広げ、そこで人間関係を作って保険を売る。

特に外資系生保に多いし、P社は特にその割合が多い。(とは言っても全体の中で見れば少数派だが・・・)

そして、ホスト系が最も得意とするのが中高年のアッパー(高収入、富裕層)女性である。

ホスト系からすれば、アッパー男性も十分相手出来るのだが、男同士というのはいくら親しくなっても、それなりに礼儀が必要。

また、知識や経験を買われているわけではなく、あくまで見た目や可愛げなどを評価され、要はペット的な感覚で連れて歩かれているので、相手の機嫌次第では時に厳しい「躾」を受けることもある。

疲れるのだろう。

反面、年上の女性なら多少の粗相でも見逃してくれるし、自分をチヤホヤしてくれる。

そのため、ホスト系は最終的にアッパー女性のマーケットにたどり着くことが多い。

同じ成果(契約)を得るのであれば、女性の方が楽ということなのだろう。

しかし、異性であるために、どうしても色恋が絡みやすい。

時に片方(もしくは双方)がハマりすぎてしまうのである。

実際に最後の一線を超えているかどうかはケースバイケースだろうが(ちなみに、あまりに品がないのでそこまでは聞かない、という不文律があった)実際、保険会社のカスタマーセンターには、

・契約後に急に連絡がなくなった

・最近冷たい

・友人を紹介したら、そっちばかりと会っている

などというクレームが、結構多く寄せられている。

ある時など、女性契約者が半狂乱で会社にまで乗り込んできたという話もあって、この手のトラブルを引き起こすのはたいていホスト系である。

なお、少々ネガティブに書いてはいるが、私自身は「ホスト系」を否定はしていない。

どんなスタイルで勝負するかはそれぞれの自由だし、お客様がそれで良いと言っているなら人がとやかく言うことでもないだろう。

そして、ホスト系は私にとっては「気の良い同僚(そして抜群に話が面白い)」でもあった。

ただ、真似は出来ないが・・・

このようなことから、外資系生保には伝統的に「ホスト系」というスタイルが確立されており、会社もそれを容認しているのが実態だ。

そして、先のAもこのスタイルの悪い部分だけに影響を受けていたことは想像に難くない。

現時点では書類偽造の容疑ではあるが、仮に殺人にまで手を染めていたとすれば?

そんなモンスターを保険業界に招き入れ、妙なテクニックを教えてしまった保険会社の倫理的な責任は免れないのではないか。

そんなことも思ってしまう事件だった。

本日のコラムでした。

 

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7月 23rd, 2022 by